この記事では、社労士試験の独学などのため、令和6年の就労条件総合調査について整理しています。
当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しておりますが、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
調査の目的
就労条件総合調査は統計法に基づく一般統計調査です。
企業を対象に「労働時間制度」「賃金制度」を調査しています。
調査項目は他にも、定年制等、労働費用などをローテーションで実施しており、令和6年は「資産形成」です。
ちなみに、社労士試験では「年次有給休暇の取得率」を知るための調査として出題されています。
労働時間制度
以降、統計調査の結果をもとに社労士試験の勉強用に整理しています。
「労働時間制度」は8つの項目に分れており、所定労働時間、年次有給休暇などが調査対象です。
結果の概況そのものは、厚生労働省のホームページを参照してください(当記事の最後にもリンクを掲載しています)
はじめに、所定労働時間と週休制についての調査結果です。
①所定労働時間
例年通り、1企業平均、労働者1人平均ともに1日「8時間」以内、週「40時間」以内となっており労基法の基準におさまっています。
1日の所定労働時間
⇒ 1企業平均 7時間47分(前年 7時間48分)
週所定労働時間
⇒ 1企業平均 39時間23分(前年 39時間20分)
⇒ 最短「金融業、保険業」
⇒ 最長「運輸業、郵便業」(40時間ちょうど)
②週休制
企業において最も多くの労働者に適用される週休制(主な週休制)についてです。
何らかの週休2日制
⇒ 企業割合 90.9%(前年 85.4%)
完全週休2日制
⇒ 企業割合 56.7%(前年 53.3%)
他にも、「完全週休2日制」を採用している企業割合を企業規模別(1,000 人以上、300〜999 人、100〜299 人、30〜99 人)でみると、採用割合は規模が大きいほど高くなっています(例年どおり)
前年と同様、「完全週休2日制」を採用している企業割合が「5 割」を超えています。また、企業規模別でみても、全ての規模で「5 割」を超えています(第2表)
令和6年調査では、週休3日制についても調査されています。
何らかの週休3日制
⇒ 企業割合 1.6%
完全週休3日制
⇒ 企業割合 0.3%
つづいて、休日、休暇に関する調査結果です。
③年間休日総数
年間休日総数は、1年(約52週)に「何らかの週休2日制」を適用し「52 × 2 = 104日」 、それに年末年始、お盆などを加えると調査結果と近い日数になります。
年間休日総数(1企業平均)
⇒ 112.1日
年間休日総数(労働者1人平均)
⇒ 116.4日
前年は、それぞれ110.7日、115.6日でした。
④年次有給休暇
社労士試験では「年休の取得率」が問われています。
年次有給休暇の取得率は「6割」を超えています。なお、過去最高(昭和59年以降)です。
令和5年の1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(労働者1人平均)
⇒ 16.9日(前年 17.6 日)
労働者が取得した日数
⇒ 11.0日(前年 10.9日)
年次有給休暇の取得率
⇒ 65.3%(前年 62.1%)
年次有給休暇の計画的付与については、「制度がある」企業割合は40.1%(前年 43.9%)です。また、付与日数を階級別にみると「5〜6日」が最も高くなっています(72.4%)
ちなみに、少子化社会対策大綱(令和2年5月29日閣議決定)にて、令和7年までに年休の取得率を70%とすることが目標に掲げられています。
⑤特別休暇制度
特別休暇制度がある企業割合
⇒ 59.9%(前年 55.0%)
特別休暇制度を種類別でみると、「夏季休暇」の割合が最も高くなっています(第7表)
労働時間制度の最後は、変形労働時間制等です。
⑥変形労働時間制
社労士試験では、就労条件総合調査から出題された際に、「変形労働時間制」から繰り返し出題されています。
制度を採用している企業の割合(第8表)
変形労働時間制を採用している企業割合
⇒ 60.9%(前年 59.3%)
変形労働時間制を採用している企業割合を企業規模別(1,000 人以上、300〜999 人、100〜299 人、30〜99 人)、制度の種類別でみると。
企業規模別
⇒規模が大きくなるほど採用割合は高くなる
制度の種類別
⇒高い順に1年単位(32.3%)、1カ月単位(25.2%)、フレックス(7.2%)
制度の適用を受ける労働者の割合(第9表)
変形労働時間制の適用を受ける労働者割合
⇒ 約 5 割(52.3%)
制度の種類別
⇒高い順に1カ月単位(23.7%)、1年単位(16.7%)、フレックス(11.5%)
社労士試験では、フレックスタイム制を採用している企業割合の出題実績があります。
下図に論点を整理しておきます。
企業割合 | 労働者割合 | |
採用 | 約 6 割 | 約 5 割 |
比較 | 1年 > 1カ月 > フレ | 1カ月 > 1年 > フレ |
フレックス | 1割未満 | 約 1 割 |
⑦みなし労働時間制
みなし労働時間制を採用している企業割合
⇒ 15.3%(前年 14.3%)
内訳(複数回答)は、事業場外(13.3%)、専門業務(2.2%)、企画業務(1.0%)です(第10表)。労基法の学習順序と同様です。
⑧勤務間インターバル
勤務間インターバルについては、社労士試験でも出題されています。調査結果は概ね例年どおりです。
勤務間インターバルを導入している企業
⇒ 1 割に満たない(5.7%)
導入予定はなく、検討もしていない
⇒ 約 8 割(78.5%)
勤務間インターバルを「導入予定はなく、検討もしていない」とする理由のうち最も高いもの
⇒ 「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」
なお、勤務間インターバルは、周知や導入に数値目標が設定されています。参考まで。
勤務間インターバル制度について、労働者数30人以上の企業のうち、(1)勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を5%未満とする(令和7年まで)。(2)勤務間インターバル制度(終業時刻から次の始業時刻までの間に一定時間以上の休息時間を設けることについて就業規則又は労使協定等で定めているものに限る。)を導入している企業割合を15%以上とする(令和7年まで)。特に、勤務間インターバル制度の導入率が低い中小企業への導入に向けた取組を推進する。
出典「過労死等の防止のための対策に関する大綱(本文)|36ページ」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000811145.pdf)
賃金制度
ここからは「賃金制度」に移ります。
令和6年の調査項目は、時間外労働の割増賃金率、1カ月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率の2つです。
令和6年1月1日現在の状況についての調査です。
時間外労働の割増賃金率を「一律に定めている」企業割合
⇒ 8 割を超える(83.3%)
時間外労働の割増賃金率を「25%」とする企業割合
⇒ 9 割を超える( 94.2%)
ちなみに、時間外労働の割増賃金率を「26%以上」とする企業割合を企業規模別(1,000 人以上、300〜999 人、100〜299 人、30〜99 人)にみると、規模が大きいほど割合が高くなっています(第14表)
異なる割増賃金率を定めるには制度設計が必要です。しかし、制度設計には時間と費用がかかります。そのため、割増賃金率を「一律に定めている」が多くを占めていると考えられます。
企業の多くは、時間外労働の割増賃金率を労基法の基準である「25%」としています。25%超える基準の設定は、企業規模が大きくなるほど高くなります。
以下、1カ月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を「60時間超の割増賃金率」と略しています。
①時間外労働の割増賃金率を定めている企業のうち、60時間超の割増賃金率を定めている企業割合
⇒ 61.1%(前年 33.4%)
①のうち、60時間超の割増賃金率を「50%以上」とする企業割合
⇒ 99.0%(前年 64.5%)
資産形成
ローテーションで調査している項目です。
令和6年の調査項目は、「資産形成」です(資産形成の前回調査は平成31年)
貯蓄制度がある企業割合
⇒ 33.2%
貯蓄制度がある企業割合を企業規模別にみると、規模が大きくなるほど高くなります。
また、貯蓄制度の種類別(財形貯蓄、社内預金、その他)にみると、財形貯蓄の割合が最も高くなっています。
住宅資金融資制度がある企業割合
⇒ 3.4%
住宅資金融資制度がある企業割合を企業規模別にみると、規模が大きくなるほど高くなります。
また、住宅資金融資制度の種類別(社内融資、金融機関との提携による住宅ローン、勤労者退職金共済機構からの転貸融資)にみると、社内融資の割合が最も高くなっています。
参考|過去の調査
ローテーションで調査している項目のうち、過去の調査で実施されたものです。
一部の項目について、概要を載せておきます。
退職給付(いわゆる退職金)の有無
退職給付(一時金・年金)制度がある企業割合
⇒ 74.9%
退職給付制度がある企業について、制度の形態別に企業割合をみると(令和5年調査 第16表)
- 割合が高い順に、退職一時金制度のみ(69.0%)、両制度併用(21.4%)、退職年金制度のみ(9.6%)
一時金
退職給付のうち、一時金についての調査です。
退職一時金制度がある企業について、支払準備の形態別に企業割合をみると(令和5年調査 第17表)
- 割合が高い順に、社内準備、中小企業退職金共済制度、特定退職金共済制度
退職一時金制度について、過去3年間に見直しを行った企業割合
⇒ 7.9%
見直しの内容
⇒ 「新たに導入または既存のものの他に設置」が最も高い
年金
退職給付のうち、年金についての調査です。
退職年金制度がある企業について、支払準備の形態別に企業割合をみると(令和5年調査 第18表)
- 割合が高い順に、確定拠出年金(企業型)、確定給付企業年金(CBP を含む)、厚生年金基金(上乗せ給付)
退職年金制度について、過去3年間に見直しを行った企業割合
⇒ 4.0%
見直しの内容
⇒ 「新たに導入又は既存のものの他に設置」が最も高い
CBP(キャッシュ・バランス・プラン) については、就労条件総合調査の「用語の説明」に記載されています。
しかしながら、仕組みを詳しく知るには別の勉強が必要そうです(私はよく分かりません)。
社労士試験の勉強においては、確定給付型と確定拠出型双方の特徴を併せ持った退職年金制度でよろしいかと……参考まで。
支給の実態
退職給付の支給実態についてです。
調査の対象は、令和4年1年間における勤続20年以上かつ45歳以上の退職者(以下、調査対象の退職者)です。
退職給付(一時金・年金)制度がある企業について、調査対象の退職者がいた企業割合
⇒ 29.2%
調査対象の退職者がいる企業について、退職者割合を退職事由別にみると(令和5年調査 第21表)
- 割合が高い順に、定年(56.5%)、自己都合(31.7%)、会社都合(6.1%)、早期優遇(5.7%)
調査対象の退職者1人平均の退職給付額を退職事由別にみると(令和5年調査 第22表)
- 「早期優遇」が最も高い
また、調査対象の退職者のうち、定年退職者について、退職給付額を退職給付制度の形態別にみると(令和5年調査 第23表)
- 退職給付額が高い順に、両制度併用、退職年金制度のみ、退職一時金制度のみという傾向がみられます
詳細な数値が必要な方は、厚生労働省のホームページ等から確認してください。
令和6年就労条件総合調査についての解説は以上です。
就労条件総合調査は令和4年の社労士試験で出題されています。
「そろそろ出題か」というよりは「最近出題されたよね」です。
ただし、出題回数の多い統計調査なため、、既出の論点は問題集などで把握しておいてください。
(参考資料等)
厚生労働省ホームページ|令和6年就労条件総合調査 結果の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/24/index.html
厚生労働省ホームページ|令和5年就労条件総合調査 結果の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/index.html