社労士試験の独学|統計対策|労一|就労条件総合調査

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まえがき

この記事では、令和7年の就労条件総合調査(令和7年12月19日公表)を社労士試験の勉強用に整理しています。

当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しておりますが、厳密な表現と異なる部分もございます。

詳しくは免責事項をご確認ください。

調査の目的

就労条件総合調査は統計法に基づく一般統計調査で、民営企業を対象に「労働時間制度」「賃金制度」を調査しています。

また、定年制等、労働費用などローテーションで調査している項目もあります。

(令和7年は「労働時間制度」「賃金制度」のみが調査項目です)

ちなみに、社労士試験では「年次有給休暇の取得率を知るための調査は何?」という形式でも出題されています。


労働時間制度

以降、調査結果の概要です。

調査結果そのものは、下記リンクをご参照ください。

参考|厚生労働省ホームページ(外部サイトへのリンク)|令和7年就労条件総合調査 結果の概況

「労働時間制度」の調査項目は次の8つです。

  • 所定労働時間
  • 週休制
  • 年間休日総数
  • 年次有給休暇
  • 特別休暇
  • 変形労働時間制
  • みなし労働時間制
  • 勤務間インターバル

所定労働時間、週休制

はじめに、所定労働時間と週休制についての調査結果です。

所定労働時間

例年通り、所定労働時間の1企業平均は、1日「8時間」以内、週「40時間」以内となっており労基法の基準におさまっています。

ただし、週所定労働時間を産業別にみると、「宿泊業、飲食サービス業」で40時間02分となっています。

  • 1日の所定労働時間は、1企業平均 7時間49分(前年 7時間47分)
  • 週所定労働時間は、1企業平均 39時間24分(前年 39時間23分)
  • 週所定労働時間を産業別にみると、最短は「金融業、保険業」、最長は「宿泊業、飲食サービス業」

週休制

企業において最も多くの労働者に適用される週休制(主な週休制)についてです。

  • 何らかの週休2日制を採用している企業割合は、9割を超えている(92.6%)
  • 完全週休2日制を採用している企業割合は、6割を超えている(65.5%)
  • 完全週休2日制を採用している企業割合を企業規模別(1,000 人以上、300〜999 人、100〜299 人、30〜99 人)でみると、規模が大きいほど高くなる(例年どおり)

「完全週休2日制」を採用している企業割合は、前年の56.7%より高くなり「6 割」を超えています。なお、企業規模別でみても、全ての規模で「6 割」を超えています(30〜99 人の規模を除けば 7割を超えています)

ちなみに、「週休3日制」については次のとおりです。

  • 何らかの週休3日制を採用している企業割合は、0.9%(前年1.6%)
  • 完全週休3日制を採用している企業割合は、0.0%(前年0.3%)

年間休日総数、年次有給休暇、特別休暇

つづいて、休日、休暇に関する調査結果です。

年間休日総数

年間休日総数は、1年(約52週)に「何らかの週休2日制」を適用して「52週 × 2日 = 104日」 、それに年末年始、お盆などを加えると調査結果と近い日数になります。

  • 年間休日総数の1企業平均は、112.4日
  • 年間休日総数の労働者1人平均は、116.6日

前年は、それぞれ112.1日、116.4日でした。

年次有給休暇

R7|就労条件総合調査|第2図
出典|厚生労働省|令和7年就労条件総合調査 第2図|https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/25/index.html

社労士試験では「年休の取得率」が問われています。

  • 令和6年の1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(労働者1人平均)は、18.1日(前年 16.9日)
  • 労働者が取得した日数は、12.1日(前年 11.0日)
  • 年次有給休暇の取得率は、66.9%(前年 65.3%)
  • 取得率を産業別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」が75.2%と最も高く、「宿泊業、飲食サービス業」が50.7%と最も低い。

年次有給休暇の取得率は「6 割」を超えています。なお、過去最高(昭和59年以降)です。

年次有給休暇の計画的付与については、「制度がある」企業割合は約4割(40.8%)です。また、付与日数を階級別にみると「5〜6日」が最も高くなっています(71.6%)

ちなみに、少子化社会対策大綱(令和2年5月29日閣議決定)にて、令和7年までに年休の取得率を70%とすることが目標に掲げられています。

特別休暇制度

特別休暇制度がある企業割合は、約 6割(60.3%)

特別休暇制度を種類別でみると、「夏季休暇」の割合が最も高くなっています。


変形労働時間制、みなし労働時間制、勤務間インターバル

労働時間制度の最後は「変形労働時間制」です。

変形労働時間制

社労士試験では、就労条件総合調査から出題された際に、「変形労働時間制」から繰り返し出題されています。

変形労働時間制を採用している企業割合は、約 6割(60.2%)です。

「変形労働時間制がある企業」の割合を企業規模別(1,000 人以上、300〜999 人、100〜299 人、30〜99 人)、制度の種類別でみると、次のような特徴がみられます(第8表)

  • 企業の規模が大きくなるほど「制度がある」の割合が高くなる
  • 「制度がある」の割合を制度の種類(複数回答)別にみると、高い順に1年単位(30.3%)、1か月単位(26.4%)、フレックス(8.3%)

制度の適用を受ける労働者の割合については、次のとおりです(第9表)

  • 変形労働時間制の適用を受ける労働者の割合は、約5割(50.5%)
  • 適用を受ける制度を種類別にみると、高い順に1か月単位(23.5%)、1年単位(15.7%)、フレックス(11.1%)

社労士試験では、フレックスタイム制を採用している企業割合が問われているため、論点を下表に整理しておきます。

企業割合労働者割合
採用・適用割合約 6 割約 5 割
種類別1年 > 1か月 > フレ1か月 > 1年 > フレ
フレックスの割合1割未満約 1 割
変形労働時間制のまとめ

みなし労働時間制

「みなし労働時間制がある」企業割合は、15.8%(前年 15.3%)です。

内訳(複数回答)は、事業場外(13.8%)、専門業務(2.1%)、企画業務(1.0%)です(第10表)

(高い順に並べると労基法の学習順序と同じになります)

勤務間インターバル

勤務間インターバルについては、社労士試験でも出題されています。

調査結果は概ね例年どおりです。

  • 勤務間インターバルを導入している企業は、1 割に満たない(6.9%)
  • 導入予定はなく、検討もしていないは、約8割(78.7%)
  • 勤務間インターバルを導入予定はなく、検討もしていないとする理由(複数回答)は、「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」が最も高い(57.3%)
  • また、「当該制度を知らなかったため」の全企業に対する企業割合は15.7%となっている。

なお、勤務間インターバル制度には、周知や導入に数値目標が設定されています。

勤務間インターバル制度について、労働者数30人以上の企業のうち、(1)勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を5%未満とする(令和7年まで)。(2)勤務間インターバル制度(終業時刻から次の始業時刻までの間に一定時間以上の休息時間を設けることについて就業規則又は労使協定等で定めているものに限る。)を導入している企業割合を15%以上とする(令和7年まで)。特に、勤務間インターバル制度の導入率が低い中小企業への導入に向けた取組を推進する。

出典「過労死等の防止のための対策に関する大綱(本文)|36ページ」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000811145.pdf)

賃金制度

ここからは「賃金制度」に移ります。

令和7年の調査項目は、次のとおりです。

  • 時間外労働の割増賃金率
  • 1か月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率
  • 諸手当

令和7年1月1日現在の状況についての調査です。


時間外労働の割増賃金率

  • 時間外労働の割増賃金率を「一律に定めている」企業割合は、8 割を超える(85.6%)
  • 時間外労働の割増賃金率を「25%」とする企業割合は、9 割を超える( 94.5%)

ちなみに、時間外労働の割増賃金率を「26%以上」とする企業割合を企業規模別(1,000 人以上、300〜999 人、100〜299 人、30〜99 人)にみると、規模が大きいほど「26%以上」の割合が高くなります(第14表)

参考|丸暗記しない覚え方の例

異なる割増賃金率を定めるには制度設計が必要です。しかし、制度設計には時間と費用がかかります。そのため、割増賃金率を「一律に定めている」が多くを占めていると考えられます。

また、同様の理由から、次の特徴がみられると考えられます。

  • 企業の多くは、時間外労働の割増賃金率を労基法の基準である「25%」としている
  • 25%超える賃率を設定している企業の割合は、企業規模が大きくなるほど高くなる

1か月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率

以下、1か月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を「60時間超の割増賃金率」と略しています。

  • 時間外労働の割増賃金率を定めている企業のうち、60時間超の割増賃金率を定めている企業割合は、64.5%(前年 61.1%)
  • ①のうち、60時間超の割増賃金率を「50%以上」とする企業割合は、98.3%(前年 99.0%)

諸手当

  • 令和6年11月分の常用労働者1人平均の所定内賃金は341.8千円となっており、そのうち諸手当は54.5千円
  • 所定内賃金に占める諸手当の割合は15.9%
  • 労働者1人平均の諸手当の支給額を諸手当の種類別にみると、「業績手当など」が最も高く、次いで「単身赴任手当、別居手当など」、「役付手当など」となっている(それぞれ64.1千円、49.3千円、43.5千円)

令和6年11月分の諸手当(以下、単に諸手当)を支給した企業の割合を諸手当の種類別(複数回答)にみると、割合が高いものから上位3つは次のとおりです。

  • 「通勤手当など」90.2%
  • 「役付手当など」84.2%
  • 「家族手当、扶養手当、育児支援手当など」62.3%

諸手当を支給した企業の割合を企業規模別にみると、次の手当は規模が大きいほど支給した企業割合が高くなります。

  • 「特殊作業手当など」、「特殊勤務手当など」
  • 「通勤手当など」、「住宅手当など」
  • 「家族手当、扶養手当、育児支援手当など」
  • 「地域手当、勤務地手当など」
  • 「単身赴任手当、別居手当など」

また、次の手当は、規模が小さいほど支給した企業割合が高くなります。

  • 「精皆勤手当、出勤手当など」

令和7年就労条件総合調査については以上です。


参考|過去の調査

以降は、ローテーションで調査している項目のうち、過去の調査で実施されたものです。

一部の項目について、概要を載せておきます。

資産形成|令和6年調査

貯蓄制度の種類

  • 貯蓄制度がある企業割合は、33.2%
  • 貯蓄制度がある企業割合を企業規模別にみると、規模が大きくなるほど高くなる
  • 貯蓄制度の種類別(財形貯蓄、社内預金、その他)にみると、「財形貯蓄」の割合が最も高い

住宅資金融資制度

  • 住宅資金融資制度がある企業割合は、3.4%
  • 住宅資金融資制度がある企業割合を企業規模別にみると、規模が大きくなるほど高くなる
  • 住宅資金融資制度の種類別(社内融資、金融機関との提携による住宅ローン、勤労者退職金共済機構からの転貸融資)にみると、「社内融資」の割合が最も高い

退職給付制度|令和5年調査

退職給付(いわゆる退職金)の有無

  • 退職給付(一時金・年金)制度がある企業割合は、74.9%
  • 退職給付制度がある企業について、制度の形態別に企業割合をみると、割合が高い順に、退職一時金制度のみ(69.0%)、両制度併用(21.4%)、退職年金制度のみ(9.6%)

一時金

退職給付のうち、一時金についての調査です。

  • 退職一時金制度がある企業について、支払準備の形態別に企業割合をみると、割合が高い順に、社内準備、中小企業退職金共済制度、特定退職金共済制度
  • 退職一時金制度について過去3年間に見直しを行った企業割合は、7.9%
  • 見直しの内容は、「新たに導入または既存のものの他に設置」の割合が最も高い

年金

退職給付のうち、年金についての調査です。

  • 退職年金制度がある企業について、支払準備の形態別に企業割合をみると、割合が高い順に、確定拠出年金(企業型)、確定給付企業年金(CBP を含む)、厚生年金基金(上乗せ給付)
  • 退職年金制度について過去3年間に見直しを行った企業割合は、4.0%
  • 見直しの内容は、「新たに導入又は既存のものの他に設置」の割合が最も高い

CBP(キャッシュ・バランス・プラン) については、就労条件総合調査の「用語の説明」に記載されています。

しかしながら、仕組みを詳しく知るには別の勉強が必要そうです(私はよく分かりません)。

社労士試験の勉強においては、確定給付型と確定拠出型双方の特徴を併せ持った退職年金制度でよろしいかと……参考まで。

支給の実態

退職給付の支給実態についてです。

調査の対象は、令和4年1年間における勤続20年以上かつ45歳以上の退職者(以下、調査対象の退職者)です。

  • 退職給付(一時金・年金)制度がある企業について、調査対象の退職者がいた企業割合は、29.2%
  • 調査対象の退職者がいる企業について、退職者割合を退職事由別にみると、割合が高い順に、定年(56.5%)、自己都合(31.7%)、会社都合(6.1%)、早期優遇(5.7%)
  • 調査対象の退職者1人平均の退職給付額を退職事由別にみると、「早期優遇」が最も高い

また、調査対象の退職者のうち、定年退職者について、退職給付額を退職給付制度の形態別にみると、退職給付額が高い順に、両制度併用、退職年金制度のみ、退職一時金制度のみという傾向がみられます

詳細な数値が必要な方は、厚生労働省のホームページ等から確認してください。


まとめ

就労条件総合調査は、直近では令和4年の社労士試験で出題されています。

出題回数の多い統計調査なため、、既出の論点は問題集などで把握しておいてください。


(参考資料等)

厚生労働省ホームページ|令和7年就労条件総合調査 結果の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/25/index.html

厚生労働省ホームページ|令和6年就労条件総合調査 結果の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/24/index.html

厚生労働省ホームページ|令和5年就労条件総合調査 結果の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/index.html