社労士試験の独学|「労一」の勉強方法

まえがき

この記事は、独学で社会保険労務士試験(以下、社労士試験)の合格を目指す人に向け、勉強方法を解説しています。

当ブログの「社労士試験のロードマップ」の④に相当する内容です。

「労一」の勉強範囲

ロードマップ上の現在位置を表した図。

労一は次の3つで構成されています。

  • 労働関係法規(労働に関係する多様な法令)
  • 労働経済(統計・白書)
  • 労務管理

勉強する順番は①②③、優先度も高い順に①②③です。

ちなみに、②の労働経済(統計・白書)を除けば、勉強方法はテキストと過去問の繰り返しです。

そのため、①の労働関係法規を勉強をする前から、「労一」を後回しにしないことをお勧めします。

毛色の異なる科目として後回しにすると、法令や制度を十分に勉強できない状態で本試験を迎えることになります。

以降、①②③の順に解説します。

①労働関係法規の勉強の進め方

下の図は、択一式問題の過去問をもとに、5つの選択肢を1肢ごとに整理したものです。

※出題範囲と集計は筆者が独自におこなったものです。

労働契約法社会保険労務士法労働組合法
R655
R551
R451
R355
R255
R155
H30552
(択一式)労働関係法規の出題傾向を肢ごとに集計|単位:肢

(R1およびR6は「労使間の交渉等に関する実態調査」から5肢出題されています)

択一式については、次の3つの範囲から安定して出題されています(問題数としては1~3問題です)

  • 労働契約法
  • 社会保険労務士法
  • 労働組合法

労働組合法からの出題は減少傾向がみられますが、あれこれ手を広げる前に上記3つの法令(特に労働契約法社会保険労務士法)についてテキスト・問題集を周回し、基本事項を徹底しましょう。

(統計と白書からの出題は予想が難しいため、労一の法令で最低2点を確保します)

上記3つの法令について過去問を解けるようになったら、他の法令に取り掛かります。

他の法令は、「雇用」「高年齢者」「障害者雇用」「女性活躍」といった、統計・白書とも関わりのある重要な分野です。

例年「1つの法令から1問」ではないものの、いくつかの法令から1肢づつ出題されています。

具体的には、次の法律からの出題が比較的多くみられます(後述する試験勉強の目安を参照)

  • 育児介護休業法
  • 職業安定法
  • パートタイム・有期雇用労働法
  • 障害者雇用促進法
  • 高年齢者雇用安定法

これらの法律を網羅的に勉強することは時間的に厳しいかもしれませんが、過去問は解けるようにしておきたいところです。

ちなみに、選択式については、労働契約法および労働組合法に関する判例からも出題されています。

択一式の過去問を解く際は、解答を暗記するのではなく、記述の正誤を分ける出題論点を把握しながら勉強してみてください。


②労働経済(統計・白書)の勉強の進め方

  • ステップ1過去問から「統計・白書」の論点を抜き出して一周する。
  • ステップ2過去問で問われた論点と最新の統計結果を整理する(未公開のものは公開時期を確認する)
  • ステップ3ステップ2で整理したものにスキマ時間で目を通す

統計・白書対策は、3ステップで解説します。

過去問を一周する

問題を仕訳する必要のない「一問一答」の過去問題集を使い、統計・白書の過去問を解いてください。

問われた数値や傾向を把握します。

数値をどこまで正確に暗記するかは、選択式の過去問を基準としてください。

「約〇割」で解ける問題がほとんどで、詳細な数値は少ないことが分かります。

言い換えると、小数点以下まで問われた論点は少ないですが、それは暗記の対象です。

ちなみに、「過去の統計や白書を勉強して意味あるの?」と思うかもしれません。

「必ず意味がある!」と断言できませんが、最新の統計・白書でも、既出の論点と新旧比較しながら読むほうが能動的にインプットできるでしょう。

過去に問われた論点と最新のデータを整理する

統計と白書に分けて説明します。

統計

2周目以降は、「厚生労働省ホームページ(外部サイトへのリンク)|厚生労働統計一覧」などから最新の統計情報を確認し、過去問の解説と最新の統計データを突合しつつ周回します。

(統計結果の概況を読むコツは、データの暗記はせずにどんどん読み進めることです)

データを確認する際に、統計の目的や概要を「過去問で問われた数値や傾向」と一緒にまとめます。

試験勉強の進捗に応じて情報を追加していくと、試験直前期には「覚えるべきこと」が一か所に整理されており、復習しやすくなります。

白書

白書は情報量が多いため、出題範囲にヤマをはるのも、時間をかけて暗記するのも難しいでしょう。

現実的な試験勉強としては、「厚生労働省ホームページ(外部サイトへのリンク)|白書、年次報告書」などを活用し、日ごろからコツコツ読み進めることになります。

ただし、優先順位を設けて読み進めることが大切です。

例えば、重要な課題とはいえ「医療関連イノベーションの推進」「食の安全確保」から出題されるとしたら「……ん?」となるでしょう。

白書は、社労士試験と関わりが深い事項を中心に読み進めます。

例えば、次の事項です。

  • 「雇用・失業の動向」
  • 「労働時間」
  • 「賃金」
  • 「労働環境の整備」
  • 「高年齢者」
  • 「若者の雇用」
  • 「女性活躍」
  • 「障害者雇用」
  • 「地域包括ケアシステム」など

「統計」の勉強にもあてはまりますが、数値を詳細に暗記するよりも、ご自身が知らない用語の意味を調べるなどし、知識を深めるよりも知識の幅を広げるように勉強してみてください。


整理したものにスキマ時間で目を通す

体験談になりますが、私は統計および白書について調べた情報にチェックボックスを設けてメモアプリに整理しました。

普段のスキマ時間はメモアプリに目を通します。

そして、試験当日はメモアプリの内容のうち、覚えられなかったものを1枚の紙に印刷しました。

試験会場では、その紙を黙読しながらチェックボックスに「✓」を入れて最終確認としています。

(スマホの電源は試験会場に入ってすぐに切りました)


③労務管理の勉強の進め方

最後に労務管理です。

最近の出題実績は低く、勉強内容は用語の暗記作業となるため、優先度は高くありません。

手持ちの教材の範囲で、人事・雇用・賃金の管理体系を試験直前期に読む程度です。

労務管理の用語(人事考課における評価誤差など)に目を通す余裕が生まれていれば、他の試験対策は順調と言えるでしょう。


参考|試験勉強の目安

択一式、選択式に分けて、令和6から平成25年までの出題実績を整理しておきます。

試験勉強における時間配分の目安にしてみてください。

択一式

法令と統計・白書に分けています。必要に応じてタブを切り替えてください。

法令出題年度
社会保険労務士法R6~H27
労働契約法R6 R3 R1 H30~H25
労働組合法R5 R4 R2 H30~H28 H26 H25
障害者雇用促進法R6 R4 R3 R2 R1 H28 H27
育児介護休業法R5 R4 R2 H29 H28
パートタイム・有期雇用労働法R6 R4 R3 R2 H25
男女雇用機会均等法R3 H30 H27 H26
職業安定法R6 R5 R2 R1
高年齢者雇用安定法R5 R3 R1 H26
労働者派遣法R4 H30 H28
最低賃金法R6 R1 H29 H26
労働施策総合推進法R6 R3 H26
個別労働紛争解決促進法R2 H29
次世代育成支援対策推進法H27
有期雇用特別措置法H27
女性活躍推進法H29
青少年雇用促進法R5
過労死等防止対策推進法H30
令和6~平成25年についての出題実績|労一|法令|択一式
名称出題年度
労働経済白書R3 H27
厚生労働白書H30 H29
男女共同参画白書(内閣府)H29 H25
高齢社会白書(内閣府)H25
就労条件総合調査R4 R1 H28 H27 H26
就業形態の多様化に関する総合実態調査R3 H25
雇用均等基本調査R5
雇用の構造に関する実態調査
(転職者実態調査)
R4
雇用の構造に関する実態調査
(若年者雇用実態調査)
R2 H28
能力開発基本調査R5
パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査
(事業所調査)
R5 H26
労使間の交渉等に関する実態調査R6 R1
労働安全衛生調査(実態調査)R6 R2 H26
労働災害発生状況の分析等H30
労働力調査(総務省)R4
令和6~平成25年についての出題実績|労一|統計・白書|選択式

選択式

法令については、令和4年から令和6年まで連続して判例からの出題がみられます。

統計調査については、調査名そのものを問われた年(令和2年)もあります。

法令出題年度
社会保険労務士法なし
労働契約法(判例)R5 R4
労働組合法(判例)R6
労働者派遣法R5
最低賃金法R5
障害者雇用促進法R4 H25
男女雇用機会均等法R6
女性活躍推進法R1
次世代育成支援対策推進法H30 H26
労働施策総合推進法R3 H29
職業能力開発促進法R1
雇用保険法R3
令和6~平成25年についての出題実績|労一|法令|選択式
名称出題年度
労働経済白書なし
厚生労働白書R6 R3
就労条件総合調査R2 H28
毎月勤労統計調査H26
雇用動向調査R2 H27
障害者雇用状況の集計結果H25
中高年者縦断調査H27
仕事と介護の両立に関する企業アンケート調査H27
雇用均等基本調査R2 H26
能力開発基本調査H29
「外国人雇用状況」の届出状況まとめH29
労働組合基礎調査H28
労働組合活動等に関する実態調査H28
人口動態統計H30
人口統計(総務省)H30
就業構造基本調査(総務省)R2 R1 H27
労働力調査(総務省)R6 R2
令和6~平成25年についての出題実績|労一|統計・白書|選択式

令和3年の雇用保険法は、助成金を含めた高年齢者の雇用に関する出題です。


統計対策を始める時期の目安

本格的な統計・白書対策は5〜6月に始まります。

ただし、統計・白書対策の「勉強すること」さえ分かれば、5月を待たずに勉強を開始できます。

ひとつの目安を紹介します。

私は2月頃から、先の表にある統計調査を中心に次の事項を整理しています。

  • 統計名
  • 統計の目的
  • 基幹統計調査かどうかの確認
  • 過去問で問われた論点や数値(白書を含む)

そして、寝る前に数分程度、整理した事項に目を通し、小さな統計対策を毎日こなしています。

結果、試験直前期の統計・白書対策に割く時間を節約でき、模試や基礎的な論点の復習に多くの時間を費やせました。


まとめ

労一の勉強の手順は次の①②③の流れです。

  • 労働関係法規
  • 労働経済(統計・白書)
  • 労務管理

優先度も高い順に①②③です。

対象が広いため、出題されそうな範囲を少しずつカバーしていきましょう。

以上が「労一」の勉強方法になります。

社労士試験の独学は少なくとも数か月は続きます。スケジュール管理と体調管理に気をつけて、自身が納得できるようやり切ってください。