この記事では、労働基準法の「賃金」に関する次の規定を解説しています。
- 出来高払制の保障給(27条)
社会保険労務士試験の独学、労務管理担当者の勉強などに役立てれば嬉しいです。
当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しておりますが、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
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出来高払制の保障給(27条)
労基法27条では、賃金を労働者の仕事量に応じて支払う場合(請負制など)に、労働時間に応じた一定額を保障することを使用者に義務づけています。
ちなみに、労基法27条での請負制とは、請負契約と称して実態は指揮命令関係にあること(いわゆる偽装請負のこと)ではなく、労働契約関係に基づく賃金に請負給を含んでいるケースをいいます。
出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。
労基法27条の趣旨は、労働者の責に基づかない事由によって、実収賃金が低下することを防ぐものです(昭和22年9月13日発基17号)
例えば、労働者が就業したにもかかわらず、お客さんが極端に少ないために売上高が下がった場合、原料の品質が不良のため極端に歩留まり率が低下した場合などが保障の対象として考えられます。
労働していない時間(例えば、使用者の責に帰さない事由による休業)についてまで保障させる規定ではありません(昭和23年11月11日基発1639号)
使用者の責に帰すべき事由によって休業した場合には、出来高払制の保障給(27条)ではなく、休業手当(26条)が適用されます。
休業手当についてはこちらの記事で解説しています。
罰則
労基法27条の規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処せられます(労基120条)
労基法27条には「労働時間に応じ一定額」とあり、保障が必要な賃金の額について規定していません。
通達によると、労基法27条では「労働者に対し、常に通常の実収賃金を余りへだたらない程度の収入が保障されるように保障給の額を定める必要がある」と解しています(昭和22年9月13日発基17号)
なお、固定給と請負給を併給する場合には、請負給の部分について保障が必要です(昭和63年3月14日基発150号)
ただし、賃金構成からみて固定給の部分が賃金の総額の大半(概ね6割程度以上)を占めている場合には、法27条の「請負制で使用する」場合に該当しないと解されています(昭和63年3月14日基発150号)
自動車運転者についての労働条件の改善を目的とした基準について、通達では次のように整理しています(平成1年3月1日基発93号)
- 歩合給制度が採用されている場合には、労働時間に応じ、固定的給与と併せて通常の賃金の6割以上の賃金が保障されるよう保障給を定めるものとすること
- 歩合給制度のうち累進歩合制度は廃止するものとすること
平均賃金の最低保障額
出来高制等の「平均賃金の最低保障額」は、次のように計算します(労基法12条1項)
- 平均賃金の最低保障額
= 出来高制等の賃金の総額 ÷ 労働した日数 × 60%
平均賃金は日額で計算しますが、労基法27条の保障給は、「労働時間」に応じて一定額を保障する必要があります。
社労士試験の問題として出題された際は、記述を注意深く読んでみてください。
ここまで労働基準法の「賃金」に関する次の規定を解説しました。
- 出来高払制の保障給(27条)
出来高払制の保障については、「賃金の保障」と「平均賃金の保障」との違いは把握しておいてください。
ちなみに、賃金が「出来高払制その他の請負制」であっても、最低賃金法は適用されます。
最低賃金法はこちらの記事で解説しているので、余裕があれば勉強してみてください。
この記事では、まとめを省略します。
(参考資料等)
厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html
- 労働基準法27条、28条、120条
- 昭和22年9月13日発基17号(労働基準法の施行に関する件)
- 平成1年3月1日基発93号(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準について)
解釈例規(昭和63年3月14日基発150号)