この記事では、労働基準法の6章(年少者)から、次の規定を解説しています。
- 未成年者の労働時間および休日(60条)
- 未成年者の深夜業(61条)
- 危険有害業務の就業制限(62条)
- 坑内労働の禁止(63条)
社会保険労務士試験の独学、労務管理担当者の勉強などに役立てれば嬉しいです。
当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しておりますが、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
未成年者の労働時間および休日(60条)
労基法における年少者、児童の年齢区分は次のとおりです。
- 年少者 ⇒ 18才未満
- 児童 ⇒ 15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで
労基法60条1項から3項で定めている内容は次のとおりです。
- 第1項 ⇒ 未成年者に適用しない規定を定めています
- 第2項 ⇒ 児童についての法定労働時間を定めています
- 第3項 ⇒ 年少者(児童を除く)についての例外を定めています
以降、具体的に解説していきます
条文はタブを切り替えると確認できます。
未成年者に適用しない規定(1項)|
次の規定は、未成年者に適用されません。
- 1カ月単位の変形労働時間制(32条の2)
- フレックスタイム制(32条の3、32条の3の2)
- 1年単位の変形労働時間制(32条の4、32条の4の2)
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制(32条の5)
- 労使協定による時間外、休日労働(36条)
- 法定労働時間および休憩時間に関する特例(40条)
- 高度プロフェッショナル制度(41条の2)
言い換えると、次の規定は未成年者にも適用されます。
- 災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等(33条)
- 労働時間および休憩時間に関する規定の適用除外(41条)
未成年者にも労基法41条は適用されます。
ただし、労基則23条による日直勤務については、原則として許可されません(昭和23年6月16日収監733号)
第4章の規定としては、休憩(34条)、休日(35条)も適用されます。
ただし、未成年者は、労基法40条が適用除外となるため、休憩の特例(休憩の適用除外、一斉付与の適用除外、自由利用の適用除外)は認められません。
未成年者について、休憩の一斉付与を適用除外とする場合は、労使協定の締結が必要です(労基法34条2項)
未成年者の法定労働時間(2項)|
年少者(児童を除く)、児童についての法定労働時間は下表のとおりです。
週 | 日 | |
年少者(児童を除く) | 40時間 | 8時間 |
児童 | 修学時間を通算して 40時間 | 修学時間を通算して 7時間 |
年少者(児童を除く)の法定労働時間は、労基法32条と同様です。
児童の法定労働時間は、修学時間を通算して1週間40時間、1日7時間となります。
「修学時間」とは、授業開始時刻から同日の最終授業終了時刻までの時間から、休憩時間(昼食時間を含む)を除いた時間と解されています(昭和25年4月14日基収28号)
つまり、修学日の労働時間の上限は、7時間から「修学時間」を差し引いた時間となります。
年少者(児童を除く)の労働時間制についての例外(3項)|
年少者(児童を除く)については、次の例外が認められています。
- (1号)1日10時間までの労働が可能となる場合
1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮することで、他の日の労働時間を10時間まで延長することが可能です。
ただし、1週間の労働時間は40時間を超えることはできません。
- (2号)1カ月または1年単位の変形労働時間制の例による場合
労働時間を1週間について48時間以下、1日について8時間を超えない範囲内とすることで、次の変形労働時間制の例により労働させることが可能です。
- 1カ月単位の変形労働時間制
- 1年単位の変形労働時間制
なお、児童については、所轄労働基準監督署長の許可を受けて労働させる場合でも、上記(1号)および(2号)の例外を適用できません。
労働基準法
第六十条
第三十二条の二から第三十二条の五まで、第三十六条、第四十条及び第四十一条の二の規定は、満十八才に満たない者については、これを適用しない。
② 第五十六条第二項の規定によって使用する児童についての第三十二条の規定の適用については、同条第一項中「一週間について四十時間」とあるのは「、修学時間を通算して一週間について四十時間」と、同条第二項中「一日について八時間」とあるのは「、修学時間を通算して一日について七時間」とする。
③ 使用者は、第三十二条の規定にかかわらず、満十五歳以上で満十八歳に満たない者については、満十八歳に達するまでの間(満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日までの間を除く。)、次に定めるところにより、労働させることができる。
一 一週間の労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、一週間のうち一日の労働時間を四時間以内に短縮する場合において、他の日の労働時間を十時間まで延長すること。
二 一週間について四十八時間以下の範囲内で厚生労働省令で定める時間、一日について八時間を超えない範囲内において、第三十二条の二又は第三十二条の四及び第三十二条の四の二の規定の例により労働させること。
労働基準法施行規則
第三十四条の二の四
法第六十条第三項第二号の厚生労働省令で定める時間は、四十八時間とする。
罰則
結論としては、労基法60条の要件を満たさない場合は、労基法32条の違反となります(昭和63年1月1日基発1号)
労基法32条の違反には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が定められています(労基法119条)
考え方としては、労基法60条は、労基法32条の構成要件(*1)を修正したものと解されています(昭和63年3月14日基発150号)
(*1)労基法に定められている、労基法違反が成立するための条件 というニュアンスです。
具体的には、次のように示されています(前掲通達)
- 第60条第2項は、第32条の読替え規定として規定することとしたもので、これに関する違反は第60条第2項によって読替えられた第32条の違反となる
- 第60条第3項は、変形労働時間制等の規定と同様に一定の要件の下での義務解除規定として規定することとなったので、同項の要件に当たらない限り第32条の違反となる
休日
労基法35条(休日)は、労基法60条によって適用を除外する規定に含まれていません。
「ただし、原則としてなんでしょ?」かもしれないので、論点をいくつか紹介します。
変形休日制と休日の振替|
満18才に満たない者についても、週40時間を超えない限り、変形休日制(労基法35条2項)を採用できます(昭和24年2月5日基収4160号)
また、就業規則その他の定めにより、労基法35条2項の範囲内で休日を変更すること(いわゆる休日の振替)は可能です(前掲通達)
授業の有無|
児童については、修学日に休日を与えても差し支えない と解されています(昭和23年7月15日基収1799号)
また、労基法60条2項の範囲内で、児童を修学時間のない日(通常は日曜日)に労働させることは、別の日に労基法35条の休日(いわゆる法定休日)を与えていれば差し支えない とされています(前掲通達)
労基法60条3項1号で定める例外です。
年少者(児童を除く)については、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮することで、他の日の労働時間を10時間まで延長することが可能です。
ただし、1週間の労働時間は40時間以内とすることが必要です。
なお、「8時間を超えて2時間まで時間外労働をさせることができる」という趣旨ではありません。
「第32条の規定にかかわらず」とあるため、「他の日」については、法定労働時間を「8時間」ではなく、「10時間まで」に変更できるイメージです。
4時間以内に短縮するとは|
「4時間以内に短縮する」とは、ある1日の労働時間を4時間以内とするだけでなく、ある1日を丸々休みにする場合も含まれます(昭和48年2月9日 47基収663号)
具体的には、週休2日制における休日のうち、いわゆる所定休日(*2)を与えることは「1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合」に該当する と解されています(前掲通達)
(*2)労基法35条1項の休日(いわゆる法定休日)以外の休日のことです。
他の日とは|
「他の日」とは、他の「1日」に限りません(昭和23年2月3日基発161号)
労基法60条3項2号で定める例外です。
厳密には、年少者(児童を除く)であっても、1カ月単位の変形労働時間制(32条の2)、1年単位の変形労働時間制(32条の4、32条の4の2)は適用できません(労基法60条1項)
「1カ月単位または1年単位の変形労働時間制の例により」労働させる場合は、変形期間(または対象期間)における労働時間を「法定労働時間の総枠の範囲内」に収めるだけでなく、「1週間について48時間、1日について8時間」の範囲に収めることも必要です。
なお、未成年者には労基法36条は適用されないため、36協定を締結して時間外労働、休日労働をさせることはできません(労基法60条1項)
そのため、変形労働時間制の例を適用しても、法定労働時間の総枠を超えて労働させることはできません。
他にも、1年単位の変形労働時間制の例による場合は、1年単位の変形労働時間制についての労使協定の締結が必要です(平成6年1月4日基発1号)
(1カ月単位の変形労働時間制については、就業規則その他これに準ずるものでも制度を採用できます)
また、週40時間を超える(48時間までの)労働は「特定された週」に限られるなど、各規定に則って運用することになります。
未成年者の深夜業(61条)
原則論
例外はあるものの、原則として、未成年者の深夜(午後10時から午前5時まで)の労働は禁止されています。
(原則として)労働を禁止する時間は、次のとおりです。
- 年少者(児童を除く)⇒ 午後10時から午前5時まで
- 児童⇒ 午後8時から午前5時まで
なお、児童については、深夜を除いた時間(昼間)に労働させる場合でも、所轄労働基準監督署長の許可が必要です(労基法56条2項)
労基法61条1項の「使用してはならない」は、「労働させてはならない」と異なるのか という照会に対し、現実に労働させることを禁止する趣旨である と示した通達があります(昭和23年5月18日基収1625号)
未成年者の労働を禁止する時間(1項本文、5項)
原則
年少者(児童を除く)を労働者として、午後10時から午前5時まで(*3)の間に労働させることはできません。
(*3)厚生労働大臣が必要であると認めた場合には、「午後11時から午前6時まで」となります(2項)。ただし、年少者(児童を除く)については、現在、定められていません。
原則
児童を労働者として、午後8時から午前5時まで(*4)の間に労働させることはできません。
(*4)厚生労働大臣が必要であると認めた場合には、「午後9時から午前6時まで」となります(2項、5項)
交替制によって労働させる満16歳以上の男性(1項ただし書き)
例外
交替制によって労働させる満16歳以上の男性については、午後10時から午前5時までの間に労働させることが可能です。
(割増賃金の支払いも必要です)
交替制よって労働させる事業(3項)
例外
「交替制によって労働させる事業」については、行政官庁の許可を受けて、午後10時30分まで労働させることが可能です。
許可は、交替制による深夜業時間延長許可申請書(年少則様式第三号)により、所轄労働基準監督署長から受けなければなりません(年少則5条)
第3項により労働させることが可能な深夜業の時間は、午後10時から午後10時30分までの「30分」です。
なお、労基法60条3項に基づく「30分」についても、割増賃金の支払いは必要です(昭和23年2月20日基発297号)
労基法61条1項から3項までの適用除外(4項)
「未成年者の深夜業を制限する規定」を適用除外とする定めです。
例外
労基法33条1項(災害等による臨時の必要)の規定によって時間外労働をさせ、または休日労働をさせる場合には、未成年者(児童については、許可を受けて)の労働について、深夜業(児童については5項によって読替えられた時間)を制限されません。
なお、労基法33条1項に限られます。
(労基法33条2項は「行政官庁による代休付与命令」、3項は「公務のために臨時の必要がある場合」の規定です)
例外
次の事業または業務については、労基法61条1項から3項までは適用されません。
つまり、未成年者(児童については、許可を受けて)の労働について、深夜業(児童については5項によって読替えられた時間)を制限されません。
- 農業、林業、畜産業、養蚕業、水産業
- 保健衛生業
- 電話交換の業務(*5)
(*5)電話を受けて外部からの問い合わせに対応したり、他部署に引き継ぐ業務ではありません。自動電話交換機が普及するまでは、電話による通話を可能とするために電話回線を手作業で繋ぎ変える業務がありました。
厚生労働大臣が必要であると認める場合(2項、5項)
例外
次の場合には、児童の労働を禁止する時間が「午後9時から午前6時までの間」に変更されます(平成16年11月22日厚生労働省告示407号)
- 所轄労働基準監督署長の許可(労基法56条2項)を受けて「演劇の事業」に使用される児童が、演技を行う業務に従事する場合
演劇子役に限って、午後9時まで労働(演技を行う業務に従事)させることが可能です。
労働基準法
第六十一条
使用者は、満十八才に満たない者を午後十時から午前五時までの間において使用してはならない。ただし、交替制によって使用する満十六才以上の男性については、この限りでない。
② 厚生労働大臣は、必要であると認める場合においては、前項の時刻を、地域又は期間を限って、午後十一時及び午前六時とすることができる。
③ 交替制によって労働させる事業については、行政官庁の許可を受けて、第一項の規定にかかわらず午後十時三十分まで労働させ、又は前項の規定にかかわらず午前五時三十分から労働させることができる。
④ 前三項の規定は、第三十三条第一項の規定によって労働時間を延長し、若しくは休日に労働させる場合又は別表第一第六号、第七号若しくは第十三号に掲げる事業若しくは電話交換の業務については、適用しない。
⑤ 第一項及び第二項の時刻は、第五十六条第二項の規定によって使用する児童については、第一項の時刻は、午後八時及び午前五時とし、第二項の時刻は、午後九時及び午前六時とする。
別表第一(抜粋)
六 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
七 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業
十三 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
年少者労働基準規則
第五条
法第六十一条第三項の規定による許可は、様式第三号の交替制による深夜業時間延長許可申請書により、所轄労働基準監督署長から受けなければならない。
平成十六年十一月二十二日 厚生労働省告示第四百七号
労働基準法第六十一条第五項の規定により読み替えられた同条第二項に規定する厚生労働大臣が必要であると認める場合及び期間
労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十一条第五項の規定により読み替えられた同条第二項に規定する厚生労働大臣が必要であると認める場合は、同法第五十六条第二項の規定によって演劇の事業に使用される児童が演技を行う業務に従事する場合とし、同法第六十一条第五項の規定により読み替えられた同条第二項に規定する期間は、当分の間とする。
労基法61条は、難解な規定です。
余裕のある方は、上記解説のタブを切り替えて条文を読んでみてください。
罰則
労基法61条の違反には、 6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が定められています(労基法119条)
結論としては、第1項と第3項は異なります。
簡単にいうと、第1項は特定の「労働者」を対象としています。一方で、第3項は「事業」を対象としています。
第1項の交替制
第1項の「交替制」とは、特定の労働者について、昼間勤務と夜間勤務とを一定期間ごとに入れ替える勤務形態をいいます(同旨 昭和23年7月5日基発971号)
例えば、いわゆる「早番(昼間)」と「遅番(夜間)」を採用しているお店があるとしましょう。
お店では、「早番」のみでシフトを組む労働者と、「早番」「遅番」の両方でシフトを組む労働者がいるとします。
第1項の交替制は、特定の労働者について、ある日は「早番」、他の日は「遅番」のように入れ替えて(組み合わせて)労働させる形態を意味します。
なお、昼間勤務と夜間勤務を一定期間ごとに入れ替えない勤務形態(例えば、遅番のみでシフトを組む場合)は、第1項の交替制に該当しません(同旨 昭和24年4月12日基収4203号)
ちなみに、昼間勤務と夜間勤務の作業が同一であることは要しないものと解されています(昭和31年4月12日基収1585号)
第1項の交替制については、「満16歳以上、かつ、男性」に限定されるものの、所轄労働基準監督署長の許可は不要です。
第1項の適用となる労働者は、「午後10時から午前5時まで」の全ての時間で労働が可能となります。
第3項の交替制
第3項は「交替制によって労働させる事業」についての規定です。
事業(一定の場所において相関連する組織の下に業として行われる作業の一体)そのものが交替制を採っている場合です。
例えば、午前5時から13時45分(8時間労働、45分休憩)をシフト1、13時45分から午後10時30分(8時間労働、45分休憩)をシフト2として、交替制で稼働している工場があるとしましょう。
上記の工場は、第3項の「交替制によって労働させる事業」となります。
所轄労働基準監督署長の許可が必要となるものの、事業全体で午後10時30分まで労働させることが可能です。
労基法61条3項に規定されているため解説します。
「交替制によって労働させる事業」については、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、午前5時30分から労働させることも可能です。
「午前5時を過ぎると深夜業の時間じゃないから、そもそも労働させることは可能だよね」と思われた方は、勉強されてますね。
年少者(児童を除く)について厚生労働大臣が必要であると認めた場合には、午後11時から午前6時までが、労働させてはならない時間(深夜業)となります(労基法60条2項)
そのため、深夜業の時間が「午後11時から午前6時まで」と定められた場合には、午前5時30分から午前6時までの「30分」は、労働させることが可能な深夜業の時間となります。
「交替制によって労働させる事業」に該当し、「所轄労働基準監督署長の許可」を受けて、「午前5時30分から」労働させるだけでなく、深夜業となる時間が「午後11時から午前6時まで」となった場合の話です。
先ほど解説したとおり、「厚生労働大臣が必要であると認めた場合」は、いわゆる演劇子役についてのみ、定められています。
ちなみに、社労士試験の問題を解く際は、記述中に「(厚生労働大臣が必要であると…午後11時から午前6時まで)」があっても、「定められていないから誤り!」とは判断しないでください。念のため。
ところで、未成年者の深夜業について学習していると、タレントさんを思い浮かべるのは私だけでしょうか…
未成年者の深夜業が禁止されるのは、未成年者が労基法9条の「労働者」に該当する場合です。
実態として労基法上の「労働者」でないならば、労基法61条は適用されません。
そこで、社労士試験で出題実績のある通達(芸能タレント通達)を紹介します。
芸能タレント通達
次のいずれにも該当する場合には、労基法9条の労働者ではない(昭和63年7月30日基収355号)
① 当人の提供する歌唱、演技等が基本的に他人によって代替できず、芸術性、人気等当人の個性が重要な要素となっていること
② 当人に対する報酬は、稼働時間に応じて定められるものではないこと
③ リハーサル、出演時間等スケジュールの関係から時間が制約されることはあっても、プロダクション等との関係では時間的に拘束されることはないこと
④ 契約形態が雇用契約ではないこと
未成年者の就業を禁止する業務
未成年者については、深夜業の制限だけでなく、就業を禁止する業務等が定められています。
- 危険有害業務の就業制限(62条)
- 坑内労働の禁止(63条)
危険有害業務の就業制限|
労基法62条では、満18才に満たない者(未成年者)を危険な業務、重量物を取り扱う業務、その他安全、衛生または有害な場所における業務に就させることを禁止しています。
他にも、「動力によるクレーンの運転をさせてはならない」、「有害な原料を取り扱う業務に就かせてはならない」など、各種の制限(禁止)が定められています。
具体的には、年少則8条で「年少者の就業制限の業務の範囲」、年少則9条で「児童の就業禁止の業務の範囲」が定められています。
労働基準法
第六十二条
使用者は、満十八才に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
② 使用者は、満十八才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。
③ 前項に規定する業務の範囲は、厚生労働省令で定める。
年少則8条および9条は、こちらの記事を参照ください(業務についての具体的な解釈は、通達集などを参照ください)
罰則
労基法62条の違反には、 6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が定められています(労基法119条)
重量物を取り扱う業務
未成年者の就業禁止となる重量物の重量は、下表に整理しておきます(年少則7条)
断続作業(以上) | 継続作業(以上) | |
満16才未満(女) | 12㎏ | 8㎏ |
満16才未満(男) | 15㎏ | 10㎏ |
満16才以上 満18才未満(女) | 25㎏ | 15㎏ |
満16才以上 満18才未満(男) | 30㎏ | 20㎏ |
使用者は、満18才に満たない者を坑内で労働させてはならない。
「坑内労働」には、「鉱山」におけるものと「ずい道工事」(いわゆるトンネル工事)等の鉱山以外におけるものがあります(同旨 昭和25年8月11日基発732号)
罰則
労基法63条の違反には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が定められています(労基法118条)
ここまで、次の規定を解説しました。
- 未成年者の労働時間および休日(60条)
- 未成年者の深夜業(61条)
- 危険有害業務の就業制限(62条)
- 坑内労働の禁止(63条)
成年者に適用される規定を原則とするならば、第6章は例外を定めています。
当記事で触れた、1カ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、休日については、当ブログでも解説しています。
忘れてしまったり、あやふやな場合は復習してみてください。
最後に、この記事を簡単にまとめて終わりにします。
未成年者の労働時間および休日(60条)
未成年者に適用しない規定(1項)|
次の規定は、未成年者に適用しない。
- 1カ月単位の変形労働時間制(32条の2)
- フレックスタイム制(32条の3、32条の3の2)
- 1年単位の変形労働時間制(32条の4、32条の4の2)
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制(32条の5)
- 労使協定による時間外、休日労働(36条)
- 法定労働時間および休憩時間に関する特例(40条)
- 高度プロフェッショナル制度(41条の2)
未成年者の法定労働時間(2項)|
週 | 日 | |
年少者(児童を除く) | 40時間 | 8時間 |
児童 | 修学時間を通算して 40時間 | 修学時間を通算して 7時間 |
修学時間とは、授業開始時刻から同日の最終授業終了時刻までの時間から、休憩時間(昼食時間を含む)を除いた時間をいう。
年少者(児童を除く)の労働時間制についての例外(3項)|
年少者(児童を除く)については、次の例外が認められている。
- 1週間の労働時間は40時間を超えない範囲において、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮することで、他の日の労働時間を10時間まで延長することができる
- 労働時間を1週間について48時間以下、1日について8時間を超えない範囲内において、1カ月または1年単位の変形労働時間制の例により労働させることができる
未成年者の深夜業(61条)
原則
年少者(児童を除く)を労働者として、午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣は、必要であると認める場合においては、地域または期間を限って、午後11時から午前6時とすることができる)の間に労働させることはできない。
原則
児童を労働者として、午後8時から午前5時まで(厚生労働大臣は、必要であると認める場合においては、地域または期間を限って、午後9時から午前5時とすることができる)の間に労働させることはできない。
例外
- 「交替制」によって満16歳以上の男子を労働させる場合
- 「交替制によって労働させる事業」について、行政官庁の許可を受けて、午後10時30分まで(午前5時30分から)労働させる場合
- 労基法33条1項(災害等による臨時の必要)により労働させる場合
- 農業、林業、畜産業、養蚕業、水産業、保健衛生業、電話交換の業務
例外
所轄労働基準監督署長の許可(労基法56条2項)を受けて「演劇の事業」に使用される児童が、演技を行う業務に従事する場合は、午後9時から午前6時までの間に労働させることはできない。
危険有害業務の就業制限(62条)
使用者は、満18才に満たない者(未成年者)を危険な業務、重量物を取り扱う業務、その他安全、衛生または有害な場所における業務等に就させてはならない。
坑内労働の禁止(63条)
使用者は、満18才に満たない者を坑内で労働させてはならない。
(参考資料等)
厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html
- 労働基準法60条、61条、62条、63条、118条、119条
- 労働基準法施行規則34条の2の4
- 年少者労働基準規則5条、7条
- 平成16年11月22日厚生労働省告示407号(労働基準法第六十一条第五項の規定により読み替えられた同条第二項に規定する厚生労働大臣が必要であると認める場合及び期間)