この記事では、労働基準法の6章から、次の規定を解説しています。
- 未成年者の労働契約(58条)
- 未成年者の賃金請求権(59条)
- 帰郷旅費(64条)
社会保険労務士試験の独学、労務管理担当者の勉強などに役立てれば嬉しいです。
当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しておりますが、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
未成年者の労働契約(58条)
簡単にいうと、親が子に代わって労働契約を締結することは禁止されています。
① 親権者又は後見人は、未成年者に代って労働契約を締結してはならない。
② 親権者若しくは後見人又は行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては、将来に向ってこれを解除することができる。
罰則
未成年者に代わって労働契約を締結した親権者または後見人は、30万円以下の罰金に処せられます(労基法120条)
後見人
「後見人」は、未成年者が未成年後見制度(民法838条)を利用した場合、未成年者が成年後見制度(民法7条)を利用した場合に選任(指定)されます。
「んっ!?、未成年者に成年後見人?」と違和感を感じるかもしれません。しかしながら、制度上そのようになっています。
民法は、社労士試験の試験科目とされていないため、「後見人」を覚えてください。
労働契約の締結と同意
未成年者は自ら使用者と労働契約を締結するためには、法定代理人(親権者または後見人)の同意を必要とします(民法5条)
労基法58条は、未成年者に代って、親権者または後見人と使用者との間で「未成年者についての労働契約」を締結することを禁止する規定です。
未成年者本人と使用者との間で「未成年者についての労働契約」を締結することに、親権者または後見人が同意することを禁止する規定ではありません。
労働契約の解除
労働契約が未成年者に不利な場合の解除は、親権者、後見人の他に、所轄労働基準監督署長も行えます(年少則3条)
ちなみに、学校長は解除できません。
未成年者の賃金請求権(59条)
簡単にいうと、子が労働して得た賃金を親が代って受け取ることは禁止されています。
未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ってはならない。
労基法58条と同様に、後見人についても禁止されています。
罰則
未成年者の賃金を代って受け取った親権者または後見人は、30万円以下の罰金に処せられます(労基法120条)
ちなみに、未成年の労働者に賃金を支払わなかった使用者は、労基法24条(賃金支払の5原則)に違反します。
そのため、労基法59条に違反する者に賃金を支払った使用者は、労基法24条の違反として30万円以下の罰金に処せられます(労基法120条)
帰郷旅費(64条)
未成年の労働者を解雇し、かつ、未成年者が解雇の日から14日以内に帰郷する場合の規定です。
満18才に満たない者が解雇の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
ただし、満18才に満たない者がその責めに帰すべき事由に基づいて解雇され、使用者がその事由について行政官庁の認定を受けたときは、この限りでない。
罰則
労基法64条で定める帰郷旅費を負担しなかった使用者は、30万円以下の罰金に処せられます(労基法120条)
行政官庁の認定を受けたとき
解雇の理由について、労働者の責めに帰すべき事由にあると認定を受けたならば、旅費の負担は不要です。
労基法64条ただし書きの認定は、所轄労働基準監督署長が行います(年少則10条1項)
ちなみに、労基則7条の認定を受けた場合(労働者の責に帰すべき事由の認定を受けて解雇予告の適用を除外した場合)は、帰郷旅費についての認定を受けたもの とされます(年少則10条2項)
ところで、「14日以内に帰郷する場合……旅費を負担」という文言は、労基法15条3項でも用いられています。
労基法15条3項は、労働契約を即時解除した場合の旅費の負担についての規定です(こちらの記事で解説しています)
労働条件の明示に関する規定なのです。あいまいな方は復習してみてください。
ここまで、次の規定を解説しました。
- 未成年者の労働契約(58条)
- 未成年者の賃金請求権(59条)
- 帰郷旅費(64条)
労基法58条、59条は、解釈に議論のある規定です。
しかし、社労士試験に論述はありません。
そのため、問題集を解きつつ、「試験で条文を問われたら正解できる」レベルを目標にしてみてください。
最後に、この記事で解説した条文を確認して終わりにします。
労基法58条(未成年者の労働契約)
① 親権者又は後見人は、未成年者に代って労働契約を締結してはならない。
② 親権者若しくは後見人又は所轄労働基準監督署長は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては、将来に向ってこれを解除することができる。
労基法59条(未成年者の賃金請求権)
未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ってはならない。
労基法64条(帰郷旅費)
満18才に満たない者が解雇の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
ただし、満18才に満たない者がその責めに帰すべき事由に基づいて解雇され、使用者がその事由について所轄労働基準監督署長の認定を受けたときは、この限りでない。
(参考資料等)
厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html
- 労働基準法58条、59条、64条、120条
- 年少者労働基準規則3条、10条