この記事では、労働基準法の4章に関する次の規定を解説しています。
- 労働時間等に関する規定の適用除外(労基法41条)
- 断続的な宿直または日直勤務(労基則23条)
社会保険労務士試験の独学、労務管理担当者の勉強などに役立てれば嬉しいです。
当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しておりますが、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
労働時間等に関する規定の適用除外(41条)
労働時間を把握する義務
「労働時間の把握」については、厚生労働省より、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(以下、ガイドライン)が示されています。
これから解説する労基法41条は、「労働時間等に関する規定を適用除外」とする労働者の範囲を定めた規定です。
労基法41条が適用される労働者については、ガイドラインは適用されません(ガイドラインの2 適用の範囲を参照)
ただし、労基法41条に該当する労働者も、安衛法66条の8で定める面接指導の対象となります。
そのため、ガイドラインは適用されなくとも、客観的な方法によって労働時間を把握することが必要です(安衛法66条の8の3、安衛則52条の2、52条の7の3)
条文はタブを切り替えると確認できます。
第4章(労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇)、第6章(年少者)および第6章の2(妊産婦等)で定める労働時間、休憩、休日に関する規定は、次のいずれかに該当する労働者については適用されません。
- 農業、畜産業、養蚕業、水産業に従事する者
- 事業の種類にかかわらず監督もしくは管理の地位にある者(管理監督者)
- 事業の種類にかかわらず機密の事務を取り扱う者
- 監視に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
- 断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
第1号|
①に林業は含まれません。
第2号|
②「管理監督者」については後述します。
③「機密の事務を取り扱う者」とは、秘書その他職務が経営者または管理監督者の活動と一体不可分であって、厳格な労働時間管理になじまない者 と解されています(昭和22年9月13日発基17号)
第3号|
④「監視に従事する者」とは、原則として、一定部署にあって監視するのを本来の業務とし、常態として身体または精神的緊張の少ない者 と解されています(昭和63年3月14日基発150号)
ちなみに、次のような業務については、労基法41条の許可をしない と示されています(昭和63年3月14日基発150号)
- 交通関係の監視、車両誘導を行う駐車場の監視など、精神的緊張の高い業務
- プラント等における計器類を常態として監視する業務
- 危険または有害な場所における業務
⑤「断続的労働に従事する者」とは、休憩時間は少ないが手待時間が多い者 と解されています(昭和63年3月14日基発150号)
また、「常態として断続的労働に従事する者」とされています(前掲通達)
したがって、次のような形態は労基法41条の許可をすべきではない と示されています (同旨 前掲通達)
- 1日の労働時間のうち、断続的労働と通常の労働とが混在するもの
- ある日は断続的労働を行うが、他の日は通常の労働に就くという形態を繰り返すもの
宿直または日直勤務(労基則23条)については後述します。
行政官庁の許可|
第3号(④⑤)については、様式第14号により所轄労働基準監督署長の許可を受けることが要件です(労基則34条)
そのため、許可を受けずに独自に④または⑤を判断して労基法41条を適用し、時間外労働、休日労働についての割増賃金を適用除外とすることはできません。
労働基準法
第四十一条
この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
別表第一(抜粋)
六 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
七 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業
労働基準法施行規則
第三十四条
法第四十一条第三号の規定による許可は、従事する労働の態様及び員数について、様式第十四号によって、所轄労働基準監督署長より、これを受けなければならない。
適用除外となる範囲
労基法41条により適用除外となるのは、4章、6章、6章の2における「労働時間、休憩、休日に関する規定」に限られます。
そのため、労基法41条が適用されても、深夜業の関係規定(37条のうち深夜の割増賃金、61条、66条3項)は適用除外とはなりません(昭和63年3月14日基発150号、最二小判 平21.12.18 ことぶき事件)
ただし、労働協約、就業規則その他によって、深夜の割増賃金を含めて所定賃金が定められていることが明らかな場合(例えば、深夜の割増賃金に相当することを明確にしたうえで、実際に深夜労働をした時間に基づいて計算された割増賃金を超える特別手当を支給している場合など)には、深夜の割増賃金を別に支払う必要はありません(同旨 前掲通達)
また、年次有給休暇(39条)についても適用除外とはなりません(昭和22年11月26日基発389号)
労働者派遣について
派遣先の使用者は、労基法41条3号の許可を受けた場合には、許可に係る業務に派遣中の労働者を従事させても、労働時間等の規定に基づく義務を負いません(昭和61年6月6日基発333号)
管理監督者
先述のとおり、「事業の種類にかかわらず監督もしくは管理の地位にある者」に該当すると、労基法41条が適用されます(労基法41条2号)
労基法41条が適用されると、4章、6章、6章の2における「労働時間、休憩、休日に関する規定」の適用が除外されます。
つまり、休憩(34条)、休日(35条)だけでなく、法定労働時間(32条、特例の場合40条)の適用が除外されます。
また、時間外および休日労働(33条、36条)、時間外および休日労働に対する割増賃金(37条のうち深夜の割増賃金を除く部分)の適用も除外されます。
ただし、管理監督者に該当するか否か(管理監督者性)については、実際の職務内容や責任と権限、現実の勤務態様だけでなく、その地位にふさわしい「賃金等の待遇」も判断要素となっています。
通達によると、「監督もしくは管理の地位にある者」とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいいます(昭和63年3月14日基発150号)
ちなみに、一般的な例として「部長、工場長など」をあげています。
ただし、「名称にとらわれず、実態に即して判別すべきである」として、次のような解釈を示しています(前掲通達)
① 原則
労基法に規定する労働時間、休憩、休日等の労働条件は、最低基準を定めたものであるから、この規制の枠を超えて労働させる場合には、法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則である。
企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であれば、すべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではない。
② 適用除外の趣旨
職制上の役付者のうち、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って、管理監督者として労基法41条による適用の除外が認められる趣旨である。
従って、その範囲はその限りに、限定しなければならない。
③ 実態に基づく判断
一般に、企業においては、職務の内容と権限等に応じた地位(職位)と、経験、能力等に基づく格付(資格)によって人事管理が行われている場合がある。
管理監督者の範囲を決めるに当たっては、かかる資格および職位の名称にとらわれることなく、職務の内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要がある。
④ 待遇に対する留意
管理監督者であるかの判定に当たっては、上記のほか、賃金等の待遇面についても無視し得ないものである。
この場合、定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要がある。
なお、一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといって、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではない。
⑤ スタッフ職の取扱い
法制定当時には、あまり見られなかったいわゆるスタッフ職が、本社の企画、調査等の部門に多く配置されており、これらスタッフの企業内における処遇の程度によっては、管理監督者と同様に取扱い、法の規制外においても、これらの者の地位からして特に労働者の保護に欠けるおそれがないと考えられ、かつ、法が監督者のほかに、管理者も含めていることに着目して、一定の範囲の者については、管理監督者に含めて取扱うことが妥当であると考えられる。
(管理監督者については、当初は「ライン職」を想定していましたが、一定の範囲にある「スタッフ職」も含めることにします というニュアンスです)
また、上記と別の通達では、上記の基準(基本的な判断基準)を次のように整理しています(趣旨は同じです)
「職務内容、責任と権限」、「勤務態様」および「賃金等の待遇」の実態を踏まえ、労務管理について経営者と一体的な立場にあるか否かを慎重に判断すべきものである(平成20年10月3日基監発1003001号)
管理監督者に該当するか否かは、役職の名称ではなく実態で判断されます。
具体的な判断基準としては、「都市銀行等」におけるもの(昭和52年2月28日基発104号の2)、「都市銀行以外の金融機関」におけるもの(昭和52年2月28日基発105号)などが通達で示されています。
いわゆるチェーン店の店長が「管理監督者」に該当するか否かの判断基準については、下のタブに格納しておきます。
(5,000文字程度あるため試験勉強としては参考まで)
多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について(平成20年9月9日基発0909001号)
なお、下記に整理した内容は、いずれも管理監督者性を否定する要素に係るものであるが、これらの否定要素が認められない場合であっても、直ちに管理監督者性が肯定されることになるものではないことに留意されたい。
①「職務内容、責任と権限」についての判断要素
店舗に所属する労働者に係る採用、解雇、人事考課及び労働時間の管理は、店舗における労務管理に関する重要な職務であることから、これらの「職務内容、責任と権限」については、次のように判断されるものであること。
(1) 採用
店舗に所属するアルバイト・パート等の採用(人選のみを行う場合も含む。)に関する責任と権限が実質的にない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
(2) 解雇
店舗に所属するアルバイト・パート等の解雇に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
(3) 人事考課
人事考課(昇給、昇格、賞与等を決定するため労働者の業務遂行能力、業務成績等を評価することをいう。以下同じ。)の制度がある企業において、その対象となっている部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
(4) 労働時間の管理
店舗における勤務割表の作成又は所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的にない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
②「勤務態様」についての判断要素
管理監督者は「現実の勤務態様も、労働時間の規制になじまないような立場にある者」であることから、「勤務態様」については、遅刻、早退等に関する取扱い、労働時間に関する裁量及び部下の勤務態様との相違により、次のように判断されるものであること。
(1) 遅刻、早退等に関する取扱い
遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
ただし、管理監督者であっても過重労働による健康障害防止や深夜業に対する割増賃金の支払の観点から労働時間の把握や管理が行われることから、これらの観点から労働時間の把握や管理を受けている場合については管理監督者性を否定する要素とはならない。
(2) 労働時間に関する裁量
営業時間中は店舗に常駐しなければならない、あるいはアルバイト・パート等の人員が不足する場合にそれらの者の業務に自ら従事しなければならないなどにより長時間労働を余儀なくされている場合のように、実際には労働時間に関する裁量がほとんどないと認められる場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。
(3)部下の勤務態様との相違
管理監督者としての職務も行うが、会社から配布されたマニュアルに従った業務に従事しているなど労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占めている場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。
③「賃金等の待遇」についての判断要素
管理監督者の判断に当たっては「一般労働者に比し優遇措置が講じられている」などの賃金等の待遇面に留意すべきものであるが、「賃金等の待遇」については、基本給、役職手当等の優遇措置、支払われた賃金の総額及び時間単価により、次のように判断されるものであること。
(1) 基本給、役職手当等の優遇措置
基本給、役職手当等の優遇措置が、実際の労働時間数を勘案した場合に、割増賃金の規定が適用除外となることを考慮すると十分でなく、当該労働者の保護に欠けるおそれがあると認められるときは、管理監督者性を否定する補強要素となる。
(2)支払われた賃金の総額
一年間に支払われた賃金の総額が、勤続年数、業績、専門職種等の特別の事情がないにもかかわらず、他店舗を含めた当該企業の一般労働者の賃金総額と同程度以下である場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。
(3) 時間単価
実態として長時間労働を余儀なくされた結果、時間単価に換算した賃金額において、店舗に所属するアルバイト・パート等の賃金額に満たない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
特に、当該時間単価に換算した賃金額が最低賃金額に満たない場合は、管理監督者性を否定する極めて重要な要素となる。
多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化を図るための周知等に当たって留意すべき事項について(平成20年10月3日基監発1003001号)
平成20年9月9日基発0909001号(以下、通達)については、一部に、管理監督者の範囲について誤解を生じさせかねないとの意見があることを踏まえ、管理監督者の範囲の適正化を図るための周知及び監督指導等に当たっては、以下の点について十分留意の上懇切丁寧な説明を行い、通達の趣旨・内容が正確に理解されるよう配意されたい。
(1)通達は、店舗の店長等について、十分な権限、相応の待遇等が与えられていないにもかかわらず管理監督者として取り扱われるなど不適切な事案もみられることから、その範囲の適正化を図ることを目的として発出したものであること。
(2)通達は、昭和22年9月13日付け発基第17号・昭和63年3月14日付け基発第150号(以下「基本通達」という。)で示された管理監督者についての基本的な判断基準の枠内で、店舗における特徴的な管理監督者の判断要素を整理したものであるので、基本的な判断基準を変更したり、緩めたりしたものではないこと。
(3)通達で示した判断要素は、監督指導において把握した管理監督者の範囲を逸脱した事例を基に管理監督者性を否定する要素を整理したものであり、これらに一つでも該当する場合には、管理監督者に該当しない可能性が大きいと考えられるものであること。
(4)通達においては、これらに該当すれば管理監督者性が否定される要素を具体的に示したものであり、これらに該当しない場合には管理監督者性が認められるという反対解釈が許されるものではないこと。
これらに該当しない場合には、基本通達において示された「職務内容、責任と権限」、「勤務態様」及び「賃金等の待遇」の実態を踏まえ、労務管理について経営者と一体的な立場にあるか否かを慎重に判断すべきものであること。
なお、別添のとおり「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」に関するQ&A」を取りまとめたので、説明等に当たって参考とされたい。
「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」に関するQ&A
問1 今回の通達を発出した理由は何ですか。
答 今回の通達は、「名ばかり管理職」として、多店舗展開企業における小規模な店舗の店長等について、十分な権限、相応の待遇が与えられていないにもかかわらず、労働基準法上の管理監督者であるとして、長時間労働を行わせるなど不適切な事案がみられることから、こうした事態に対処し、管理監督者の範囲の適正化を図る目的で出したものです。
問2 今回の通達で示された判断要素は、管理監督者に係る「基本的な判断基準(昭和22年発基17号・昭和63年基発150号。以下同じ。)」を緩めているのではないですか。
答 今回の通達では、「基本的な判断基準」において示された職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇に関する基準の枠内において、また、いわゆるチェーン展開する店舗等における店長等の実態を踏まえ、最近の裁判例も参考にして、特徴的に認められる管理監督者性を否定する要素を整理したものです。
したがって、「基本的な判断基準」を変更したり、緩めたりしたものではなく、逸脱事例を具体的に示すことで、「基本的な判断基準」が適正に運用されるようにするものです。
問3 今回の通達で示された否定要素に当てはまらない場合は、管理監督者であると判断されるのですか。
答 今回の通達で示された否定要素は、監督指導において把握した管理監督者の範囲を逸脱した事例を基に整理したものであり、すべて管理監督者性を否定する要素です。したがって、これに一つでも該当する場合には、管理監督者に該当しない可能性が大きいと考えられます。
一方、こうした否定要素の性格からは、「これに該当しない場合は管理監督者性が肯定される」という反対解釈が許されるものではありません。仮に、今回の通達で示された否定要素に当てはまらない場合であっても、実態に照らし、「基本的な判断基準」に従って総合的に管理監督者性を判断し、その結果、管理監督者性が否定されることが当然あり得るものです。
問4 「重要な要素」と「補強要素」を区分けして示した理由は何ですか。
答 今回の通達で示した要素は、いずれも重視すべき要素ですが、その中でも「重要な要素」は、監督指導において把握した実態を踏まえ、これらの事項すら満たされていないのであれば、管理監督者性が否定される可能性が特に大きいと考えられる逸脱事例を強調して示したものです。
問5 今回の通達で「職務内容、責任と権限」について挙げられている要素だけでは、労務管理について経営者と一体的な立場にある重要な職務と権限を有するとは言い難いのではないですか。
答 「基本的な判断基準」において、管理監督者は「労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意」であるとされ、その範囲として、「労働時間等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し」ていることとされています。
今回の通達は、「基本的な判断基準」を前提として、その枠内で、監督指導において把握した実態を踏まえ、裁判例も参考にして、管理監督者性を否定する特徴的な判断要素を示したものであって、これに該当すれば、労務管理について経営者と一体的な立場にある重要な職務と権限を有するものとして管理監督者性が肯定される、という要素を示したものではありません。
問6 店長であればパートタイマー等の採用権限があるのは当たり前であって、判断要素にならないのではないですか。
答 監督指導において把握した実態においては、店長であってもパートタイマー等の採用権限がないケースが認められたところです。 また、今回の通達の対象は、店舗の店長だけではなく、その部下であって管理監督者として取り扱われている者も対象としていますが、このような者については、パートタイマー等の採用権限がない者が多い実態にあるので、判断要素として有効に機能するものと考えています。
なお、店舗における管理監督者の判断に当たっては、裁判例においてもパートタイマー等の採用権限の有無について判断しています。
問7 今回の判断要素の中で、「時間単価に換算した賃金額が最低賃金額に満たない場合」などのあまりに低い水準を示したにすぎない判断要素は、これによって管理監督者性が否定されるものはまれであるばかりか、結果として管理監督者の範囲を広げることになるではないですか。
答 今回の判断要素は、監督指導で把握した管理監督者の逸脱事例を踏まえ示したものであり、ご質問のような「基本的な判断基準」からの逸脱が特に著しく、問題であると考えられる実態も認められたため、否定要素として挙げたものです。
もちろん、実際の労働時間数に応じて時間単価に換算した賃金額が最低賃金額を上回ったとしても、管理監督者性が肯定されることにはならないのは当然のことです。(問3参照)
むしろ、「基本的な判断基準」において、管理監督者は賃金等についてその地位にふさわしい待遇がなされていること、とされており、最低賃金額に近い賃金水準である場合などには、当然これを満たさないこととなります。
問8 「賃金等の待遇」についての「アルバイト・パートの賃金額」「時間単価換算した場合の最低賃金額」などの要素は当然のことを言っているに過ぎず、むしろ補強要素として示されている「基本給、役職手当等の優遇措置」や「支払われた賃金の総額」の要素こそ重視されるべきではないですか。
答 今回の通達で示した要素は、いずれも管理監督者性の判断に当たって重視すべき要素であり、補強要素としているものについても、重視されるべきことに変わりはありません。(問4参照)
時間単価に換算した賃金額を比較した判断要素は、仮に賃金について何らかの優遇措置が講じられているとしても、実態として長時間労働を余儀なくされている場合には、実際の労働時間数で賃金額を割り戻すと、優遇どころか、実質的にはアルバイト・パート等の賃金額や、さらには最低賃金額にも満たないようなケースもあり、このような場合には、管理監督者性が否定されて当然と考えられることから、重要な否定要素として、特に示したものです。
管理監督者については、以上です。
以降は、断続的労働に従事する者について解説します。
断続的な宿直または日直勤務(労基則23条)
先述のとおり、労基法41条の「断続的労働に従事する者」とは「常態として断続的労働に従事する者」とされています(昭和63年3月14日基発150号)
ただ、ややこしいことに、次のような行政解釈が示されています。
労基法41条の「監視または断続的労働に従事する」とは必ずしもそれを本来の業務とするものに限らず、宿日直勤務の如く本来の業務外において付随的に従事する場合を含む趣旨と解する(昭和35年8月25日基収6438号)
使用者は、宿直又は日直の勤務で断続的な業務について、様式第十号によって、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、法第三十二条の規定にかかわらず、使用することができる。
結論としては、許可申請が次のように分れています。
- 断続的な宿直又は日直勤務許可申請(労基則23条)
⇒ 様式第10号 - 監視・断続的労働に従事する者に対する適用除外許可申請(労基則34条)
⇒ 様式第14号
なお、どちらの申請によっても、許可を受けたならば、「第4章、第6章および第6章の2で定める労働時間、休憩、休日に関する規定」が適用除外となります。
「えっ!?……労基則23条に法32条と書いてあるよね」かもしれませんが、結論としては上記の取扱いとなっています。
労基則23条と34条の関係について、通達では次のように示しています (昭和35年8月25日基収6438号)
- 労基則23条は「宿、日直勤務」について規定したもの
- 労基則34条は「宿、日直勤務」以外の監視または断続的労働について規定したもの
また、次のような解釈も示されています(昭和34年3月9日 33基収6763号)
- 本来の業務とは別に宿日直勤務をする者については労基則23条が適用される
- 本来の業務が宿日直勤務の者については労基則34条が適用される
なお、労基則23条には「…法第三十二条の規定にかかわらず…」とありますが、行政解釈によると次のように示されています(昭和63年3月14日基発150号)
- 労基則23条に基づく「断続的な宿直又は日直勤務」のもとに、労基法上の「労働時間、休憩及び休日に関する規定」を適用しない
- 労基則23条の許可は、労働者保護の観点から、厳格な判断のもとに行われるべきである
行政解釈によると、労基則23条は労基法41条を根拠条文とする同条3号に係る解釈規定であって、憲法に違反する命令とは解されない と示されています(昭和35年8月25日基収6438号)
また、労基法41条の解釈規定と解される以上、労基則23条にある「…法第三十二条の規定…」は例示に過ぎず、適用除外の範囲は、根拠規定である労基法41条と同じく「第4章、第6章および第6章の2で定める労働時間、休憩、休日に関する規定」全体におよぶと解しています(昭和34年3月9日 33基収6763号)
「納得できない!」という方は……専門書などで勉強してみてください。
以降は、話題を実務的な取扱いに戻します。
労基則23条、34条の許可の可否については、実際問題としては労基署によって判断されます。
ただし、許可の基準は通達で示されているので、「一般の宿日直」と「医師、看護師等の宿日直」に分けて取り上げていきます。
労基則23条の許可については、大きく分けると4つの基準が設けられています。
- 勤務の態様
- 宿日直手当
- 宿日直の回数
- 宿直における睡眠設備の設置
具体的な内容(一般的許可基準)は次のとおりです(昭和63年3月14日基発150号)
① 勤務の態様
(1)常態として、ほとんど労働する必要のない勤務のみを認めるものであり、定時的巡視、緊急の文書または電話の収受、非常事態に備えての待機等を目的とするものに限って許可する。
(2)原則として、「通常の労働」の継続は許可しない。したがって、始業または終業時刻に密着した時間帯に、顧客からの電話の収受や盗難・火災防止を行うものについては許可しない。
② 宿日直手当
宿直または日直の勤務に対して相当の手当が支給されることを要し、具体的には、次の基準による。
(1)宿直勤務1回についての宿直手当(深夜の割増賃金を含む)または日直勤務1回についての日直手当の最低額は、当該事業場において宿直または日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金(労基法37条の割増賃金の基礎となる賃金に限る)の1人1日平均額の3分の1を下らないものであること。
ただし、同一企業に属する数個の事業場について、一律の基準により宿直または日直の手当額を定める必要がある場合には。当該事業場の属する企業の全事業場において宿直または日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者についての1人1日平均額によることができる
(2)宿直または日直勤務の時間が、通常の宿直または日直の時間に比して著しく短いものその他所轄労働基準監督署長が上記②の(1)の基準によることが著しく困難または不適当と認めたものについては、上記②の(1)の基準にかかわらず許可することができる。
③ 宿日直の回数
許可の対象となる宿直または日直の勤務回数については、宿直勤務については週1回、日直勤務については月1回を限度とすること。
ただし、当該事業場に勤務する18歳以上の者で法律上宿直または日直を行いうるすべてのものに宿直または日直をさせてもなお不足であり、かつ、勤務の労働密度が薄い場合には、宿直または日直業務の実態に応じて週1回を超える宿直、月1回を超える日直についても許可して差し支えない。
④ その他
宿直勤務については、相当の睡眠設備の設置を条件とする。
まず、医療法16条に基づく宿直を医師に行わせること自体に、労働基準監督署長の許可は必要ありません。
宿日直勤務について、「労働時間等に関する規定の適用を除外する場合」には、労働基準監督署長の許可が必要になります。
通達によると、医師、看護師等(以下、医師等)の宿日直勤務についても、「通常の労働」の継続となる場合は、労基則23条の許可をすべきではない と示されています(令和元年7月1日基発0701第8号)
また、医師等の宿日直の特性に鑑み、許可基準の細目が定められています(前掲通達)
基準を大まかに整理すると、許可されるためには次の全てを満たすことが必要です。
- 通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものである
- 宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限る
- 一般の宿日直の許可の際の条件(一般的許可基準)を満たしている
- 宿直の場合は夜間に十分な睡眠がとり得るものである
具体的な内容は、下のタブに格納しておきます。
医師、看護師等の宿日直許可基準について(令和元年7月1日基発0701第8号)
① 医師等の宿日直勤務については、次に掲げる条件の全てを満たし、かつ、宿直の場合は夜間に十分な睡眠がとり得るものである場合には、労基則23条の許可(以下「宿日直の許可」)を与えるよう取り扱うこと。
(1)通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。
すなわち、通常の勤務時間終了後もなお、通常の勤務態様が継続している間は、通常の勤務時間の拘束から解放されたとはいえないことから、その間の勤務については、宿日直の許可の対象とはならないものであること。
(2)宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限ること。
例えば、次に掲げる業務等をいい、下記②に掲げるような通常の勤務時間と同態様の業務は含まれないこと。
- 医師が、少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む。以下同じ。)や、看護師等に対する指示、確認を行うこと
- 医師が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等や、看護師等に対する指示、確認を行うこと
- 看護職員が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等を行うことや、医師に対する報告を行うこと
- 看護職員が、病室の定時巡回、患者の状態の変動の医師への報告、少数の要注意患者の定時検脈、検温を行うこと
(3)上記(1)(2)以外に、一般の宿日直の許可の際の条件を満たしていること。
② 上記①によって宿日直の許可が与えられた場合において、宿日直中に、通常の勤務時間と同態様の業務に従事すること(医師が突発的な事故による応急患者の診療又は入院、患者の死亡、出産等に対応すること、又は看護師等が医師にあらかじめ指示された処置を行うこと等)が稀にあったときについては、
一般的にみて、常態としてほとんど労働することがない勤務であり、かつ宿直の場合は、夜間に十分な睡眠がとり得るものである限り、宿日直の許可を取り消す必要はないこと。
また、当該通常の勤務時間と同態様の業務に従事する時間について労基法33条又は36条1項による時間外労働の手続がとられ、法37条の割増賃金が支払われるよう取り扱うこと。
したがって、宿日直に対応する医師等の数について、宿日直の際に担当する患者数との関係又は当該病院等に夜間・休日に来院する急病患者の発生率との関係等からみて、上記のように通常の勤務時間と同態様の業務に従事することが常態であると判断されるものについては、宿日直の許可を与えることはできないものであること。
③ 宿日直の許可は、一つの病院、診療所等において、所属診療科、職種、時間帯、業務の種類等を限って与えることができるものであること。
例えば、医師以外のみ、医師について深夜の時間帯のみといった許可のほか、上記①(2)の例示に関して、外来患者の対応業務については許可基準に該当しないが、病棟宿日直業務については許可基準に該当するような場合については、病棟宿日直業務のみに限定して許可を与えることも可能であること。
④ 小規模の病院、診療所等においては、医師等が、そこに住み込んでいる場合があるが、この場合にはこれを宿日直として取り扱う必要はないこと。
ただし、この場合であっても、上記②に掲げるような通常の勤務時間と同態様の業務に従事するときには、法33条又は36条1項による時間外労働の手続が必要であり、法37条の割増賃金を支払わなければならないことはいうまでもないこと。
医師等の宿日直許可基準及び医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方についての運用に当たっての留意事項について(令和元年7月1日基監発0701第1号)より
2(イ)医師の研鑽と宿日直許可基準について
医師の研鑽に係る労働時間通達(令和元年7月1日基発0701第9号)の記の2により、労働時間に該当しないと判断される研鑽については、当該研鑽が宿日直中に常態的に行われているものであったとしても、宿日直許可における不許可事由とはならず、又は許可を取り消す事由とはならないものである。
ここまで、次の規定を解説しました。
- 労働時間等に関する規定の適用除外(41条)
- 断続的な宿直または日直勤務(労基則23条)
管理監督者の判断基準、監視または断続的労働に従事する者の許可基準については、暗記するには厳しい情報量です。
そのため、社労士試験の勉強においては、労基法41条の対象となる労働者の範囲を覚えることから始めてみてください。
ちなみに、当記事では取り上げきれていない基準(警備業務に係る監視又は断続的労働についての基準、社会福祉施設における宿直勤務についての基準など)もあります。
労基法41条は「お腹いっぱい」でしょうから、必要なときに通達などで知識を補ってください。
最後に、この記事を簡単に整理して終わります。
労基法41条|
第4章、第6章および第6章の2で定める労働時間、休憩および休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
1 農業(林業を除く)、畜産業、養蚕業、水産業に従事する者
2 事業の種類にかかわらず管理監督者または機密の事務を取り扱う者
3 監視または断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
管理監督者|
「職務内容、責任と権限」、「勤務態様」および「賃金等の待遇」の実態を踏まえ、労務管理について経営者と一体的な立場にあるか否かを慎重に判断すべきものである。
労基則34条|
法41条3号の規定による許可は、従事する労働の態様及び員数について、様式第14号によって、所轄労働基準監督署長より、これを受けなければならない。
労基則23条|
使用者は、宿直または日直の勤務で断続的な業務について、様式第10号によつて、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、法32条の規定にかかわらず、使用することができる。
適用除外の範囲|
4章、6章、6章の2における「労働時間、休憩、休日に関する規定」に限り、適用が除外される(労基則23条による場合も同様)
なお、深夜の割増賃金、年次有給休暇については、適用除外とはならない。
(参考資料等)
厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html
- 労働基準法41条
- 労働基準法施行規則23条、34条
- 昭和22年9月13日発基17号(労働基準法の施行に関する件)
- 令和元年7月1日基発0701第8号(医師、看護師等の宿日直許可基準について)
- 令和6年1月15日基監発0115第2号(「医師等の宿日直許可基準及び医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方についての運用に当たっての留意事項について」の一部改正について)
厚生労働省ホームページより|
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html
- 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
厚生労働省ホームページ|管理監督者の範囲の適正化より|
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/kanri.html
- 多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について(平成20年9月9日基発0909001号)
- 多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化を図るための周知等に当たって留意すべき事項について(平成20年10月3日基監発1003001号)
- 多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について(平成20年9月9日基発0909001号)」に関するQ&A
厚生労働省|東京労働局ホームページ|パンフレットより|
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/newpage_00379.html
- しっかりマスター 管理監督者編
解釈例規(昭和63年3月14日基発150号)