社労士試験の独学|労一|労働契約法④|期間の定めのある労働契約

まえがき

労働契約法の4章(期間の定めのある労働契約)から、次の規定を解説しています。

  • 契約期間中の解雇等(17条)
  • 有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換(18条)
  • 有期労働契約の更新等(19条)

有期労働契約についての基準(更新の基準、雇止めに関する基準)は、こちらの記事で解説しています。

社会保険労務士試験の独学、労務管理担当者の勉強などに役立てれば嬉しいです。

当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しております。ただし、厳密な表現と異なる部分もございます。

詳しくは免責事項をご確認ください。

契約期間中の解雇等

解雇権濫用法理とやむを得ない事由との比較

労契法17条では、有期労働契約について、契約期間中の解雇(1項)、契約期間についての配慮(2項)を定めています。

労働契約法17条(契約期間中の解雇等)

1 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

2 使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。

契約期間(1年間や年度末までなど)を定めて締結した労働契約は、有期労働契約です。

契約期間を定めていなければ、パートナー社員や正社員などの呼び名に関わらず無期労働契約です。

やむを得ない事由

通達によると、おおむね次のように示されています(平成24年8月10日基発0810第2号)

  • 「やむを得ない事由」があるか否かは、実際に行われた解雇について個別具体的な事案に応じて判断される
  • 労使間で「契約期間中であっても一定の事由により解雇することができる」という趣旨で合意していても、「一定の事由に該当する」ことをもって「やむを得ない事由がある」と認められるものではない
  • 「やむを得ない事由」があると認められる場合は、解雇権濫用法理における「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」以外の場合よりも狭いと解される

簡単にいうと、「就業規則などで定める解雇事由=やむを得ない事由」とは言えません。

解雇が有効か否かは、有期労働契約のほうが無期労働契約よりも厳しく判断されます。

解雇の根拠と主張立証責任

通達によると、おおむね次のように示されています(平成24年8月10日基発0810第2号)

  • 労契法17条1項は、「解雇することができない」旨を規定したものであることから、使用者が有期労働契約の契約期間中に労働者を解雇しようとする場合の根拠規定にはならない
  • 使用者が解雇をしようとする場合には、従来どおり、民法628条が根拠規定となる
  • 「やむを得ない事由」があるという評価を基礎付ける事実についての主張立証責任は、使用者側が負う
参考|民法628条

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。


期間の定めのない労働契約への転換

労契法18条は、無期転換ルール(*1)を定めています。

(*1)有期労働契約が5年を超えて反復更新された労働者について、その労働者の申込みによって、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換させる仕組み

有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図るのが目的です。

有期労働契約の無期転換(18条1項)

有期労働契約の無期転換
出所|厚生労働省ホームページ 無期転換申込権の発生・行使の要件等についてhttps://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21917.html

まずは第1項を解説します。

加工前の条文はタブを切り替えると確認できます。

労働契約法18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)

第1項(無期転換)|

通算契約期間(*2)が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。

この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く)と同一の労働条件(*3)とする。

(*2)同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約の契約期間(契約期間の始期の到来前のものを除く)を通算した期間

(*3)当該労働条件(契約期間を除く)について別段の定めがある部分を除く

労働契約法

第十八条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)

同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。


一般的には、有期労働契約を締結している労働者(有期契約労働者)が、労契法18条に基づいて無期転換を申込むことができる権利を「無期転換申込権」といいます。

  •  同一の使用者との間で2以上の有期労働契約を締結している(最低でも1回は更新した)
  •  有期労働契約の期間を通算すると5年を超えた
  •  労働者が契約期間の満了日までに申込をした

上記①②両方を満たすと「無期転換申込権」が発生します。

その後③「無期転換の申込」をすると、期間の定めのない労働契約が締結されます(使用者の同意は不要です)

したがって、「一定の事業の完了に必要な期間」を定めた有期労働契約(労基法14条1項)の場合は、たとえ5年を超える期間で契約が締結されていても、更新が1回でもなければ無期転換はできません(同旨 平成24年8月10日基発0810第2号)

ちなみに、「無期転換申込権が生じている有期労働契約」の契約期間が満了する日までの間に無期転換申込権を行使しなかった場合であっても、再度有期労働契約が更新された場合は、新たに無期転換申込権が発生します(前掲通達)

同一の使用者

「同一の使用者」は、事業場単位ではなく、労働契約締結の法律上の主体が法人であれば法人単位で、個人事業主であれば個人事業主単位で判断されます(前掲通達)

派遣労働者の場合は、派遣元事業主との有期労働契約について通算契約期間が計算されます(前掲通達)

無期転換後の労働条件

無期転換は「期間の定め」のみを変更するものですが、「別段の定め」をすることにより、「期間の定め」以外の労働条件を変更することは可能です。

「無期転換後の労働条件」を明示(労基則5条5項)する場合は、就業の実態に応じて均衡を考慮した事項(労契法3条2項)について、労働者に説明するよう努めなければなりません(雇止めに関する基準5条)


通算契約期間のクーリング(18条2項)

無期転換ルールにおけるクーリング

つづいて第2項を解説します。

加工前の条文および省令はタブを切り替えると確認できます。

労働契約法18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)

第2項(クーリング)|

空白期間(*4)があり、当該空白期間が6月以上(*5)であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない。

(*4)当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く)

(*5)当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(*6)が1年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に2分の1を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間

(*6)当該一の有期労働契約を含む2以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。

労働契約法第十八条第一項の通算契約期間に関する基準を定める省令|

労契法18条2項の「厚生労働省令で定める基準」および「厚生労働省令で定める期間」を定めている省令

労働契約法

第十八条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)

2 当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間が六月(当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が一年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に二分の一を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない。

労働契約法第十八条第一項の通算契約期間に関する基準を定める省令

第一条(法第十八条第二項の厚生労働省令で定める基準)

労働契約法(以下「法」という。)第十八条第二項の厚生労働省令で定める基準は、次の各号に掲げる無契約期間(一の有期労働契約の契約期間が満了した日とその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間がある場合の当該期間をいう。以下この条において同じ。)に応じ、それぞれ当該各号に定めるものであることとする。

一 最初の雇入れの日後最初に到来する無契約期間(以下この項において「第一無契約期間」という。)

第一無契約期間の期間が、第一無契約期間の前にある有期労働契約の契約期間(二以上の有期労働契約がある場合は、その全ての契約期間を通算した期間)に二分の一を乗じて得た期間(六月を超えるときは六月とし、一月に満たない端数を生じたときはこれを一月として計算した期間とする。)未満であること。

二 第一無契約期間の次に到来する無契約期間(以下この項において「第二無契約期間」という。)

次に掲げる場合に応じ、それぞれ次に定めるものであること。

イ 第一無契約期間が前号に定めるものである場合

第二無契約期間の期間が、第二無契約期間の前にある全ての有期労働契約の契約期間を通算した期間に二分の一を乗じて得た期間(六月を超えるときは六月とし、一月に満たない端数を生じたときはこれを一月として計算した期間とする。)未満であること。

ロ イに掲げる場合以外の場合

第二無契約期間の期間が、第一無契約期間と第二無契約期間の間にある有期労働契約の契約期間(二以上の有期労働契約がある場合は、その全ての契約期間を通算した期間)に二分の一を乗じて得た期間(六月を超えるときは六月とし、一月に満たない端数を生じたときはこれを一月として計算した期間とする。)未満であること。

三 第二無契約期間の次に到来する無契約期間(以下この項において「第三無契約期間」という。)

次に掲げる場合に応じ、それぞれ次に定めるものであること。

イ 第二無契約期間が前号イに定めるものである場合

第三無契約期間の期間が、第三無契約期間の前にある全ての有期労働契約の契約期間を通算した期間に二分の一を乗じて得た期間(六月を超えるときは六月とし、一月に満たない端数を生じたときはこれを一月として計算した期間とする。)未満であること。

ロ 第二無契約期間が前号ロに定めるものである場合

第三無契約期間の期間が、第一無契約期間と第三無契約期間の間にある全ての有期労働契約の契約期間を通算した期間に二分の一を乗じて得た期間(六月を超えるときは六月とし、一月に満たない端数を生じたときはこれを一月として計算した期間とする。)未満であること。

ハ イ又はロに掲げる場合以外の場合

第三無契約期間の期間が、第二無契約期間と第三無契約期間の間にある有期労働契約の契約期間(二以上の有期労働契約がある場合は、その全ての契約期間を通算した期間)に二分の一を乗じて得た期間(六月を超えるときは六月とし、一月に満たない端数を生じたときはこれを一月として計算した期間とする。)未満であること。

四 第三無契約期間後に到来する無契約期間

当該無契約期間が、前三号の例により計算して得た期間未満であること。

2 前項の規定により通算の対象となるそれぞれの有期労働契約の契約期間に一月に満たない端数がある場合は、これらの端数の合算については、三十日をもって一月とする。

第二条(法第十八条第二項の厚生労働省令で定める期間)

法第十八条第二項の厚生労働省令で定める期間は、同項の当該一の有期労働契約の契約期間に二分の一を乗じて得た期間(一月に満たない端数を生じたときは、これを一月として計算した期間とする。)とする。


第2項では、同一の使用者との間で有期労働契約を締結していない期間(無契約期間)が一定の場合、通算契約期間の計算がクーリング(*7)されることを定めています。

(*7)空白期間前に終了している有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入されません。

「空白期間」「通算契約期間」「無契約期間」「省令」……労契法の勉強における難所です。

(無契約期間であっても、連続すると認められるものは空白期間から除かれます)

結論としては、無契約期間以前の通算契約期間(簡単にいうと、同一の事業主の下で有期労働契約を締結していた期間)の長さが1年以上か未満かによって、クーリングされるか否かの条件が異なります。

無契約期間以前の通算契約期間が1年以上の場合

通算契約期間のクーリング

無契約期間が「6か月以上」であれば、無契約期間以前の契約期間は、通算契約期間に算入されません(クーリングされます)

6か月以上の無契約期間は、労契法18条でいう「空白期間」に該当します。

例えば、1年契約の有期労働契約の場合は、退職の後に6か月以上空くと「1年」あった通算契約期間がゼロになります。

また、1年契約を更新をして合計で2年勤務した後に退職し、その後6か月以上空いた場合は、直近の1年だけでなく合計で「2年」あった通算契約期間がゼロになります。

無契約期間以前の通算契約期間が1年に満たない場合

契約期間が3ヶ月の場合のクーリング

無契約期間が「通算契約期間 ×\(\frac{1}{2}\)」以上になると、無契約期間以前の契約期間は、通算契約期間に算入されません(クーリングされます)

例えば、通算契約期間が3か月の場合は、無契約期間が2か月以上(端数は1か月単位で切り上げ)になると、「3か月」がクーリングされます。2か月以上の無契約期間が労契法18条でいう「空白期間」です。

なお、有期労働契約が更新されたり、無契約期間でも空白期間から除かれる場合(上記の例では1回目の無契約期間が2か月未満の場合)は、全ての期間を合計(通算)してから\(\frac{1}{2}\)を乗じます。

具体的には、下表の通算契約期間欄の区分に応じて、同一の使用者との間で有期労働契約を締結していない期間が無契約期間欄の月数以上になると、通算契約期間はクーリングされます。

通算契約期間無契約期間
2か月以下1か月
2か月超~4か月以下2か月
4か月超~6か月以下3か月
6か月超~8か月以下4か月
8か月超~10か月以下5か月
10か月超~1年未満6か月
通算契約期間のクーリングとなる場合

ちなみに、無契約期間が1か月未満の場合には、空白期間とはならずクーリングされません。


無期転換ルールの適用を免れようとする取扱

通達から、解釈をいくつか紹介します。

クーリング期間経過後に再雇用することを約束したうえでの雇止め

「雇止め」とは、使用者が有期労働契約の更新を拒否することです。

通達によると、次のように示されています(平成24年8月10日基発0810第2号)

  • 通算契約期間又は有期労働契約の更新回数の上限を設けた上で、クーリング期間を設定し、クーリング期間経過後に再雇用することを約束して雇止めを行うことは、「有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図る」という法18条の趣旨に照らして望ましいものではない

通算契約期間や更新回数に上限を設けることは問題ありません。ただし、労基法15条に基づいて労働条件の明示が必要です(労基則5条1項)

無期転換ルールの適用を免れる意図をもった雇止め

労働者の無期転換を避けることを目的とする「雇止め」です。

通達によると、次のように示されています(前掲通達)

  • 無期転換ルールの適用を免れる意図をもって、無期転換申込権が発生する前の雇止めや契約期間中の解雇等を行うことは、「有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図る」という法第18条の趣旨に照らして望ましいものではない

無期転換申込権の放棄

無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結以前に、「無期転換申込権を行使しないこと」を更新の条件とするなど、あらかじめ無期転換申込権を放棄させる取扱いです。

通達によると、次のように示されています(前掲通達)

  • 「雇止め」によって雇用を失うことを恐れる労働者に対して、使用者が無期転換申込権の放棄を強要する状況を招きかねず、法第18条の趣旨を没却するものであり、こうした有期契約労働者の意思表示は、公序良俗に反し、無効と解される

形式的に行われる使用者の切り替え

「無期転換申込権」の発生には、「同一の使用者」との間で2以上の有期労働契約を締結していることが要件です。

そこで、労働契約の締結当事者である法人を変更して「使用者」を変えることが想定されます。

通達では、次のように示しています(前掲通達)

  • 使用者が、就業実態が変わらないにもかかわらず、無期転換申込権の発生を免れる意図をもって、派遣形態や請負形態を偽装して、労働契約の当事者を形式的に他の使用者に切り替えた場合は、法を潜脱するものとして、労契法18条1項の通算契約期間の計算上「同一の使用者」との労働契約が継続していると解される

なお、原則として、離職後1年を経過するまでは、直接雇用していた労働者を派遣労働者として受け入れることはできません(労働者派遣法40条の9)

無期転換の申込後に契約関係を終了させる場合

無期転換申込権を行使された使用者が、有期労働契約の期間中または期間満了をもって契約関係を終了させるケースです。

通達では、次のように示されています(前掲通達)

  • 有期契約労働者が無期転換申込権を行使することにより、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日の翌日から労務が提供される無期労働契約がその行使の時点で成立している。
  • 現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日をもって当該有期契約労働者との契約関係を終了させようとする使用者は、無期転換申込権の行使により成立した無期労働契約を解約(解雇する必要がある
  • 当該解雇が労契法16条に規定する「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、権利濫用に該当するものとして無効となる。
  • また、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日前に使用者が当該有期契約労働者との契約関係を終了させようとする場合は、上記に加えて、当該有期労働契約の契約期間中の解雇であり労契法17条1項の適用がある(やむを得ない事由がある場合でなければ、解雇できない)

無期転換ルールの特例

「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」により、無期転換ルールに特例が設けられています。

次の①または②に該当する労働者(特定有期雇用労働者)が対象です。

  • 専門的知識等を有する有期雇用労働者(1年あたりの賃金が1,075万円以上の者に限る)であって、特定有期業務(8)に就く者
  • 定年(60歳以上のものに限る)後に、同一の事業主または特殊関係事業主(9)に引き続き雇用される有期雇用労働者

(*8)5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている専門的知識等を必要とする業務

(*9)厚生労働省令で定める、事業主のグループ関連企業(高年齢者雇用安定法9条2項)

特例が適用されると、次の期間は無期転換申込権が発生しません

  • ①の労働者 ⇒ 特定有期業務に就く期間(上限は10年
  • ②の労働者 ⇒ 定年後に引き続き雇用されている期間

なお、特例を適用するためには、①②ともに、事業主が雇用管理に関する計画を作成し、厚生労働大臣の認定(計画の提出先は都道府県労働局長)を受けることが必要です。

参考|研究者等の特例

大学等の科学技術に関する研究者などには、無期転換ルールの特例(10年を超えると無期転換)が適用されています(科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律15条の2)

また、福島国際研究教育機構の研究者などにも、無期転換ルールの特例(10年を超えると無期転換)が適用されています(福島復興再生特別措置法108条)


有期労働契約の更新等

雇止め

最後に、労契法19条を解説します。

簡単にいうと、労契法19条では、解雇と同視し得る場合には「雇止め」を認めていません。

「雇止め」が認められない場合は、従前と同一の労働条件で「有期労働契約」を更新または締結したとみなします。

「無期転換」の解説が続いたため、視点を変えて読んでみてください。

労働契約法19条(有期労働契約の更新等)

有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

文章の表現を変えずに載せました。文字数が多く難解な規定です。

労働者が1号(雇止めが解雇と同視できる)または2号(契約更新の期待に合理的な理由がある)に該当して、契約期間中または期間満了後であっても遅滞なく申込みをした場合の定めです。

使用者が上記の申込みを拒絶することが、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」ときは、従前と同じ労働条件有期労働契約を締結(更新)したとみなします。

無期転換ではないので、社労士試験の問題を解く際は、ケアレスミスに気をつけてください。

「更新の申込み」および「締結の申込み」

労契法19条の「更新の申込み」及び「締結の申込み」は、要式行為ではなく、使用者による雇止めの意思表示に対して、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもよいと解されています(平成24年8月10日基発0810第2号)

また、雇止めの効力について紛争となった場合における「更新の申込み」又は「締結の申込み」をしたことの主張・立証については、労働者が雇止めに異議があることが、例えば、訴訟の提起、紛争調整機関への申立て、団体交渉等によって使用者に直接又は間接に伝えられたことを概括的に主張立証すればよいと解されています(前掲通達)

雇止め法理

労契法19条は、最高裁判所判決で確立している雇止めに関する判例法理(いわゆる雇止め法理)を規定したものであるとして、次のように示されています(平成24年8月10日基発0810第2号)

  • 法19条1号は、有期労働契約が期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していた場合には、解雇に関する法理を類推すべきであると判示した東芝柳町工場事件最高裁判決(最高裁昭和49年7月22日第一小法廷判決)の要件を規定したものである
  • 法19条2号は、有期労働契約の期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合には,解雇に関する法理が類推されるものと解せられると判示した日立メディコ事件最高裁判決(最高裁昭和61年12月4日第一小法廷判決)の要件を規定したものである

法19条1号又は2号の要件に該当するか否かは、これまでの裁判例と同様、当該雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待をもたせる使用者の言動の有無などを総合考慮して、個々の事案ごとに判断されます(前掲通達)

なお、法19条2号の「満了時」における合理的期待の有無は、最初の有期労働契約の締結時から雇止めされた有期労働契約の満了時までの間におけるあらゆる事情が総合的に勘案されます(前掲通達)


まとめ

ここまで、労契法の4章から次の規定を解説しました。

  • 契約期間中の解雇等(17条)
  • 有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換(18条)
  • 有期労働契約の更新等(19条)

有期労働契約を締結している企業にとっては、必要な規定です。

(明確に禁止されていることと、望ましいものとの区別が求められる規定です)

そのため、条文だけでなく通達から解釈を紹介しました。

社労士試験の勉強としては、過去問題を解きつつ少しずつ知識の幅を広げてみて下さい。


(参考資料等)

厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html

  • 労働契約法17条、18条、19条
  • 労働契約法第十八条第一項の通算契約期間に関する基準を定める省令
  • 専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法
  • 有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準

厚生労働省ホームページ|労働契約法についてより|
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21911.html

  • 関連通達(労働契約法の施行について 平成24年8月10日基発0810第2号)
  • 参考となる裁判例
  • 労働契約法のあらまし

厚生労働省ホームページ|無期転換ルールについて|パンフレット・リーフレットより|
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21917.html

  • 無期転換ルールハンドブック~無期転換ルールの円滑な運用のために~
  • 無期転換ルールのよくある質問(Q&A)
  • 大学等及び研究開発法人の研究者、教員等に対する労働契約法の特例について
  • 高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例について