この記事では、育児介護休業法の2章(育児休業)を解説しています。
解説では次のように略称を使用しています。
- 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
⇒ 育児介護休業法、育介法 - 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則
⇒ 則
また、通達「平成28年8月2日 職発0802第1号」は、当記事の投稿時における直近の改正「令和5年4月28日 雇均発0428第3号」で表記しています。
社会保険労務士試験の独学、労務管理担当者の勉強などに役立てれば嬉しいです。
(当記事は長文です。はじめて学習するかたは目次の活用をお勧めします)
当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しております。ただし、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
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育児休業
育児休業とは、労働者(日々雇用される者を除く)が、育児介護休業法2章に定めるところにより、その子を養育するためにする休業をいいます(育介法2条)
当記事は育介法の2章を解説しているため、厳密にはすべて育児休業です。
とはいえ、一般的には次のように分類されています。
- 育児休業(一般的にいわれている育児休業)
- 出生時育児休業(産後パパ育休)
- 同一の子について配偶者が育児休業をする場合の特例(パパ・ママ育休プラス)
はじめに、一般的に育児休業といわれている制度(育介法5条から9条まで)を解説します。
なお、育介法の多くの規定では、「労働者」から日々雇用される者を除いています。
特にことわりがなければ、以降の労働者は「日々雇用される者を除く」を省略しています。
育児休業の取得には、労働者から事業主への申出が必要です。
申出における必要事項(申出の方法や書類の提出など)は、厚生労働省令(則7条)で定められています。
事業主は、申出がされたときは、一定の事項(育児休業の申出を受けた旨など)を労働者に速やかに通知しなければなりません(則7条)
育児休業の申出が可能なタイミングは、おおむね次の3つに分かれます。
- 子が1歳になるまで
- 子が1歳6か月になるまで
- 子が2歳になるまで
ちなみに、①が原則です。
②③は、申し込みをしても保育所に入所できないなど、一定の要件があります。
申出が可能な回数は、厚生労働省令で定める特別の事情がない限り、①は2回、②③はそれぞれ1回です。
以降、解説の便宜上、①を「1歳までの育児休業」、②を「1歳6か月までの育児休業」、③を「2歳までの育児休業」と表記しています。
1歳までの育児休業(1項)
労働者は、養育する1歳に満たない子について、事業主に申し出ることにより、育児休業ができます。
「1歳に満たない」とは、「誕生日の前日まで」を意味します(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)
ちなみに、子が1歳に達するのは、誕生日の前日午後12時(24時ちょうど)です(年齢計算ニ関スル法律、民法143条、前掲通達ほか)
(日を単位とする計算の場合には、単位の始点から終了点までを一日と考えるべきとされています)
うるう日に生まれた子については、例えば、令和6年2月29日生まれの子は、令和7年2月28日が「1歳に達する日」となります(同旨 前掲通達)
1歳までの育児休業について、申出が可能な回数(2項)
労働者は、その養育する子が1歳に達する日(1歳到達日)までの期間内に2回の育児休業をした場合には、当該子については、1項の規定による申出ができません。
1歳までの育児休業は、子が1歳になるまで連続してもいいですし、1歳までの期間を2回に分けて申し出ても構いません。
なお、厚生労働省令で定める特別の事情(*1)がある場合には、申出は2回に限られません。
(*1)内容を下のタブに格納しておきます。後述する育介法5条3項および5条4項については、四号から八号を除いて準用されています(5条6項においても同じ)
一 育介法5条1項の申出をした労働者について産前産後休業期間が始まったことにより育児休業期間が終了した場合であって、当該産前産後休業期間又は当該産前産後休業期間中に出産した子に係る育児休業期間が終了する日までに、当該子の全てが、次のいずれかに該当するに至ったとき。
- 死亡したとき
- 養子となったことその他の事情により当該労働者と同居しないこととなったとき
二 育介法5条1項の申出をした労働者について新期間(新たな育児休業期間または出生時育児休業期間)が始まったことにより育児休業期間が終了した場合であって、当該新期間が終了する日までに、当該新期間の育児休業に係る子の全てが、次のいずれかに該当するに至ったとき。
- 死亡したとき
- 養子となったことその他の事情により当該労働者と同居しないこととなったとき
- 民法の規定による請求に係る家事審判事件が終了したとき(特別養子縁組の成立の審判が確定した場合を除く)又は養子縁組が成立しないまま児童福祉法の規定による措置が解除されたとき
三 育介法5条1項の申出をした労働者について介護休業期間が始まったことにより育児休業期間が終了した場合であって、当該介護休業期間が終了する日までに、当該介護休業期間の介護休業に係る対象家族が死亡するに至ったとき又は離婚、婚姻の取消、離縁等により当該介護休業期間の介護休業に係る対象家族と介護休業申出をした労働者との親族関係が消滅するに至ったとき。
四 育介法5条1項の申出に係る子の親である配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)が死亡したとき。
五 前号に規定する配偶者が負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により育介法5条1項の申出に係る子を養育することが困難な状態になったとき。
六 婚姻の解消その他の事情により第四号に規定する配偶者が育介法5条1項申出に係る子と同居しないこととなったとき。
七 育介法5条1項の申出に係る子が負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり世話を必要とする状態になったとき。
八 育介法5条1項の申出に係る子について、保育所、認定こども園又は家庭的保育事業等(保育所等)における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、当面その実施が行われないとき。
1歳6か月までの育児休業(3項)
労働者は、その養育する1歳から1歳6か月に達するまでの子について、次の①②③のいずれにも該当する場合に限り、事業主に申し出ることにより、育児休業ができます。
- 申出に係る子について、労働者又はその配偶者が、子の1歳到達日において育児休業をしている場合
- 子の1歳到達日後の期間について休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合(*2)
- 子の1歳到達日後の期間において、3項の申出により育児休業をしたことがない場合(1歳6か月までの育児休業の取得は、1回に限るという趣旨です)
(*2)「雇用の継続のために特に必要と認められる場合」は、次のとおりです(則6条、6条の2)
- 保育所等の利用を希望し、申込みを行っているが、子が1歳に達する日後の期間について、入所できない場合
- 子の親である配偶者であって、子が1歳に達する日後の期間について常態として養育を行う予定であったものが、死亡したり、負傷等により養育することが困難になったり、離婚等により子と同居しなくなったり、産前産後の期間にある場合
- 厚生労働省令で定める特別の事情がある場合(*1を参照)
「厚生労働省令で定める特別の事情がある場合」には、上記①および③に該当しなくとも1歳6か月までの育児休業を取得できます(育介法5条3項柱書)
「1歳から1歳6か月に達するまで」とは、子の1歳の誕生日から、誕生日の属する月の6か月後の月における誕生日の応当日の前日までの期間をいいます(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)
例えば、令和6年4月1日生まれの子については、「令和7年4月1日から令和7年9月30日まで」です。
1歳6か月に達する月に誕生日の応当日が存在しない場合、例えば、令和6年3月31日生まれの子については、「令和7年3月31日から令和7年9月30日まで」となります(同旨 前掲通達)
うるう日に生まれた子については、例えば、令和6年2月29日生まれの子は、「令和7年3月1日から令和7年8月28日まで」となります(同旨 前掲通達)
2歳までの育児休業(4項)
1歳6か月までの育児休業と趣旨は同じです。
1歳6か月から2歳に達するまでの子についても、次の①②③のいずれにも該当する場合に限り、事業主に申し出ることにより、育児休業ができます。
- 子の1歳6か月に達する日(1歳6か月到達日)において育児休業をしている場合
- 子の1歳6か月到達日後の期間について休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合(*2を参照)
- 子の1歳6か月到達日後の期間において、2歳までの育児休業をしたことがない場合(申出は1回まで)
②のうち、厚生労働省令で定める特別の事情がある場合(*1を参照)には、①および③に該当しなくとも2歳までの育児休業を取得できます(4項柱書)
育児休業の開始予定日と終了予定日(6項)
育児休業申出(1項、3項及び4項の規定による申出)には、「育児休業開始予定日」および「育児休業終了予定日」が必要です(6項前段)
育児休業は、開始日と終了日を指定して、一つの期間(労働日ではない日を含めたひとまとまりの期間)として申出が必要という意味です。
次の①②の申し出については、厚生労働省令で定める特別の事情がある場合(*1を参照)を除き、①②で定めた日が「育児休業開始予定日」となります(6項後段)
- 「1歳6か月までの育児休業」の申出
⇒ 申出に係る子の1歳到達日の翌日 - 「2歳までの育児休業」の申出
⇒ 申出に係る子の1歳6か月到達日の翌日
難しく書いていますが、「厚生労働省令で定める特別の事情がなければ、①②の育児休業は子が1歳に達する日の翌日から継続して取得してください」という意味です。
ただし、上記①②には例外があります(6項1号かっこ書き、2号かっこ書き)
配偶者(解説の便宜上ママとします)がすでに1歳6か月までの育児休業を取得中で、本人(解説の便宜上パパとします)が1歳6か月までの育児休業を取得しようとする場合は、配偶者の「育児休業終了予定日」の翌日以前の日を、本人の「育児休業開始予定日」として指定できます(2歳までの育児休業についても同様です)
1歳6か月(または2歳)までの育児休業を、期間の途中で配偶者と交代して行えるよう設けられた規定です。
(厳密には、「当該申出をする労働者の配偶者が同項の規定による申出により育児休業をする場合には、当該育児休業に係る育児休業終了予定日の翌日以前の日」という表現になります)
有期雇用労働者についての育児休業申出
期間を定めて雇用される労働者(以下、有期雇用労働者)については、労働契約の期間に応じて、育児休業申出の可否が分かれます。
① 1歳までの育児休業(1項ただし書き)|
有期雇用労働者にあっては、養育する子が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新される場合は、更新後の契約。次の②③において同じ)が満了することが明らかでない者に限り、申出ができます。
「労働契約が満了することが明らかでない」の解釈については、次のように示されています(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)
- 要件を満たすか否かについては、育児休業申出のあった時点において判明している事情に基づき「労働契約の更新がないことが確実」であるか否かによって判断される
- 事業主が「更新しない」旨の明示をしていない場合については、原則として、「労働契約の更新がないことが確実」とは判断されない
ちなみに、「子が1歳6か月に達する日」とは、子の1歳の誕生日から誕生日の属する月の6か月後の月における誕生日の応当日の前日を意味します。1歳6か月に達する月に誕生日の応当日が存在しない場合は、その月の末日をいいます(前掲通達)
例えば、令和6年4月1日生まれの子が1歳6か月に達する日は、令和6年9月30日(10月1日の前日)です。また、令和6年3月31日生まれの子についても、令和6年9月30日(9月31日はないためその月の末日)となります(同旨 前掲通達)
② 1歳6か月までの育児休業(3項ただし書き)|
有期雇用労働者(子の1歳到達日において育児休業をしている者であって、その翌日を6項の育児休業開始予定日とする申出をするものを除く)にあっては、当該子が1歳6か月に達する日までに、労働契約が満了することが明らかでない者に限り、申出ができます。
かっこ書きは、①の要件を満たして育児休業をしている有期雇用労働者本人が、引き続き②の育児休業をしようとする場合には、要件(労働契約の期間)を改めて問うことはしない という趣旨です。
③ 2歳までの育児休業(5項)|
有期雇用労働者にあっては、養育する子が2歳に達する日までに、労働契約が満了することが明らかでない者に限り、申出ができます。
申出の要件を満たすか否かの判断については、1歳までの育児休業の申出と同様です(前掲通達)
労働契約の更新に伴う育児休業申出(7項)
「契約期間の末日=育児休業終了予定日」の場合に、労働契約の更新に伴い、「更新後の契約期間の初日=育児休業開始予定日」となるケースです。
有期雇用労働者であって、上記の育児休業申出をする場合には、1項ただし書、2項、3項(①、②を除く)、4項(①、②を除く)、5項、6項後段の規定は適用されません。
育児休業申出を契約更新の前後でそれぞれ1回に数えたり、労働契約の期間(要件)を契約更新の後に改めて確認したり、子の1歳到達日(または1歳6か月到達日)の翌日を育児休業開始日に限定したりはしません という意味です。
契約更新後の育児休業申出については、必要事項の一部が省略されています。また、出生の事実を確認するための書類の再提出は必要ありません(則7条)
ここまで、労働者が事業主に対して行う、育児休業の申出を解説しました。
余談ですが、ここまでの解説は育介法5条のみです。条文だけでも1,900文字を超えます。複雑すぎませんかね…
ここからは、労働者からの育児休業申出に対し、事業主が申出を拒める場合などを解説します。
申出に対する事業主の義務(1項)
事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、申出を拒むことができません。
ただし、例外があります。
申出を拒むことが可能なケース(1項ただし書き、2項、則8条)
結論としては、育児休業申出を拒むためには労使協定が必要です。
次の労働者については、労使協定を締結することを要件に、育児休業の対象者から除く(申出を拒む)ことができます。
- 引き続き雇用された期間が1年未満の労働者
- 育児休業申出があった日から起算して1年以内(*3)に雇用関係が終了することが明らかな労働者(定年により必ず退職する労働者や、あらかじめ事業主に対し退職の申出をしている労働者など)
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者(平成23年厚労告58号)
(*3)1歳6か月および2歳までの育児休業については6か月以内
労使協定を締結する労働者側の当事者は、労働者の過半数で組織する労働組合の有無で分れています。
- ある場合 ⇒ その労働組合(以下、過半数労働組合)
- ない場合 ⇒ 労働者の過半数を代表する者(以下、過半数代表者)
「労働者の過半数」における「労働者」には、日々雇用される者、育児休業の対象者から除かれた労働者も含まれます(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)
以降の「労使協定」も、過半数労働組合または(ない場合は)過半数代表者と締結したものを意味します。
事業主に育児休業申出を拒まれた労働者は、5条1項、3項及び4項の規定にかかわらず、育児休業を取得できません。
なお、事業主は、経営困難、事業繁忙その他どのような理由があっても、労使協定で除外されていない労働者からの(適法な)育児休業申出は拒むことはできません(前掲通達)
事業主による育児休業開始予定日の指定(3項)
①労働者が、育児休業申出があった日の翌日から起算して1か月(*4)を経過する日(1か月等経過日といいます)よりも前の日を「育児休業開始予定日」とした場合の取扱いです。
(*4)1歳6か月までの育児休業についての申出(子の1歳到達日以前の日に申出されたものに限る)、2歳までの育児休業についての申出(子の1歳6か月到達日以前の日に申出されたものに限る)にあっては2週間
②事業主は、①の場合、育児休業開始予定日から1か月等経過日(*5)までの間のいずれかの日を「育児休業開始予定日」として指定できます。
(*5)育児休業申出があった日までに、「出産予定日前に子が出生した」などの厚生労働省令で定める事由(則10条)が生じた場合には、育児休業申出があった日の翌日から起算して1週間を経過する日(則11条)
「…何の話をしているの?」かもしれません。
簡単にいうと、労働者に対しては、「希望する日から育児休業をスタートさせたいなら、原則として1か月(または2週間)前に申し出てください」という趣旨です。
事業主に対しては、「1か月(または2週間)を上限に体制を整えてください」ただし、「予定日よりも前に出産した」などの事情(則10条)のもとでは、「1週間を上限に体制を整えてください」という趣旨です。
育介法6条3項の「厚生労働省令で定める事由」は、下のタブに格納しておきます。
- 則10条は、育児休業開始予定日の変更の申出(育介法7条)が可能となる要件にもなっています。
- また、後述する産後パパ育休(事業主による開始予定日の指定および開始予定日の変更)において準用されています。
法第六条第三項の厚生労働省令で定める事由は、次のとおりとする。
一 出産予定日前に子が出生したこと。
二 育児休業申出に係る子の親である配偶者の死亡
三 前号に規定する配偶者が負傷又は疾病により育児休業申出に係る子を養育することが困難になったこと。
四 第二号に規定する配偶者が育児休業申出に係る子と同居しなくなったこと。
五 法第五条第一項の申出に係る子が負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、二週間以上の期間にわたり世話を必要とする状態になったとき。
六 法第五条第一項の申出に係る子について、保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、当面その実施が行われないとき。
ちなみに、「事業主による育児休業開始予定日の指定」は、一定の方法(申出の翌日から起算して3日を経過する日までに労働者に通知するなど)で行わなければなりません(則12条)
「育児休業申出があった日の翌日から起算して1か月を経過する日」とは、育児休業申出の日の属する月の翌月の応当日をいいます。当該翌月に応当日がない場合はその月の末日をいいます(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)
例えば、育児休業申出が4月1日にあった場合には、5月1日が「育児休業申出があった日の翌日から起算して1か月を経過する日」です。育児休業申出が3月31 日にあった場合には、4月30日となります。
また、「育児休業申出があった日の翌日から起算して2週間を経過する日」とは、育児休業申出の日の14日後の日をいいます(前掲通達)
例えば、育児休業申出が4月1日にあった場合には、4月15日が「育児休業申出があった日の翌日から起算して2週間を経過する日」となります。
週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。
労働契約の更新に伴う育児休業申出に係る適用除外(4項)
労働契約の更新に伴う育児休業申出(育介法5条7項)については、育介法6条1項ただし書(申出を拒むこと)、3項(事業主による育児休業開始日の指定)は適用されません。
ここからは、育児休業の開始予定日または終了予定日の変更について解説します。
開始予定日の変更(1項)
開始予定日を早める変更(繰上げ)は、1歳までの育児休業(育介法5条1項)の申出をした労働者が対象です。
一定の場合(*6)に、事業主に申し出ることにより、1回に限り変更できます。
(*6)育児休業開始予定日とされた日の前日までに、育介法6条3項の厚生労働省令で定める事由(則10条)が生じた場合(6条3項の解説を参照)
1歳までの育児休業を2回に分ける場合は、それぞれの休業につき1回の変更が可能です(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)
変更後の育児休業開始予定日の指定(2項)
労働者が、変更の申出があった日の翌日から起算して1週間を経過する日(期間経過日といいます)よりも前の日を「変更後の育児休業開始予定日」とした場合の取扱いです(則14条)
事業主は、変更後の育児休業開始予定日とされた日から期間経過日(*7)までの間のいずれかの日を「変更後の育児休業開始予定日」として指定できます。
(*7)その日が「変更前の育児休業開始予定日とされていた日」以後の日となる場合には、変更前の育児休業開始予定日とされていた日(変更の申出が遅いからといって、当初の開始予定日よりも遅い日は指定できませんという趣旨です)
趣旨は、育児休業開始予定日の指定(6条3項)と同様です。
希望通りの日に変更したい場合は、1週間前までに変更の申出が必要です。
(厳密には、「出産予定日前に子が出生した」などの予想は難しいかもしれませんが…)
終了予定日の変更(3項)
終了予定日を遅くする変更(繰下げ)は、1歳まで、1歳6か月まで、2歳までのいずれもの育児休業で、それぞれ1回まで可能です。終了予定日の変更については、理由は問われません。
1歳までの育児休業を2回に分ける場合は、それぞれの休業につき1回の変更が可能です(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)
(変更前の)育児休業終了予定日の1か月前(1歳6か月および2歳までの育児休業については2週間前)までに、事業主に申出が必要です(則16条)
事業主は、期限より後の申出に応じる義務はありませんが、申出を認める制度を設けることは可能です(前掲通達)
変更の申出の方法(氏名等の必要事項など)については、則13条(開始予定日の変更)、則17条(終了予定日の変更)で定められています。
開始予定日を遅くする変更、終了予定日を早くする変更については、育介法に規定されていませんが、事業所で制度を設けることは可能です(前掲通達)
つづいて、申出の撤回です。
育児休業申出の撤回(1項から3項まで)
育児休業申出をした労働者は、育児休業開始予定日の前日までは、理由を問わず申出を撤回できます。
- 「1歳までの育児休業」の申出を撤回した場合は、育児休業を1回取得したとみなします
- 「1歳6か月までの育児休業」または「2歳までの育児休業」の申出を撤回した場合は、厚生労働省令で定める特別の事情がある場合を除き、それぞれ再度の申出はできません
厚生労働省令で定める特別の事情(則19条)は、下のタブに格納しておきます。
法第八条第三項の厚生労働省令で定める特別の事情がある場合は、次のとおりとする。
一 育児休業申出に係る子の親である配偶者の死亡
二 前号に規定する配偶者が負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により育児休業申出に係る子を養育することが困難な状態になったこと。
三 婚姻の解消その他の事情により第一号に規定する配偶者が育児休業申出に係る子と同居しないこととなったこと。
四 法第五条第一項の申出に係る子が負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、二週間以上の期間にわたり世話を必要とする状態になったとき。
五 法第五条第一項の申出に係る子について、保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、当面その実施が行われないとき。
撤回の申出の方法(通知の手段など)は、則18条に規定されています。
育児休業申出は「されなかった」とみなす場合(4項)
育児休業申出がされた後、育児休業開始予定日の前日までに、厚生労働省令で定める事由(子の死亡など)が生じたときは、当該育児休業申出はされなかった とみなされます。
厚生労働省令で定める事由(則20条)は、下のタブに格納しておきます。
法第八条第四項の厚生労働省令で定める事由は、次のとおりとする。
一 育児休業申出に係る子の死亡
二 育児休業申出に係る子が養子である場合における離縁又は養子縁組の取消
三 育児休業申出に係る子が養子となったことその他の事情により当該育児休業申出をした労働者と当該子とが同居しないこととなったこと。
四 民法第八百十七条の二第一項の規定による請求に係る家事審判事件が終了したこと(特別養子縁組の成立の審判が確定した場合を除く。)又は養子縁組が成立しないまま児童福祉法第二十七条第一項第三号の規定による措置が解除されたこと。
五 育児休業申出をした労働者が、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、当該育児休業申出に係る子が一歳(法第五条第三項の申出に係る子にあっては一歳六か月、同条第四項の申出に係る子にあっては二歳)に達するまでの間、当該子を養育することができない状態になったこと。
六 法第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する法第五条第一項の申出により子の一歳到達日の翌日以後の日に育児休業をする場合において労働者の配偶者が育児休業をしていないこと(当該申出に係る育児休業開始予定日とされた日が当該配偶者のしている育児休業に係る育児休業期間の初日と同じ日である場合を除く。)。
労働者は、事業主に対して、上記事由が生じた旨を遅滞なく通知しなければなりません(9条において同じ)
育児休業申出をした労働者が、育児休業をすることができる期間(育児休業期間)は、育児休業開始予定日から育児休業終了予定日までの間です。
ただし、育児休業終了予定日より前でも、次の場合(その日)に育児休業期間は終了します(第三号の事情が生じた場合は、その前日に終了します)
- 一号 子を養育しないこととなった場合(*7)
- 二号 子が1歳に達した場合(1歳6か月または2歳までの育児休業は、それぞれの年齢に達した場合)
- 三号 育児休業申出をした労働者について、産前産後休業(労基法65条1項、2項)、出生時育児休業期間(産後パパ育休)、介護休業期間、新たな育児休業期間が始まった場合
(*7)厚生労働省令で定める事由(則20条)のうち第六号を除く事由(子の死亡など)が準用されています(則21条)
ちなみに、育児休業期間の終了事由に、「一時的に子の養育をする必要がなくなった場合」は含まれていません(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)
通達によると、上記の場合を当然終了事由とすることは、労働者にとって酷となるだけでなく、事業主にとっても要員管理が不安定なものとなるため、「当然に終了する事由」とはしていないと示されています(前掲通達)
出生時育児休業
ここからは、出生時育児休業(いわゆる産後パパ育休)を解説します。
制度の考え方は、ここまで解説してきた育児休業(育介法5条から9条まで)に類似しています。
出生時育児休業とは、育児休業のうち、子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日まで(*8)の期間内において、4週間以内の期間を定めてする休業をいいます(育介法9条の2第1項)
「出生の日から起算して8週間を経過する日」とは、例えば、出生の日が4月1日の場合には、5月26日です(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)
したがって、上記の場合「出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日」は5月27日となります(前掲通達)
(混乱する場合は、「出産日当日の産前休業 + 産後休業56日間」と考えてみてください)
(*8)出産予定日との関係
出産予定日と実際の出産日が異なる場合は、次の期間が制度の対象です(育介法9条の2第2項①の解説において同じ)
- 出産予定日より前に子が出生した場合は、「出生の日」から「出産予定日から起算して8週間を経過する日の翌日」まで(期間の終わりは、予定日から8週を計算します)
- 出産予定日より後に子が出生した場合は、「出産予定日」から「出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日」まで(期間の終わりは、出生日から8週を計算します)
簡単にいうと、子の出生日または出産予定日のどちらか早い日を始期に、どちらか遅い日の8週後を終期にし、その期間内で最大4週間の休業を取得できます。考え方は、以降の解説においても同じです。
(終期については、必ず出産日の翌日を基準に8週を数える産後休業とは異なる算定方法です)
以降、解説の便宜上、出生時育児休業を「産後パパ育休」と表記しています。
ちなみに、産前産後休業を取得している労働者については、その本人は産後パパ育休を取得できません(育介法9条の5)
そのため、主に男性の取得を想定した制度です(養子縁組など、女性も取得可能なケースはあります)
産後パパ育休の申出(1項)
産後パパ育休を取得するためには、事業主への申出が必要です。
ただし、有期雇用労働者については、次の場合に限り、申出ができます(1項ただし書き)
- 「子の出生の日(*9)から起算して8週間を経過する日の翌日から6月を経過する日」までに、労働契約(更新される場合は、更新後の契約)が満了することが明らかでない場合
(*9)出産予定日前に子が出生した場合は、出産予定日
例えば、令和6年4月1日に出生した子の「出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日」は、令和6年11月26日となります(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)
産後パパ育休の申出が可能な回数(2項)
次のいずれかの場合には、出生時育児休業申出(1項の規定による申出)をできません。
- 子の出生の日(出産予定日との関係は*8を参照)から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間内に2回の産後パパ育休をした場合
- 子の出生の日(出産予定日後に子が出生した場合は、出産予定日)以後に産後パパ育休をする日数が28日に達している場合
産後パパ育休は、28日(4週間)連続してもいいですし、合計で28日以内の期間になるように2回に分けても構いません。
なお、厚生労働省令で定める特別の事情(則5条の2)がある場合でも、申出の回数は延長されません。
「1歳までの育児休業」と同時に取得はできませんが、「産後パパ育休」と「1歳までの育児休業」を合わせると、子が1歳に達する日までに合計で4回に分けての休業も可能となります。
(出生日から1歳到達日まで「1歳までの育児休業」を一度に取得することも可能です)
産後パパ育休の開始予定日と終了予定日(3項)
出生時育児休業申出は、厚生労働省令(則21条の2)で定めるところにより、「出生時育児休業開始予定日」および「出生時育児休業終了予定日」を明らかにして行わなければなりません。
合計で28日に達するまで任意の日に休業を取得することはできません。
労働契約の更新に伴う出生時育児休業申出(4項)
育児休業申出(5条7項)と趣旨は同じです。
「契約期間の末日=(出生時育児休業)終了予定日」の場合に、労働契約の更新に伴い、「更新後の契約期間の初日=開始予定日」となるケースです。
出生時育児休業申出を契約更新の前後でそれぞれ1回に数えたり、労働契約の期間(要件)を契約更新の後に改めて確認したりはしません。
ただし、産後パパ育休の日数(上限28日)は契約更新の前後で通算します。
契約更新後の申出については、産後パパ育休においても、一定の事項は省略されています。書類の再提出も必要ありません(則21条の2)
ここからは、労働者からの出生時育児休業申出に対し、事業主が申出を拒める場合などを解説します。
申出に対する事業主の義務(1項)
事業主は、労働者からの出生時育児休業申出があったときは、申出を拒むことができません。
とはいえ、やはり例外があります。
申出を拒むことが可能なケース(1項ただし書き、2項)
次の①または②の場合には、事業主は「出生時育児休業申出」を拒むことができます。
- 出生時育児休業申出がされた後に、出生時育児休業申出をした日に養育していた子について新たに出生時育児休業申出がされた場合
- 労使協定により、一定の労働者を産後パパ育休から除外する場合
①は育児休業とは異なる取扱いです(1項ただし書き)
産後パパ育休を2回に分けて取得するならば、「2回分をまとめて1度に申し出てください」という趣旨です。
例えば、産後の28日間のうち、14日間の産後パパ育休を取得したものの、後から7日間追加したいというケースです。
事業主は、後半の7日間の申出については、拒むことができます(社内規定に基づいて応じても構いません)
②は期間(8週間以内)を除けば育児休業と同じ取扱いです(2項、則21条の3)
次の労働者については、労使協定を締結することを要件に、産後パパ育休の対象者から除く(申出を拒む)ことができます。
- 引き続き雇用された期間が1年未満の労働者
- 出生時育児休業申出があった日から起算して8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者(平成23年厚労告58号)
申出を拒まれた労働者は、産後パパ育休を取得できません。
なお、産後パパ育休においても、事業主は、経営困難、事業繁忙その他どのような理由があっても、労使協定で除外されていない労働者からの(適法な)申出を拒むことはできません(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)
事業主による出生時育児休業開始予定日の指定(3項、4項)
労働者が、出生時育児休業申出があった日の翌日から起算して2週間を経過する日(2週間経過日といいます)よりも前の日を「出生時育児休業開始予定日」とした場合の取扱いです。
事業主は、出生時育児休業開始予定日とされた日から2週間経過日(*10)までの間のいずれかの日を「出生時育児休業開始予定日」として指定できます(3項)
(*10)出生時育児休業申出があった日までに、「出産予定日前に子が出生した」などの厚生労働省令で定める事由(則10条)が生じた場合には、育児休業申出があった日の翌日から起算して1週間を経過する日(則21条の5)
遠回しな表現ですが、育児休業申出(育介法6条3項)と趣旨は同じです。
労働者が、その希望する日から産後パパ育休をスタートさせるためには、開始予定日の2週間前までに申出が必要です。
それよりも申出が遅れた場合には、事業主は、申出から最長で2週間(厚生労働省令で定める事由がある場合は1週間)を置いてから産後パパ育休をスタートさせることができます。
ただし、上記の「2週間前までに申し出ること」という申出期限は、最長で「1か月前までに申し出ること」に変更できます。
労使協定で次のいずれもの事項を定める場合は、協定で定めた申出期限(二号)が適用されます(4項)
- 一号 厚生労働省令で定める措置(則21条の7)の内容
- 二号 出生時育児休業申出についての申出期限(2週間を超え1か月以内の期間に限る)
一号の「厚生労働省令で定める措置」は、下のタブに格納しておきます。
法第九条の三第四項第一号の厚生労働省令で定める措置は、次のとおりとする。
一 出生時育児休業申出が円滑に行われるようにするための雇用環境整備の措置として、次に掲げる措置のうちいずれか二以上の措置を講ずること。
イ その雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施
ロ 育児休業に関する相談体制の整備
ハ その雇用する労働者の育児休業の取得に関する事例の収集及びその雇用する労働者に対する当該事例の提供
ニ その雇用する労働者に対する育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する方針の周知
ホ 育児休業申出をした労働者の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分又は人員の配置に係る必要な措置
二 育児休業の取得に関する定量的な目標を設定し、育児休業の取得の促進に関する方針を周知すること。
三 育児休業申出に係る当該労働者の意向を確認するための措置を講じた上で、その意向を把握するための取組を行うこと。
労働契約の更新に伴う出生時育児休業申出に係る適用除外(5項)
労働契約の更新に伴う出生時育児休業申出については、申出を拒むこと(1項ただし書、2項)、事業主による出生時育児休業開始日の指定(3項、4項)は適用されません。
次の規定は、出生時育児休業申出、出生時育児休業開始予定日、出生時育児休業終了予定日について準用されています。
- 7条(育児休業開始予定日の変更の申出)
- 8条1項、2項および4項(育児休業申出の撤回)
必要な読み替えは、育介法9条の4に定められています。
育児休業と重複する箇所も多いため簡単に解説します(詳しくは当記事の上記規定の解説を参照してください)
予定日の変更
開始予定日を早める変更(繰上げ)は、「出産予定日前に子が出生した」などの一定の場合(則10条)に、事業主に申し出ることにより、1回に限り行えます。
希望通りの日に変更したい場合は、(変更後の)開始日の1週間前までに申出が必要です(則21条の9)
申出が遅れた場合の開始日は、事業主の指定の対象(最長で変更の申出の翌日から起算して1週間を経過する日)となります。
終了予定日を遅くする変更(繰下げ)は、理由を問わず、(変更前の)終了予定日の2週間前までに、事業主に申し出ることにより、1回に限り行えます(則21条の11)
申出の撤回等
申出の撤回については、理由を問わず、出生時育児休業開始予定日の前日までは行えます。
申出を撤回した場合は、産後パパ育休を1回取得したとみなします(2回撤回したらその後は取得できません)
なお、産後パパ育休の開始予定日の前日までに、厚生労働省令で定める事由(*11)が生じたときは、申出は「されなかった」とみなされます。
(*11)産後パパ育休についての厚生労働省令で定める事由は、下のタブに格納しておきます。
法第九条の四において準用する法第八条第四項の厚生労働省令で定める事由は、次のとおりとする。
一 出生時育児休業申出に係る子の死亡
二 出生時育児休業申出に係る子が養子である場合における離縁又は養子縁組の取消
三 出生時育児休業申出に係る子が養子となったことその他の事情により当該出生時育児休業申出をした労働者と当該子とが同居しないこととなったこと。
四 民法第八百十七条の二第一項の規定による請求に係る家事審判事件が終了したこと(特別養子縁組の成立の審判が確定した場合を除く。)又は養子縁組が成立しないまま児童福祉法第二十七条第一項第三号の規定による措置が解除されたこと。
五 出生時育児休業申出をした労働者が、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、当該出生時育児休業申出に係る子が出生の日から起算して八週間を経過する日の翌日までの間、当該子を養育することができない状態になったこと。
労働者は、事業主に対して、上記事由が生じた旨を遅滞なく通知しなければなりません(9条の5において同じ)
出生時育児休業期間(1項、6項)
出生時育児休業申出をした労働者が、産後パパ育休を取得できる期間(出生時育児休業期間)は、(出生時育児休業)開始予定日から終了予定日までの間です。
ただし、終了予定日より前でも、次の場合(その日)に出生時育児休業期間は終了します(第四号に掲げる事情が生じた場合は、その前日に終了します)
- 一号 子を養育しないこととなった場合(*12)
- 二号 子の出生の日の翌日(出産予定日前に子が出生した場合は、出産予定日の翌日)から起算して8週間を経過した場合
- 三号 子の出生の日(出産予定日後に子が出生した場合は、出産予定日)以後に産後パパ育休の日数が28日に達した場合
- 四号 申出をした労働者について、産前産後休業(労基法65条1項、2項)、育児休業、介護休業期間または新たな産後パパ育休が始まった場合
(*12)則21条の14(子の死亡など)が準用されています(則21条の20)
出生時育児休業期間における就業(2項から5項まで)
産後パパ育休の期間中に就業させることは可能ですが、労使協定の締結および労働者の同意が必須です。
また、就業させる場合でも、就業日数、労働時間数は制限されます。
- 産後パパ育休の期間中に就業することが可能なのは、労使協定で「出生時育児休業期間中に就業させることができる」と定められた労働者に限ります(2項)
- ①の労働者は、出生時育児休業開始予定日の前日までの間、事業主に対し、就業可能日等(則21条の15)を申し出ることができます(2項)
- 労働者から②の規定による申出(変更の申出を含む)があった場合には、事業主は、申出に係る就業可能日等(変更された場合は、変更後の就業可能日等)の範囲内で日時を提示します(4項)
- ③の提示を経て、申出に係る出生時育児休業開始予定日の前日までに、一定の方法(則21条の16)で労働者の同意を得ます(4項)
- 事業主は、④の同意を得た場合に限り、厚生労働省令で定める範囲(*13)内で、労働者を就業させることができます(4項)
(*13)厚生労働省令で定める範囲(則21条の17)は次のとおりです(いずれも満たすことが必要です)
- 就業させることとした日(就業日)の合計日数が、産後パパ育休の期間における所定労働日数の2分の1以下(一日未満の端数切り捨て)
- 就業日における労働時間の合計が、産後パパ育休の期間における所定労働時間の合計の2分の1以下
- (出生時育児休業)開始予定日とされた日または終了予定日を就業日とする場合は、当該日の労働時間数は、当該日の所定労働時間数未満となること
②の申出をした労働者は、理由を問わず、申出に係る出生時育児休業開始予定日の前日までは、事業主に申し出ることにより、申出に係る就業可能日等を変更し、又は申出を撤回できます(3項)
④の同意をした労働者は、原則として理由を問わず、同意の全部または一部を撤回できます(5項)
ただし、出生時育児休業開始予定日とされた日以後は、厚生労働省令で定める特別の事情(則21条の19)がある場合に限り④の同意を撤回できます(5項ただし書き)
産後パパ育休を開始した後でも同意の撤回が可能になる特別の事情(配偶者の死亡など)は、下のタブに格納しておきます。
法第九条の五第五項の厚生労働省令で定める特別の事情がある場合は、次のとおりとする。
一 出生時育児休業申出に係る子の親である配偶者の死亡
二 前号に規定する配偶者が負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害その他これらに準ずる心身の状況により出生時育児休業申出に係る子を養育することが困難な状態になったこと。
三 婚姻の解消その他の事情により第一号に規定する配偶者が出生時育児休業申出に係る子と同居しないこととなったこと。
四 出生時育児休業申出に係る子が負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害その他これらに準ずる心身の状況により、二週間以上の期間にわたり世話を必要とする状態になったとき。
産後パパ育休の解説は以上です。
パパ・ママ育休プラス
ここからは、いわゆる「パパ・ママ育休プラス」を解説します。
パパ・ママ育休プラスの適用を前提とした育児休業申出も可能です(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)
男性の育児休業の取得促進を図る観点から設けられた制度ですが、女性も制度の対象です。
1歳2か月未満の子まで延長(1項)
両親ともに育児休業を取得する場合に、1歳までの育児休業の対象を「1歳に満たない子」から「1歳2か月に満たない子」に延長する制度です。
ただし、パパ・ママ育休プラスを適用しようとする労働者(本人)からみた配偶者が、当該子の1歳到達日以前に育児休業をしていることが要件です。
産後パパ育休をしている(した)場合も、「子の1歳到達日以前に育児休業をしている」に含まれます(育介法2条、9条の6第1項)
上のイラストは、パパ(配偶者)が子の1歳到達日以前に育児休業をしていないため、ママ(本人)はパパ・ママ育休プラスを適用できないケースです。
一方で、パパを本人、ママを配偶者としてみると、ママ(配偶者)が子の1歳到達日以前に育児休業をしているため、パパ(本人)は他の要件を満たす限りパパ・ママ育休プラスを適用できます。
なお、パパ・ママ育休プラスを適用した場合でも、(1歳までの)育児休業を取得できる期間は、パパ・ママ各々で最長1年間(*13)となります。
(*13)子の出生日以後の産前産後休業の期間、育児休業の期間、産後パパ育休の期間を含めます。
パパ・ママ育休プラスを適用できない場合(2項)
次の①または②のどちらかに該当する場合は、両親ともに育児休業をすることになっても、パパ・ママ育休プラスを適用できません(原則どおり1歳までの育児休業になります)
- パパ・ママ育休プラスを適用した場合の育児休業開始予定日が、子の1歳到達日の翌日よりも後になる
- パパ・ママ育休プラスを適用した場合の育児休業開始予定日が、労働者の配偶者がしている育児休業(産後パパ育休を含む)に係る育児休業期間の初日よりも前になる
①は、パパ・ママ育休プラスを適用しようとする労働者(本人)が、子の1歳到達日の翌日(1歳の誕生日)までに育児休業を開始しない場合は、パパ・ママ育休プラスを適用できないという趣旨です。
育児休業は子が1歳に達するまでに開始することを原則としています。
ただし、1歳到達日を境にパパ・ママ交代で休業するケース(例えば、ママが1歳到達日で終了し、パパが1歳到達日の翌日から開始するケース)が考慮されており、①には該当しません。
②は、パパ・ママ育休プラスを適用しようとする労働者(本人)の育児休業に係る「育児休業開始予定日」とされた日以前に、配偶者が育児休業をしていない(実際に休業したことがない)場合は、パパ・ママ育休プラスを適用できないという趣旨です。
なお、両親が同日に育児休業を取得する場合は(初日より前ではないため)、②には該当しません(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)
参考|パパ・ママ育休プラスを適用できる場合
条文の表現と異なりますが、「できる場合」で情報を整理しておきます。
次の全てに該当する場合にパパ・ママ育休プラスを適用できます。
- パパ・ママ育休プラスを適用しようとする労働者(本人)からみた配偶者が、当該子の1歳到達日以前に育児休業(産後パパ育休を含む)をしていること(1項)
- 本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日(1歳到達日の翌日)以前であること(2項①の否定)
- 本人の育児休業開始予定日が、配偶者がしている育児休業(産後パパ育休を含む)の初日以降であること(2項②の否定)
厚生労働省で提供しているパンフレットでは、上記のように「できる場合」を表記しています。
(できる場合で説明する際は、いずれにも該当するに読み替えてください)
ちなみに、育介法9条の6および則22条は、ここまで解説した規定をパパ・ママ育休プラスに対応させるための読み替えを定めています。
育介法9条の6(条文)だけでも2,000文字程度あるため、読み替えの概要とその解説は下のタブに格納しておきます(試験勉強としても参考まで)
労働者の養育する子について、当該労働者の配偶者が当該子の1歳到達日以前のいずれかの日において当該子を養育するために育児休業をしている場合における第二章から第五章まで、第二十四条第一項、第十二章の規定の適用については、次のようになります(育介法9条の6第1項)
5条1項
「一歳に満たない子」とあるのは「一歳に満たない子(第九条の六第一項の規定により読み替えて適用するこの項の規定により育児休業をする場合にあっては、一歳二か月に満たない子)」と、読み替えます。
労働者は、その養育する一歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業(第九条の二第一項に規定する出生時育児休業を除く。以下この条から第九条までにおいて同じ。)をすることができる。ただし、(以下省略)
育児休業申出の対象となる子を1歳2か月未満の子に延長するための読み替えです。
5条3項ただし書
「一歳到達日」とあるのは「一歳到達日(当該労働者が第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する第一項の規定によりした申出に係る第九条第一項(第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する育児休業終了予定日とされた日が当該子の一歳到達日後である場合にあっては、当該育児休業終了予定日とされた日)」と、読み替えます。
※勉強のため改行しています。
労働者は、その養育する一歳から一歳六か月に達するまでの子について、次の各号のいずれにも該当する場合(厚生労働省令で定める特別の事情がある場合には、第二号に該当する場合)に限り、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。
ただし、期間を定めて雇用される者(当該子の一歳到達日において育児休業をしている者であって、その翌日を第六項に規定する育児休業開始予定日とする申出をするものを除く。)にあっては、当該子が一歳六か月に達する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる。
1歳6か月までの育児休業についての規定です。
パパ・ママ育休プラスにおいても、契約更新に伴う育児休業の開始については、要件(労働契約の期間)を改めて問うことはしないという趣旨です。
5条3項1号
「又はその配偶者が、当該子の一歳到達日」とあるのは「が当該子の一歳到達日(当該労働者が第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する第一項の規定によりした申出に係る第九条第一項(第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する育児休業終了予定日とされた日が当該子の一歳到達日後である場合にあっては、当該育児休業終了予定日とされた日)において育児休業をしている場合又は当該労働者の配偶者が当該子の一歳到達日(当該配偶者が第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する第一項の規定によりした申出に係る第九条第一項(第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する育児休業終了予定日とされた日が当該子の一歳到達日後である場合にあっては、当該育児休業終了予定日とされた日)」と、読み替えます。
労働者は、その養育する一歳から一歳六か月に達するまでの子について、次の各号のいずれにも該当する場合(厚生労働省令で定める特別の事情がある場合には、第二号に該当する場合)に限り、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。ただし、(以下省略)
一 当該申出に係る子について、当該労働者又はその配偶者が、当該子の一歳到達日において育児休業をしている場合
二 (省略)
三 (省略)
1歳6か月までの育児休業をするための要件の一つです。
子の一歳到達日に育児休業をしていることが要件ですが、パパ・ママ育休プラスを適用している場合は、次の①または②に該当することに読み替えます。
- 労働者(本人)が、パパ・ママ育休プラスを適用した場合の終了予定日において育児休業をしていること
- 本人の配偶者が、パパ・ママ育休プラスを適用した場合の終了予定日において育児休業をしていること
5条3項3号
「一歳到達日」とあるのは「一歳到達日(当該子を養育する労働者が第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する第一項の規定によりした申出に係る第九条第一項(第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する育児休業終了予定日とされた日が当該子の一歳到達日後である場合にあっては、当該育児休業終了予定日とされた日)」と、読み替えます。
労働者は、その養育する一歳から一歳六か月に達するまでの子について、次の各号のいずれにも該当する場合(厚生労働省令で定める特別の事情がある場合には、第二号に該当する場合)に限り、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。ただし、(以下省略)
一 (省略)
二 (省略)
三 当該子の一歳到達日後の期間において、この項の規定による申出により育児休業をしたことがない場合
1歳6か月までの育児休業をするための要件の一つです。
パパ・ママ育休プラスを適用している場合も「1歳6か月までの育児休業」は1回までです。
5条6項1号
「一歳到達日」とあるのは「一歳到達日(当該子を養育する労働者又はその配偶者が第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する第一項の規定によりした申出に係る第九条第一項(第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する育児休業終了予定日とされた日が当該子の一歳到達日後である場合にあっては、当該育児休業終了予定日とされた日(当該労働者に係る育児休業終了予定日とされた日と当該配偶者に係る育児休業終了予定日とされた日が異なるときは、そのいずれかの日)。次条第三項において同じ。)」と、読み替えます。
第一項、第三項及び第四項の規定による申出(以下「育児休業申出」という。)は、(中略)、その初日(以下「育児休業開始予定日」という。)及び末日(以下「育児休業終了予定日」という。)とする日を明らかにして、しなければならない。この場合において、次の各号に掲げる申出にあっては、第三項の厚生労働省令で定める特別の事情がある場合を除き、当該各号に定める日を育児休業開始予定日としなければならない。
一 第三項の規定による申出 当該申出に係る子の一歳到達日の翌日(当該申出をする労働者の配偶者が同項の規定による申出により育児休業をする場合には、当該育児休業に係る育児休業終了予定日の翌日以前の日)
二 (省略)
一号は、1歳6か月までの育児休業に係る申出について、育児休業開始予定日とする日を定めた規定です。
パパ・ママ育休プラスを適用している場合の「1歳6か月までの育児休業」の開始(予定)日は、次の①②のいずれかの日となります。
- パパ・ママ育休プラスを適用した育児休業終了日の翌日
- ①の終了日と配偶者の育児休業の終了日が異なるときは、いずれかの終了日の翌日
②は、労働者と配偶者の育児休業終了予定日がともに1歳到達日後の場合(両親ともにパパ・ママ育休プラスを適用している場合)には、そのいずれかの育児休業終了予定日の翌日を(1歳6か月までの育児休業の)育児休業開始予定日にできる という趣旨です。
9条1項
「変更後の育児休業終了予定日とされた日。次項」とあるのは「変更後の育児休業終了予定日とされた日。次項(第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)において同じ。)(当該育児休業終了予定日とされた日が当該育児休業開始予定日とされた日から起算して育児休業等可能日数(当該育児休業に係る子の出生した日から当該子の一歳到達日までの日数をいう。)から育児休業等取得日数(当該子の出生した日以後当該労働者が労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項又は第二項の規定により休業した日数と当該子について育児休業及び次条第一項に規定する出生時育児休業をした日数を合算した日数をいう。)を差し引いた日数を経過する日より後の日であるときは、当該経過する日。次項(第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、読み替えます。
育児休業申出をした労働者がその期間中は育児休業をすることができる期間(以下「育児休業期間」という。)は、育児休業開始予定日とされた日から育児休業終了予定日とされた日(第七条第三項の規定により当該育児休業終了予定日が変更された場合にあっては、その変更後の育児休業終了予定日とされた日。次項において同じ。)までの間とする。
育児休業をする(会社を休む)ことができる期間(育児休業期間)は、(育児休業)開始予定日から終了予定日までの間です。
ただし、育児休業終了予定日が変更された場合には、その変更後の育児休業終了予定日までの間となります。
(そうでしょうね…だと思います)
ここからは新しい取り扱いです。育介法9条の6の読み替えにより、さらにカッコ書きが追加されました。
「育児休業終了予定日」とされた日が、「育児休業開始予定日」とされた日から起算して、次の①-②の日数を経過する日よりも後の日のときは、当該経過する日で育児休業は終了します(当該経過する日が育児休業終了日になります)
- 育児休業等可能日数(子の出生した日から子の一歳到達日までの日数)
- 育児休業等取得日数(子の出生した日以後、労働者が労働基準法65条1項又は2項の規定により休業した日数と当該子について育児休業及び9条の2第1項に規定する出生時育児休業をした日数を合算した日数)
なお、①の日数は、うるう日が含まれない場合は365日、含まれる場合は366日です(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)
①から②を差し引いた日数は最大で365日(または366日)なので、パパ・ママ育休プラスを取得しても、次のいずれもの期間を含めて育児休業期間は最長で1年間となります。
- 子の出生日以後の産前産後休業の期間(*14)
- 育児休業の期間
- 産後パパ育休の期間
(*14)子の出生日は産前休業に含まれます。「1日分の産前休業 + 産後休業」という趣旨です。
9条2項2号
「第五条第三項」とあるのは「第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する第五条第一項の規定による申出により育児休業をしている場合にあっては一歳二か月、同条第三項(第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、「同条第四項」とあるのは「第五条第四項」と、読み替えます。
次の各号に掲げるいずれかの事情が生じた場合には、育児休業期間は、前項の規定にかかわらず、当該事情が生じた日(第三号に掲げる事情が生じた場合にあっては、その前日)に終了する。
一 (省略)
二 育児休業終了予定日とされた日の前日までに、育児休業申出に係る子が一歳(第五条第三項の規定による申出により育児休業をしている場合にあっては一歳六か月、同条第四項の規定による申出により育児休業をしている場合にあっては二歳)に達したこと。
三 (省略)
育児休業期間の終了について定めた規定です。
パパ・ママ育休プラスを適用した「1歳までの育児休業」は、子が1歳2か月に達する日に終了します。
その後、「1歳6か月までの育児休業(パパ・ママ育休プラスを適用した場合を含む)」「2歳までの育児休業」を取得した場合は、それぞれの年齢に達する日に育児休業は終了します。
(そうでしょうね…だと思います)
参考|24条1項1号
※ 条文は、令和7年10月1日施行のものです。ただし、パパ・ママ育休プラスの読み替えに係る部分は、現行(令和6年5月31日施行)と違いはありません。
「一歳(」とあるのは「一歳(当該労働者が第九条の六第一項の規定により読み替えて適用する第五条第一項の規定による申出をすることができる場合にあっては一歳二か月、」と、読み替えます。
事業主は、その雇用する労働者のうち、その小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関して、労働者の申出に基づく育児に関する目的のために利用することができる休暇(子の看護等休暇、介護休暇、前条第一項第四号に規定する休暇及び労働基準法第三十九条の規定による年次有給休暇として与えられるものを除き、出産後の養育について出産前において準備することができる休暇を含む。)を与えるための措置及び次の各号に掲げる当該労働者の区分に応じ当該各号に定める制度又は措置に準じて、それぞれ必要な措置を講ずるように努めなければならない。
一 その一歳(当該労働者が第五条第三項の規定による申出をすることができる場合にあっては一歳六か月、当該労働者が同条第四項の規定による申出をすることができる場合にあっては二歳。次号において同じ。)に満たない子を養育する労働者(第二十三条第二項に規定する労働者を除く。同号において同じ。)で育児休業をしていないもの 始業時刻変更等の措置
二 その一歳から三歳に達するまでの子を養育する労働者 育児休業に関する制度又は始業時刻変更等の措置
三 その三歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者 育児休業に関する制度
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者等に関する措置(努力義務)についての読み替えです。
ほか、必要な技術的読替えは、厚生労働省令で定める。
則22条(同一の子について配偶者が育児休業をする場合の特例の読替え)に定められています。
(必要に応じてe-Govなどで検索してみてください)
参考|パパ・ママ育休プラスを適用できない場合(2項)
※解説の便宜上、①②の丸数字を追加しています。
前項規定は、同項の規定を適用した場合の第五条第一項の規定による申出に係る育児休業開始予定日とされた日が、①当該育児休業に係る子の一歳到達日の翌日後である場合又は②前項の場合における当該労働者の配偶者がしている育児休業に係る育児休業期間の初日前である場合には、これを適用しない(育介法9条の6第2項)
①については、通達で次のように示されています(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)
- 育児休業が1歳に満たない子についてするものであることを原則としていることを踏まえ、労働者が子の1歳到達日までに育児休業をしない場合は特例規定を適用しないものであること。なお、育児休業開始予定日が当該育児休業に係る子の1歳到達日の翌日である場合については、配偶者と子の1歳到達日の翌日(すなわち子の1歳の誕生日)に交替して育児休業をする場合が考えられることから、これを特例として特例規定の対象とするものであること。
②については、通達で次のように示されています(前掲通達)
- 育児休業の権利の安定性を確保する観点から、育児休業開始予定日とされた日以前に、配偶者が育児休業をしていることを求めるものであること。この場合において、「配偶者がしている育児休業に係る育児休業期間の初日」とは、配偶者が実際にした育児休業の初日をいうものであること。また、「初日前」とは初日を含まないものであり、したがって、育児休業開始予定日とされた日と配偶者がしている育児休業に係る育児休業期間の初日が同じ日である場合には、本項に該当しないものであること。
その他
最後にその他の規定です。
あと少しです。
育介法5条(3項、4項、6項)、9条の6の適用についての規定です。
労働者の配偶者が次の規定によりする請求および当該請求に係る育児休業は、それぞれ5条1項、3項または4項の規定によりする申出および当該申出によりする育児休業とみなします。
- 国会職員の育児休業等に関する法律
- 国家公務員の育児休業等に関する法律
- 地方公務員の育児休業等に関する法律
- 裁判官の育児休業に関する法律
事業主は、次の事項を理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません。
- 労働者が育児休業申出等(育児休業申出および出生時育児休業申出)をし、又は育児休業をしたこと
- 9条の5第2項による申出をしなかったこと
- 9条の5第2項による申出が事業主の意に反する内容であったこと
- 9条の5第3項により同条2項の規定による申出に係る就業可能日等を変更したこと又は当該申出を撤回したこと
- 9条の5第4項の同意をしなかったこと
- 9条の5第5項の規定により同条4項の同意の全部又は一部を撤回したこと
育介法9条の5第2項から第5項までは、産後パパ育休の期間における就業についての規定です。
なお、派遣労働者の就業については、労働者派遣法に特例が設けられているため、派遣元事業主のみならず、派遣先事業主にも不利益な取扱いの禁止が義務付けられています(労働者派遣法47条の3)
ここまで、育児介護休業法の2章を解説しました。
育児介護休業法は、育児休業に限らず制度改正を繰り返しているため、制度そのものが複雑です。
また、条文は読み替えが多いため、制度の意図を把握するのが難しい法令です。
社会保険料の免除や雇用保険の給付とも関係するため、実務においては必須の法令です。ただし、社労士試験ではそもそも出題されない年度もあります。
時間がない方は、試験と割り切って過去問などを進めてみてください。
長文にお付き合い頂きありがとうございました。
(参考資料等)
厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html
- 育児介護休業法
- 令和5年4月28日 雇均発0428第3号(「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について」の一部改正について)
- 平成23年厚生労働省告示58号(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則第八条第二号及び第八十七条の規定に基づき厚生労働大臣が定める日数)
厚生労働省ホームページ|育児・介護休業法についてより|
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
- リーフレット「育児・介護休業法改正のポイント」
- 育児・介護休業法のあらまし