社労士試験の独学|労一|障害者雇用促進法③|認定制度、推進者等

まえがき

この記事では、障害者の雇用の促進等に関する法律(以下、障害者雇用促進法)から、認定制度、障害者雇用推進者等を解説しています。

当記事では、解説の根拠をカッコ書きで記載している箇所があります。

「法」「則」は、それぞれ次の意味で使用しています。

  • 法 ⇒ 障害者雇用促進法
  • 則 ⇒ 障害者雇用促進法施行規則

当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しております。ただし、厳密な表現と異なる部分もございます。

詳しくは免責事項をご確認ください。

雑則

雑則から次の制度を解説します。

  • もにす認定
  • 障害者雇用推進者
  • 解雇の届出
  • 障害者職業生活相談員

認定制度

障害者雇用促進法における認定制度

認定制度の対象は、雇用する労働者が常時300人以下の事業主(以下、中小事業主)です(法77条)

認定を受けるためには、障害者の雇用の促進や雇用の安定に関する取組の実施状況が優良であるなど、厚生労働省令で定める基準に適合する必要があります(則36条の17)

認定は、中小事業主からの申請に基づき、厚生労働大臣が行います。

その認定が「もにす」認定です。

認定を受けた中小事業主は、商品や広告など(以下、商品等)に「もにすマーク」を表示できます(法77条の2、則36条の18)

なお、認定を受けていないにもかかわらず商品等にもにすマークを表示したり、紛らわしい表示をした者には、30万円以下の罰金が定められています(法86条の4)

認定の更新はありませんが、認定を受けた中小事業主が次のいずれかに該当すると、認定取り消しの対象となります(法77条の3)

  • 認定基準に適合しなくなったととき
  • 障害者雇用促進法または障害者雇用促進法に基づく命令に違反したとき
  • 不正の手段により認定を受けたとき

障害者雇用推進者

民間企業においては、障害者雇用推進者の選任は努力義務です。

障害者の雇用状況の報告を義務付けられている事業主については、障害者雇用推進者を選任するよう努めなければなりません(法78条2項)

障害者雇用推進者の担当する業務としては、次の①から④までが定められています(法78条2項)

  • 障害者の雇用の促進および継続のために必要な諸条件の整備を図ること
  • 障害者の雇用状況の報告
  • 障害者を解雇する場合の届出
  • 対象障害者の雇入れに関する計画の作成および当該計画の円滑な実施を図ること

④については、対象障害者の雇入れに関する計画の作成命令(法46条1項)を受けたり、計画についての勧告(法46条5項、6項)を受けたときの業務です。

②④はこちらの記事で解説しています。

③障害者を解雇する場合の届出(法81条)はこれから解説します。


解雇の届出

事業主は、障害者である労働者を解雇する場合には、その旨を管轄公共職業安定所長に届け出なければなりません(法81条、則42条)

ただし、次のいずれかの場合は除きます(法81条、則41条)

  • 労働者の責めに帰すべき理由により解雇する場合
  • 天災事変その他やむを得ない理由のために事業の継続が不可能となったことにより解雇する場合

障害者の再就職は障害のない求職者と比べて困難だと考えられるため、障害者を1人でも解雇する場合は(除外理由に該当する場合を除き)管轄のハローワークへの届出を義務付けています。

(ハローワークは、速やかに求人の開拓、職業紹介等の措置を講ずるように努めることになっています)


障害者職業生活相談員

「障害者である労働者」の数が5人以上の事業所についての規定です。

事業主は、上記の事業所においては、その雇用する労働者(要件あり)から障害者職業生活相談員を選任しなければなりません(法79条2項)

障害者職業生活相談員の要件は、次のいずれかに該当することです(法79条2項)

  • 資格認定講習を修了したこと
  • 厚生労働省令(則39条)で定める資格を有すること

事業所単位で、雇用している労働者から選任する義務があります(努力義務ではなく義務です)

障害者職業生活相談員を選任したときは、管轄公共職業安定所長に届書を提出します(則40条)

障害者職業生活相談員は、障害者である労働者に対して、職業生活に関する相談や指導を行います。

なお、職場適応援助者(ジョブコーチ)とは異なる制度です。

職務の明確な違いについては、筆者の知識と経験が不足していて適切な言葉で綴ることができません。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページで「障害者職業生活相談員の活躍事例」などを紹介しているため、必要に応じて検索してみてください。


紛争の解決

紛争の解決

ここからは、労働者と事業主との間で紛争が生じる場面を解説をします。

一言でいうと、裁判とは別の解決手段です。


苦情の自主的解決

事業主は、次の事項に関して、障害者である労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関に対し当該苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を図るように努めなければなりません(法74条の4)

  • 賃金の決定などの待遇について、障害者であることを理由とする不当な差別的取扱いを禁止する規定(法35条)
  • 障害者である労働者について、合理的配慮の提供を義務付ける規定(法36条の3)

苦情処理機関とは、事業主を代表する者および当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦情を処理するための機関をいいます。


紛争の解決の援助、調停

障害者である労働者と事業主との間の紛争のうち、次の①から④までの各規定についてのもの(以下、①~④の紛争とします)は、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づく「助言及び指導」「あっせん」は行われません(法74条の4)

  • 法34条(募集および採用について、障害者でない者と均等な機会を与える義務)
  • 法35条(苦情の自主的解決の解説を参照)
  • 法36条の2(募集および採用について、合理的配慮を提供する義務)
  • 法36条の3(苦情の自主的解決の解説を参照)

①~④の紛争に関しては、都道府県労働局長による「助言、指導又は勧告」の対象です(法74条の6第1項)

また、①~④の紛争(労働者の募集および採用についての紛争を除く)については、調停の対象です(法74条の7第1項)

事業主は、障害者である労働者が都道府県労働局長の援助を求めたり、調停の申請をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません(法74条の6第2項、74条の7第2項)

対象となる苦情や紛争の事由は異なりますが、男女雇用機会均等法と趣旨は同じです(こちらで解説しています)


まとめ

ここまで、次の制度を解説しました。

  • もにす認定
  • 障害者雇用推進者
  • 解雇の届出
  • 障害者職業生活相談員
  • 紛争の解決

障害者雇用促進法のうち、一般事業主の雇用義務等はこちら、障害者雇用納付金等はこちらで解説しています。


(参考資料等)

厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html

  • 障害者雇用促進法

厚生労働省ホームページ|障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)より|
https://www.mhlw.go.jp/stf/monisu.html

  • 障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度リーフレット

厚生労働省ホームページ|事業主の方へ|3.雇用の分野における障害者の差別禁止及び合理的配慮の提供義務より|
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html#03

  • 周知用パンフレット