この記事では、令和5年度の雇用均等基本調査を整理しています。
例年、調査結果は調査年度の翌年度の7月に公表されます。このため、社労士試験においては、受験年度の2年度前の調査が最新になります。
当記事は条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しております。ただし、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
調査の概要
雇用均等基本調査は、統計法に基づく一般統計調査で、企業調査と事業所調査に分かれています(標本調査です)
- 企業調査では、正社員の状況、管理職、ハラスメント対策などを調査しています。
- 事業所調査では、男女の育児休業取得率、介護休業制度、多様な正社員制度などを調査しています。
(ローテーションで実施されている調査事項もあります)
なお、男女の育児休業取得率についての調査結果は、厚生労働白書に利用されています。
以降、結果の概要を社労士試験の勉強用に整理しています。時間の無い方は、育児休業の取得率(こちら)だけでも一読してみてください。
企業調査
令和5年度の調査事項は次のとおりです。
- 職種別正社員・正職員の状況
- 正社員・正職員の採用状況
- 管理職等について
- 昇進について
- 不妊治療と仕事との両立支援制度について
- ハラスメントを防止するための対策の取組の有無等
以降、正社員・正職員を単に「正社員」と表記しています。
正社員の男女比率
- 正社員に占める女性の割合
- 27.3%(前年 26.9%)
- 正社員に占める女性の割合(職種別)
- 総合職(21.5%)、限定総合職(35.4%)、一般職(34.5%)、その他(20.1%)
「限定総合職」とは、準総合職、専門職など基幹的な業務や総合的な判断を行う業務に属し、転居を伴う転勤がない又は一定地域内や一定職種内でのみ異動がある職種をいいます(用語の解説より)
正社員に占める各職種の割合(割合が高い順)
- 女性の正社員
- 一般職(43.5%)、総合職(38.6%)、限定総合職(13.6%)
- 男性の正社員
- 総合職(53.0%)、一般職(31.1%)、限定総合職(9.3%)
新卒者(令和5年春卒業)を採用した企業割合は、22.6%(前年 21.1%)です。
新卒者を採用した企業の採用状況(採用区分別)は、次のとおりです(割合が高い順)
- 総合職
- 男女とも採用(56.4%)、男性のみ採用(30.1%)、女性のみ採用(13.5%)
- 限定総合職
- 男性のみ採用(39.1%)、男女とも採用(34.6%)、女性のみ採用(26.3%)
- 一般職
- 女性のみ採用(40.9%)、男性のみ採用(33.2%)、男女とも採用(25.9%)
新規学卒者の採用を行った企業を規模別にみると、規模が大きくなるほど女性を採用した企業割合が高くなる傾向にあります。
「管理職等」には、部長、課長、係長等配下の係員等を指揮・監督する役職のほか、専任職、スタッフ管理職等と呼ばれている役職も含まれています(用語の解説より)
また、「課長相当職以上」には「役員」が含まれています。
女性管理職を有する企業割合
- 課長相当職以上の女性管理職を有する企業の割合
- 54.2%
- 女性管理職を有する企業の割合(役職別)
- 部長相当職あり(12.1%)、課長相当職あり(21.5%)
女性管理職を有する企業を企業規模別にみると、規模が大きくなるほど管理職の女性を有する企業割合が高くなる傾向にあります。
管理職等に占める女性の割合
- 課長相当職以上の管理職に占める女性の割合
- 12.7%
- それぞれの役職に占める女性の割合
- 役員(20.9%)、部長相当職(7.9%)、課長相当職(12.0%)、係長相当職(19.5%)
課長相当職以上の管理職に占める女性の割合(産業別)は、次のとおりです(割合の最も高い産業から順に調査結果より抜粋)
- 医療、福祉(52.7%)
- 教育、学習支援業(24.8%)
- 生活関連サービス業、娯楽業(20.1%)
- 宿泊業、飲食サービス業(19.4%)
管理職に占める女性の割合を企業規模別にみると、いずれの管理職等の割合においても10〜29人規模が最も高くなります。
調査の対象は、令和4年10月1日から令和5年9月30日の間に各役職に新たに就いた女性です。
(同一労働者が期間内に2回以上昇進した場合は、それぞれの役職区分で1人ずつ計上されています)
- 新たに課長相当職以上へ昇進者した女性がいた企業の割合
- 8.6%
- 新たに課長相当職以上についた昇進者に占める女性の割合
- 14.6%
新たに課長相当職以上についた昇進者に占める女性の割合(産業別)は、次のとおりです(割合の最も高い産業から順に調査結果より抜粋)
- 医療、福祉(55.2%)
- 教育、学習支援業(25.9%)
- 金融業、保険業(22.7%)
不妊治療と仕事との両立のために利用できる制度を設けている企業割合は、36.9%です。
制度の内容別の内訳(複数回答)は、次のとおりです(割合の最も高い制度から順に調査結果より抜粋)
- 短時間勤務制度(48.5%)
- 不妊治療にも利用可能な特別休暇制度(44.7%)
- 時差出勤制度(37.4%)
- 所定外労働の制限の制度(34.3%)
- フレックスタイム制度(26.8%)
取り組みの有無
- セクシュアルハラスメントを防止するための対策に「取り組んでいる」企業割合
- 86.0%
- 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを防止するための対策に「取り組んでいる」企業割合
- 82.7%
- パワーハラスメントを防止するための対策に「取り組んでいる」企業割合
- 86.2%
- 性的指向・性自認に関するハラスメントについて、防止対策の対象として明示する取組に「取り組んでいる」企業割合
- 41.7%
いずれも企業の規模が大きいほど「取り組んでいる」企業割合が高くなっています。
事案への対応状況
過去3年間に、セクシュアルハラスメントに関する相談実績又は事案のあった企業は、6.0%です。
上記事案にどのように対応したか(複数回答)
- 事実関係を確認した(94.7%)
- 被害者に対する配慮を行った(84.2%)
- 再発防止に向けた措置を講じた(80.4%)
過去3年間に、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントに関する相談実績又は事案のあった企業は、0.4%です。
上記事案にどのように対応したか(複数回答)
- 事実関係を確認した(79.2%)
- 行為者に対する措置を行った(76.3%)
- 再発防止に向けた措置を講じた(72.3%)
過去3年間に、パワーハラスメントに関する相談実績又は事案のあった企業は、13.5%です。
上記事案にどのように対応したか(複数回答)
- 事実関係を確認した(90.6%)
- 被害者に対する配慮を行った(75.1%)
- 再発防止に向けた措置を講じた(74.6%)
望ましい取組への取組状況
カスタマーハラスメント(顧客から自社の労働者に対する著しい迷惑行為)対策についての企業割合。
- 一定の取組をしている(24.3%)
- 今後取組を検討している(33.5%)
- 取り組んでいない(42.2%)
就職活動中やインターンシップ中の学生・求職者へのハラスメント対策についての企業割合。
- 一定の取組をしている(19.9%)
- 今後取組を検討している(28.5%)
- 取り組んでいない(51.6%)
取引先の労働者やフリーランス等自社の労働者以外の者へのハラスメント対策についての企業割合。
- 一定の取組をしている(20.9%)
- 今後取組を検討している(30.7%)
- 取り組んでいない(48.4%)
事業所調査
令和5年度の調査事項は次のとおりです。
- 育児休業(産後パパ育休を含む)制度
- 働きながら子の養育を行う労働者に対する援助の措置に関する事項
- 多様な正社員制度に関する事項
以降の育児休業には産後パパ育休を含みます。
育児休業取得者の割合
令和5年度の男女別の育児休業取得率は次のとおりです。
- 女性
- 84.1% (令和4年度 80.2%)
- 男性
- 30.1% (令和4年度 17.13%)
また、有期契約労働者の育児休業取得率は次のとおりです。
- 女性
- 75.7% (令和4年度 65.5%)
- 男性
- 26.9% (令和4年度 8.57%)
ちなみに、男性の育児休業・育児目的休暇の取得率を公表している事業所の割合は、20.2%です。
男女別の育児休業取得率(令和5年度調査)とは、令和3年10月1日から令和4年9月30日までの1年間に在職中に出産した女性(男性の場合は配偶者が出産した男性)のうち、令和5年10月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む)の割合をいいます。
育児休業終了後の復職状況
調査の対象は、令和4年4月1日から令和5年3月31日までの1年間に育児休業を終了し、復職予定であった女性と男性です。
女性
- 実際に復職した者(93.2%)
- 退職した者(6.8%)
男性
- 実際に復職した者(97.3%)
- 退職した者(2.7%)
育児休業の取得期間
調査の対象は、令和4年4月1日から令和5年3月31日までの1年間に育児休業を終了し、復職した者の育児休業期間です。
女性の育児休業期間については、次のとおりです(割合の高い順に調査結果より抜粋)
- 12か月~18か月(32.7%)
- 10か月~12か月(30.9%)
- 8か月~10か月(11.4%)
男性の育児休業期間については、次のとおりです(割合の高い順に調査結果より抜粋)
- 1か月~3か月(28.0%)
- 5日~2週間未満(22.0%)
- 2週間~1か月未満(20.4%)
育児のための所定労働時間の短縮措置等の制度がある事業所の割合は、67.2%(前年 77.5%)です。
各制度の導入状況(複数回答)は次のとおりです。
- 短時間勤務制度(61.0%)
- 所定外労働の制限(55.4%)
- 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ(36.8%)
短時間勤務制度により短縮した時間分の賃金の取扱いは次のとおりです。
- 無給(79.4%)
- 一部有給(11.4%)
- 有給(9.1%)
多様な正社員制度について「制度が就業規則等で明文化されていて、勤務できる」が、23.5%となっています。
制度ごとの実施状況(複数回答)は次のとおりです。
- 短時間正社員(17.0%)
- 勤務地限定正社員(14.6%)
- 職種・職務限定正社員(12.1%)
多様な正社員として勤務できる(制度が就業規則等で明文化されている)事業所において、令和4年10月1日から令和5年9月30日までの間に制度を利用した者の割合(事業所の常用労働者を100として集計)は、次のとおりです。
- 短時間正社員(3.2%)
- 勤務地限定正社員(15.4%)
- 職種・職務限定正社員(16.0%)
令和5年度の雇用均等基本調査は以上です。
結果の概要や統計表そのものは、下記の参考資料をご参照ください。
(参考資料)
厚生労働省ホームページ|令和5年度雇用均等基本調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r05.html