日常の意思決定に応用できる概念!機会原価

まえがき

この記事で紹介する機会原価は、複数の代替案からもっとも有利な選択をする際に用いる考え方です。

そのため、独学で勉強を「する」「しない」の意思決定にも応用可能です。

以降、機会原価について解説しています。

※原価計算を学習していない人へも伝えるため、説明を簡略化しています。

他の選択肢の利益

利益を生む二つの案を示した図

「機会原価」とは、ある選択肢を選んだことによって手放した、他の選択肢で得られたであろう最大の利益額です。

つまり、ある選択肢を選ぶということは、他の選択肢で得られたであろう(最大の)利益額を失うという考え方になります。

複数の選択肢があるときに、選んだ選択肢の利益だけに着目しないのがポイントです。

機会原価の考え方

「勉強をする」をA案、同時刻に「ゲームをする」をB案としましょう。同時に実行できない2つの案を比較し、どちらの案が得なのかを考えるとします。

「A案」「B案」のそれぞれの利益

A案の利益 ⇒ A案の収益 ▲ A案の原価

B案の利益 ⇒ B案の収益 ▲ B案の原価

ここで、A案を選択した際にはB案の利益を失うと考えます。B案を選択するならばA案の利益を失うともいえます。

「A案」と「B案」は同時に選択できないため、一方の利益を失うことがポイントです。

この、失う最大の利益(額)が、それぞれの案を選択した際に発生する機会原価です。

ちなみに、「A案」「B案」という将来のことを判断するため、過去に発生した原価は考慮しません。

これから勉強するにせよ、ゲームをするにせよ、昨日どのように過ごしたかは今さら変えられません。そのため、これからの行動(将来)についての意思決定とは関係ないと判断します。

機会損失

機会損失を説明した図
機会損失の例

例えば、A案の利益が 150、B案の利益が 100だとします。

一見、どちらの案を採用してもプラスに見えますが、次のように考えます。

  • A案を選択⇒B案を選択できないため、150▲100 = +50
  • B案を選択⇒A案を選択できないため、100▲150 = ▲50

B案を選択すると「+100の利益を得られた!」ではなく、「A案を選択していれば得られた利益を50失った」と考えます。

名目の利益ではなく、より良い意思決定をするために機会原価を考慮します。


日常生活の意思決定に取り入れてみよう

A案の利益が、機会原価であるB案の利益だけ小さくなることを説明した図

機会原価は、ある選択肢を選んだことによって手放した、他の選択肢で得られたであろう最大の利益額と説明しました。

収益=メリット、原価=デメリット、そして機会原価=他の案の利益 と置き換えると日常生活の意思決定に適用可能です。

「勉強」に焦点をあていくつか例を紹介します。

例1|そもそも勉強する? or 勉強しない?

「勉強しない」とは消極的な意味だけではありません。

例えば、アルバイトをしたり、趣味を楽しんだり、友達と遊んだりすることができます。

これは「勉強する」ことにより失う利益、つまり、勉強をする際に考慮する機会原価です。

(試験勉強を除いて)機会原価の考え方には金銭的価値では測れないものも含まれます。

そのため、勉強をするかどうかを判断する際には、勉強に必要な時間や労力を使ってできる他の案も考えます。

また、一方のメリットと他方のデメリットだけを比較するのではなく、両方のメリットとデメリットの差(利益)で比較することが大切です。

A|勉強するB|勉強しない
メリット〇〇ここも考慮する
デメリットここも考慮する△△
(利益)利益A利益B
機会原価▲利益B▲利益A
案の価値正味正味
機会原価を考慮した利益の考え方の例

選択の過程を明確にすることで、一定のルールを基に「する」「しない」を判断できます。

仮に、検討対象の案が3つ以上ある場合は、自分が選択した案以外で得られる最大の利益(額)が機会原価です。

例2|模試を受ける? or 模試以外の対策をする?

模試を受ける受けないに関わらず、勉強の目的は、合格することや必要なスキルを身に付けることです。

A案=模試を受ける、B案=模試を受けないとを比較し、より目的の達成が期待できる案を選択します。

「模試を受ける」選択は、模試以外の対策をしたならば得られる勉強の効果を失います。

一方で「模試を受けない」選択は、模試を受けたならば得られる勉強の効果を失います。

模試に費やす原価(費用、労力など)を考慮し、「模試を受けるより良い試験対策」が可能なのかを判断します。

例3|勉強する? or 休む?

ひらたくいうと、今日は勉強しないで休むのかという選択です。「休む」=「サボる」とは限りません。

休むことにより、勉強したならば得られる学習効果は失いますが、体力・気力を満たすことができるともいえます。

勉強することにより、体力・気力を満たす効果は失いますが、学習効果を得られるともいえます。

この場合も両方の案に失う利益が発生します。

勉強に費やす原価(やる気、体力など)を考慮し、勉強することによる学習効果がプラスになりそうかで判断します。

勉強する人と休む人の図

「ダラダラ休む」のも「ダラダラ勉強する」のも考えものです。言うは易しですが…。


他にも進学と就職など、日常生活に欠かせない利益の比較に用いることができます。

また、どちらの案も利益がマイナス(デメリットのほうが大きい)にも関わらず、どちらかを選択せざるを得ないケースでは、よりマイナスが小さい案を選択します。

例えば、何かをやらかした際に「謝る」のか「隠す」のかを選択するケースです。ちなみに、私なら「謝る」を選択します。

なお、より良い選択をするために機会原価を考慮しているため、検討を繰り返し先延ばしするのではなく、何かしらの意思決定は必要です。

まとめ

ここまで、勉強を「する」「しない」のような代替案の比較に活用できる、機会原価の考え方と適用例を紹介しました。

機会原価は、意思決定を行う際に重要な概念ですが、必ずしも正確に計算することはできません。

なぜなら、機会原価は、将来の出来事に基づいて計算されるからです。

しかし、機会原価を考慮することで、得られる利益だけでなく失う利益にも目を向けることが可能です。

これから起こる将来の予想は難しくとも、選択した案の正味の利益を把握しやすくなります。

そして、「選択する」を先延ばしないためにも、「合格する」や「スキルを身に付ける」など、本来の目的(利益)を獲得できるかで日頃の意思決定をしたいものです。

最後までお読みいただきありがとうございました。