この記事では、障害者の雇用の促進等に関する法律(以下、障害者雇用促進法)から次の制度を解説しています。
- 不当な差別的取扱いの禁止
- 合理的配慮の提供義務
- 対象障害者の雇用義務等
- 実雇用率の算定における特例
- 除外率設定業種
当記事では、解説の根拠をカッコ書きで記載している箇所があります。
カッコ内の「法」「令」「則」は、それぞれ次の意味で使用しています。
- 法 ⇒ 障害者雇用促進法
- 令 ⇒ 障害者雇用促進法施行令
- 則 ⇒ 障害者雇用促進法施行規則
当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しております。ただし、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
概要
この法律において障害者とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する)があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいいます(法2条)
身体障害者に該当するか否かの障害の範囲は「法別表」で定められています。
重度身体障害者、知的障害者、重度知的障害者、精神障害者それぞれの基準は「障害者雇用促進法施行規則」で定められています(則1条~1条の4、則別表第1)
社労士試験の勉強用に条文を載せておきます。
この法律は、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置、職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もって障害者の職業の安定を図ることを目的とする。
文字からでは解釈に幅が生じそうなため、「職業リハビリテーション」について解説しておきます。
職業リハビリテーション
職業リハビリテーションとは、障害者に対して、職業指導、職業訓練、職業紹介その他この法律に定める措置を講じて、職業生活における自立を図ることをいいます(法2条7号)
障害者雇用促進法では、職業リハビリテーションの推進として、次のような規定が設けられています(法2章)
- 公共職業安定所による職業指導等(法11条)
- 都道府県が事業主に委託して実施する適応訓練(法13条)
- 障害者職業センター(*1)による職場適応援助者(*2)の養成など(法22条)
- 障害者就業・生活支援センター(*3)による支援対象障害者(*4)に対する就業面および生活面についての援助(法28条)
(*1)独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営しています。
(*2)いわゆるジョブコーチです。配置型、訪問型、企業在籍型があり、障害者が職場に適応できるよう、障害者と事業主(上司や同僚を含めた職場環境というイメージ)双方にアドバイスをします。
(*3)一般社団法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人、医療法人のうち、一定の基準に適合したものからの申請により、都道府県知事が指定できます(法27条、則4条の6)
(*4)職業生活における自立を図るために就業及びこれに伴う日常生活又は社会生活上の支援を必要とする障害者をいいます(法27条)
事業主の責務(5条)
- 全て事業主は、障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有するものであって、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理並びに職業能力の開発及び向上に関する措置を行うことによりその雇用の安定を図るように努めなければならない。
国および地方公共団体の責務(6条)
- 国及び地方公共団体は、自ら率先して障害者を雇用するとともに、障害者の雇用について事業主その他国民一般の理解を高めるほか、事業主、障害者その他の関係者に対する援助の措置及び障害者の特性に配慮した職業リハビリテーションの措置を講ずる等障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るために必要な施策を、障害者の福祉に関する施策との有機的な連携を図りつつ総合的かつ効果的に推進するように努めなければならない。
不当な差別的取扱いの禁止、合理的配慮の提供義務
- 不当な差別的取扱いの禁止
- 合理的配慮の提供義務
いずれも事業所の規模にかかわらず義務です。
- 事業主は、労働者の募集および採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない(法34条)
- 事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない(法35条)
①および②の具体的な考え方については、障害者差別禁止指針(平成27年厚労告116号)で定められています。
障害者であることを理由とする差別とは、直接差別(車いす、補助犬その他の支援器具等の利用、介助者の付添い等の社会的不利を補う手段の利用等を理由とする不当な不利益取扱いを含む)をいいます(障害者差別禁止指針)
ただし、次に掲げる措置を講じることは、障害者であることを理由とする差別に該当しません(前掲指針)
- 積極的差別是正措置として、障害者でない者と比較して障害者を有利に取り扱うこと
- 合理的配慮を提供し、労働能力等を適正に評価した結果として障害者でない者と異なる取扱いをすること
- 合理的配慮に係る措置を講ずること(その結果として、障害者でない者と異なる取扱いとなること)
- 障害者専用の求人の採用選考又は採用後において、仕事をする上での能力及び適性の判断、合理的配慮の提供のためなど、雇用管理上必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認すること
- 事業主は、労働者の募集および採用について、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集および採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない(法36条の2)
- 事業主は、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保または障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない(法36条の3)
事業主は、①②の措置を講ずるに当たっては、障害者の意向を十分に尊重しなければなりません(法36条の4第1項)
また、雇用する障害者である労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければなりません(法36条の4第2項)
①および②の具体的な考え方については、合理的配慮指針(平成27年厚労告117号)で定められています。
なお、①②ともに、「事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りではない」と規定されています(法36条の2、36条の3)
この限りではない…では、具体的にどうなるのか?については、次のような方向性が示されています(合理的配慮指針)
- 事業主は、障害者から申出があった具体的な措置が過重な負担に当たると判断した場合には、当該措置を実施できないことを当該障害者に伝えるとともに、当該障害者からの求めに応じて、当該措置が過重な負担に当たると判断した理由を説明すること
- また、事業主は、障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で合理的配慮に係る措置を講ずること
合理的配慮は、個々の事情を有する障害者と事業主との相互理解の中で提供される性質のものです(前掲指針)
採用後の合理的配慮について、事業主が必要な注意を払っても労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、合理的配慮の提供義務違反を問われません(前掲指針)
対象障害者の雇用義務等
以降の「労働者」は、常時雇用する労働者をいいます(法43条1項)
また、「対象障害者」とは、身体障害者、知的障害者、精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限る)をいいます(法37条2項)
事業主(国、地方公共団体を除く。以降の解説において同じ)は、雇用する対象障害者である労働者の数を「法定雇用障害者数」以上にしなければなりません(法43条1項)
雇用する労働者が対象障害者であるかどうかの確認は、厚生労働省令で定める書類(則4条の15)により行うものとされています(43条9項)
雇用義務の有無を判定するための計算
法定雇用障害者数は、次の計算式で求められます。
(厳密には雇用する労働者の数ですが、雇用している労働の数と表記しています)
法定雇用障害者数(1人未満の端数切り捨て)
= 雇用している労働者の数 × 障害者雇用率(2.5%)
雇用しなければならない対象障害者である労働者の数が「法定雇用障害数」です。
すでに雇用している労働者(対象障害者に限りません)の数が「雇用している労働の数」です。
「雇用している労働者の数」を算定するに当たっては、短時間労働者1人を0.5人とみなします(法43条8項、則6条)
(特定短時間労働者については、実雇用率の算定においては0.5人に換算しますが、法定雇用障害者数を求める際には算入しません)
「障害者雇用率」は本来2.7%です。ただし、令和8年6月30日までの間は2.5%となっています(令9条、令和5年3月1日改正令附則3条1項)
民間企業(特殊法人を除く)においては、雇用している労働者が40人以上になると、対象障害者を1人以上雇用する義務が生じます( 1人= 40人 × 2.5% )
雇用義務を満たしたか否かを判定する際の換算
実際に雇用した「対象障害者である労働者」の数(実雇用率の算定)については、週所定労働時間および障害の程度に応じて、1人の対象障害者を次表のように換算します。
週所定労働時間 | 身体障害者|重度 | 知的障害者|重度 | 精神障害者 |
30h以上 | 1人|2人 | 1人|2人 | 1人 |
20h以上30h未満 | 0.5人|1人 | 0.5人|1人 | 1人(本来0.5人) |
10h以上20h未満 | -|0.5人 | -|0.5人 | 0.5人 |
精神障害者については重度の設定はありません。
短時間労働者や特定短時間労働者の定義を含め、条文を基にした解説は下のタブに格納しておきます。
(必要に応じて開閉してください)
短時間労働者
「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間が、当該事業主の事業所に雇用する通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短く、かつ、30時間未満である常時雇用する労働者をいいます(法43条3項、平成21年4月24日厚労告275号)
対象障害者である労働者の数の算定に当たっては、対象障害者である短時間労働者は、その1人をもって、0.5人の対象障害者である労働者に相当するとみなします(法43条3項、則6条)
ただし、対象障害者である短時間労働者のうち、精神障害者については、則6条の規定にかかわらず、当分の間は1人として算定されます(則附則6条)
重度身体障害者、重度知的障害者
対象障害者である労働者の数の算定に当たっては、重度身体障害者または重度知的障害者である労働者(短時間労働者を除く)は、その1人をもって、2人の対象障害者である労働者に相当するとみなします(法43条4項、令10条)
また、重度身体障害者または重度知的障害者である短時間労働者は、その1人をもって、1人の対象障害者である労働者に相当するとみなします(法43条5項、則6条の2)
特定短時間労働者
「特定短時間労働者」とは、短時間労働者のうち、1週間の所定労働時間が10時間以上20時間未満の範囲内にある労働者(**)をいいます(法70条、令和5年7月7日厚労告228号)
(**)事業主から障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律29条1項の指定障害福祉サービス(厚生労働省令で定める便宜を供与するものに限る)を受けている者を除く(法70条、則33条の2)
対象障害者である労働者の数の算定に当たっては、重度身体障害者、重度知的障害者または精神障害者である特定短時間労働者は、その1人をもって、0.5人の対象障害者である労働者に相当するとみなします(法70条、則33条)
参考|特殊法人、国および地方公共団体、教育委員会の障害者雇用率
国などには、民間企業(特殊法人を除く)よりも高い障害者雇用率が設定されています(令2条、10条の2第2項、令和5年3月1日改正令附則3条1項)
- 特殊法人、国および地方公共団体
⇒ 令和8年6月30日までの間は2.8%(本来は3.0%) - 教育委員会
⇒ 令和8年6月30日までの間は2.7%(本来は2.9%)
障害者雇用率についての特殊法人の範囲は、政令で定められています(法43条6項、令10条の2、令別表第2)
民間企業(特殊法人を除く)について解説します。
簡単にいうと、対象障害者を1人以上雇用する義務のある事業主には、障害者の雇用状況を報告する義務も課せられています。
(1人以上雇用する義務があるならば、実際に雇用した人数が0人でも報告は必要です)
障害者雇用状況報告書
雇用している労働者が常時40人以上(*5)である事業主は、6月1日現在における対象障害者の雇用に関する状況を、翌月15日までに、厚生労働大臣(実際の報告は管轄の公共職業安定所長)に報告しなければなりません(法43条7項、則7条、8条)
(*5)本来は37.5人以上ですが、令和8年6月30日までの間は経過措置が設けらています(令和5年3月1日改正則 附則2条)
雇用している労働者の数の算定に当たっては、短時間労働者は、その1人をもって、0.5人の労働者に相当するとみなします(法43条8項、則6条)
(報告の要否の判定において、短時間労働者は0.5人としてカウントしますが、特定短時間労働者は含めません)
障害者雇用状況の集計結果
報告された「障害者の雇用状況の報告」は集計され、「障害者雇用状況の集計結果」として公表されます。
令和6年の障害者雇用状況の集計結果によると、民間企業についての数値は次のようになっています。
- 雇用障害者数
⇒ 67万7,461.5人(過去最高) - 実雇用率
⇒2.41%(過去最高) - 法定雇用率達成企業の割合
⇒ 46.0%(対前年比4.1ポイント低下) - 法定雇用率未達成企業に占める障害者を1人も雇用していない企業(0人雇用企業)の割合
⇒ 57.6%
社労士試験で出題されたこともあるため、試験勉強中の方は最新の集計結果(民間企業における雇用状況)を一読してみてください。
参考|厚生労働省ホームページ(外部サイトへのリンク)|令和6年 障害者雇用状況の集計結果
対象障害者の雇用義務があるものの、雇用した対象障害者の数が法定雇用障害者数を下回る事業主に対しての規定です。
厚生労働大臣は、対象障害者の雇用を促進するため必要があると認める場合には、上記の事業主に対して、対象障害者の雇入れに関する計画の作成を命じることができます(法46条1項)
事業主は、計画を作成したときは、管轄公共職業安定所長に提出しなければなりません(則10条)
勧告と公表
厚生労働大臣は、計画を作成した事業主に対して、著しく不適当な計画の変更についての勧告や、計画の適正な実施に関しての勧告をすることができます(法46条5項、6項)
計画を作成した事業主が、正当な理由がなく、上記の勧告に従わないときは、厚生労働大臣はその旨を公表することができます(法47条)
(公表案件は、厚生労働省のホームページなどで確認できます)
障害者雇用についての特例等
- 実雇用率の算定における特例(特例子会社制度等)
- 除外率設定業種(経過措置)
それぞれ簡単に解説します。
各企業の労働者に占める対象障害者の割合(実雇用率)を算定する方法には、4種類の特例が設けられています。
4種類の特例いずれも、厚生労働大臣の認定が要件です。
特例子会社制度(子会社特例)
特定の株式会社と厚生労働省令で定める特殊の関係(株主総会などの意思決定機関を支配している関係)にある事業主についての特例です(法44条1項、則8条の2)
解説の便宜上、上記の事業主を「親会社」、親会社と特殊の関係にある特定の株式会社を「子会社」とします。
親会社と子会社の申請に基づいて、当該子会社が一定の基準(親会社と人的関係が緊密であるなど)に適合する旨の厚生労働大臣の認定を受けると、認定を受けた親会社に係る対象障害者の雇用および障害者の雇用状況の報告については、次のように取り扱われます(法44条ほか)
- 当該子会社が雇用する労働者は当該親事業主のみが雇用する労働者とみなす
- 当該子会社の事業所は当該親事業主の事業所とみなす
例えば、雇用している対象障害者である労働者が、子会社では法定雇用障害者数を5人超えているものの、親会社では2人不足しているとしましょう。
厚生労働大臣の認定を受けると、子会社を含めた親会社として、法定の基準を3人超えているとみなします。
ちなみに、子会社特例(法44条)の認定を受けた親会社を「親事業主」といいます(法44条)
また、一般的には、子会社特例の認定を受けた子会社は「特例子会社」といわれています。
関係会社特例
特定の株式会社(子会社を除く)と厚生労働省令で定める特殊の関係(株主総会などの意思決定機関を支配している関係)にある「親事業主」についての特例です(法45条、則8条の4)
上記の特定の株式会社(子会社を除く)を「関係会社」といいます(法45条)
「親事業主」とあるため、子会社特例の認定を受けた親会社および子会社が前提条件です。
親事業主、(特例)子会社および関係会社の申請に基づいて厚生労働大臣の認定を受けると、認定を受けた親事業主に係る対象障害者の雇用および障害者の雇用状況の報告については、当該関係会社が雇用する労働者は当該親事業主のみが雇用する労働者と、当該関係会社の事業所は当該親事業主の事業所とみなします。
認定基準は異なるものの、子会社特例と趣旨は同じです
(関係会社特例の認定を受けると、子会社および関係会社を含めた親会社として、法定雇用障害者数を満たすか否かを判定します)
企業グループ算定特例(関係子会社特例)
関係会社特例と異なり、子会社特例の認定を受けた子会社がなくとも利用できる制度です。
事業主とその全ての子会社(関係子会社といいます)の申請に基づいて厚生労働大臣の認定を受けると、次のように取り扱われます(法45条の2)
認定を受けた親事業主(関係親事業主といいます)に係る対象障害者の雇用および障害者の雇用状況の報告については、当該関係子会社が雇用する労働者は当該関係親事業主のみが雇用する労働者と、当該関係子会社の事業所は当該関係親事業主の事業所とみなします。
認定基準は異なるものの、子会社特例、関係会社特例と趣旨は同じです。
事業協同組合等算定特例(特定事業主特例)
簡単にいうと、複数の中小企業が共同して障害者の雇用機会を確保する制度です。
事業協同組合等および複数のその組合員たる事業主(特定事業主といいます)の申請に基づいて厚生労働大臣の認定を受けると、次のように取り扱われます(法45条の3)
認定を受けた事業協同組合等(特定組合等といいます)に係る対象障害者の雇用および障害者の雇用状況の報告については、当該特定事業主が雇用する労働者は当該特定組合等のみが雇用する労働者と、当該特定事業主の事業所は当該特定組合等の事業所とみなします。
同一の企業グループ内で障害者雇用を算定するものではありませんが、他の特例と趣旨は同じです。
「事業協同組合等」とは、事業協同組合、有限責任事業組合(要件あり)、水産加工業協同組合、商工組合、商店街振興組合をいいます(法45条の3第2項、則8条の8)
除外率設定業種とは、対象障害者の就業が困難であると認められる職種の労働者が相当の割合を占めるとして、厚生労働省令で定められている業種をいいます(法附則3条2項)
経過措置として残っている制度です。
実質的な廃止に向けて、平成16年4月から段階的に縮小されています。
認識の差異が生じないよう付け加えると、廃止の期限を定めた計画を段階的に進めているものではなく、平成22年7月の縮小から10年以上の期間を置いて、3回目の縮小が令和7年4月1日に行われます。
除外率設定業種に属する事業を行う事業主については、「雇用している労働者の数」から「除外率設定業種ごとの労働者の数 × 当該業種に係る除外率」を差し引いた数に、障害者雇用率を乗じた数が法定雇用障害者数となります(法43条1項、法附則3条2項、則附則1条の3、則別表第4)
計算式で表すと次のとおりです。
除外率設定業種の法定雇用障害者数(1人未満の端数切り捨て)
= (雇用している労働者の数 - 除外率設定業種ごとの労働者の数 × 当該業種に係る除外率 )× 障害者雇用率
「除外率設定業種ごとの労働者の数 × 当該業種に係る除外率」は1人未満の端数を切り捨てます(法附則3条2項)
令和7(2025)年4月1日からの除外率設定業種とそれぞれの除外率は、下のタブに格納しておきます。
除外率設定業種 | 除外率 | |
非鉄金属第一次製錬・精製業 貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く) | 5% | |
建設業 鉄鋼業 道路貨物運送業 郵便業(信書便事業を含む) | 10% | |
港湾運送業 警備業 | 15% | |
鉄道業 医療業 高等教育機関 介護老人保健施設 介護医療院 | 20% | |
林業(狩猟業を除く) | 25% | |
金属鉱業 児童福祉事業 | 30% | |
特別支援学校(専ら視覚障害者に対する教育を行う学校を除く) | 35% | |
石炭・亜炭鉱業 | 40% | |
道路旅客運送業 小学校 | 45% | |
幼稚園 幼保連携型認定こども園 | 50% | |
船員等による船舶運航等の事業 | 70% |
令和7年4月1日からは、令和6年度の除外率から10%引き下げられます。
そのため、令和6年度に5%または10%の除外率を設定されていた業種(倉庫業など)は、令和7年度からは除外率設定業種に該当しなくなります。
一方で、警備業、介護老人保健施設、介護医療院の3業種は、令和7年度から除外率設定業種に追加されます。
ここまで、障害者雇用促進法から次の制度を解説しました。
- 不当な差別的取扱いの禁止
- 合理的配慮の提供義務
- 対象障害者の雇用義務等
- 実雇用率の算定における特例
- 除外率設定業種
障害者雇用の状況は一律ではないため、なかなか複雑な制度です。
社労士試験の勉強においては、障害者雇用率の「2.5%」、障害者の雇用状況の報告(ロクイチ報告)における「6月1日現在を翌月15日まで」は知識問題なため、出題されたら正解できるようにしてください。
また、余裕があれば、受験年度に対応した「障害者雇用状況の集計結果」を確認しておいてください。
(参考資料等)
厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html
- 障害者雇用促進法
- 障害者の雇用の促進等に関する法律第四十三条第三項の規定に基づく厚生労働大臣の定める時間数
- 障害者の雇用の促進等に関する法律第六十九条及び第七十条の厚生労働大臣の定める時間
- 障害者の雇用の促進等に関する法律第四十四条第一項第二号の厚生労働大臣が定める数及び率
厚生労働省ホームページ|職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について|
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/06a.html
厚生労働省ホームページ|雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務より|
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shougaisha_h25/index.html
- 障害者差別禁止指針
- 合理的配慮指針
- 解釈通知
- Q&A
厚生労働省ホームページ|事業主の方へより|
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html
- 特例子会社制度の概要
- 企業グループ算定特例制度の概要
- 事業協同組合等算定特例制度の概要
- 除外率制度の概要
厚生労働省ホームページ|労働政策審議会障害者雇用分科会意見書|
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26265.html