社労士試験の独学|労一|育児介護休業法③|介護休業

まえがき

この記事では、育児介護休業法の3章(介護休業)を解説しています。

解説では次のように略称を使用しています。

  • 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
    ⇒ 育児介護休業法、育介法
  • 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則
    ⇒ 則

また、通達「平成28年8月2日 職発0802第1号」は、当記事の投稿時における直近の改正「令和5年4月28日 雇均発0428第3号」で表記しています。

社会保険労務士試験の独学、労務管理担当者の勉強などに役立てれば嬉しいです。

当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しております。ただし、厳密な表現と異なる部分もございます。

詳しくは免責事項をご確認ください。

介護休業

介護休業とは、労働者(日々雇用される者を除く)が、育児介護休業法3章に定めるところにより、その要介護状態にある対象家族を介護するためにする休業をいいます。

要介護状態とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいいます(則2条)

介護保険制度における「要介護状態」と必ずしも一致するものではありません(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)

参考|厚生労働省ホームページ(外部サイトへのリンク)|常時介護を必要とする状態に関する判断基準

対象家族とは、配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ)、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母をいいます(則3条)

育介法の多くの規定では、「労働者」から日々雇用される者を除いています。

特にことわりがなければ、以降の労働者は「日々雇用される者を除く」を省略しています。

11条|介護休業の申出

介護休業の取得には、労働者から事業主への申出が必要です(1項)

休業の申出が可能な回数、休業の取得が可能な日数(2項)

介護休業の申出の回数と取得可能な日数

労働者は、同一の対象家族についての介護休業が次の①②いずれかに該当する場合には、その対象家族については介護休業の申出ができません。

  • 当該対象家族について3回の介護休業をした場合
  • 当該対象家族について介護休業日数(*1)が93日に達している場合

(*1)介護休業を開始した日から終了した日までの日数です。労働日でない日(所定休日など)を含めます。2回以上の介護休業をした場合には、それぞれの日数を合計します。

例えば、同一の事業主のもとで、父の介護のために93日、母の介護のために30日の介護休業をした労働者がいるとしましょう。

上記の場合、父の介護のためにする介護休業はすでに93日に達している(②に該当する)ため、新たな申出はできません。

一方、母の介護のためにする介護休業については、すでに3回(10日 × 3回など)の申出をしている場合(①に該当する場合)でなければ、新たな申出(残日数は63日)が可能です。

要介護状態にある対象家族が複数いる労働者は、それぞれの対象家族に対して3回までの介護休業を取得できますが、それぞれの対象家族ごとに93日が限度となります。

(93日で介護を完了させるよう求めるものではなく、仕事と介護を両立させるための方針を定める期間と考えられています)

介護休業の開始予定日と終了予定日(3項)

第1項の規定による申出(介護休業申出)には、「対象家族が要介護状態にある事実」や「介護休業開始予定日」および「介護休業終了予定日」が必要です。

介護休業は、「開始と終了」という一定の期間を「1回の介護休業」と数えます。

具体的な申出事項や方法については、則23条に定められています(育児休業申出の内容が準用されています)

有期雇用労働者の介護休業申出(1項ただし書き)

有期雇用労働者の介護休業申出

期間を定めて雇用される労働者(有期雇用労働者)については、次の場合に限り、申出ができます。

  • 介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに、その労働契約(更新される場合は、更新後の契約)が満了することが明らかでない場合

例えば、令和6年4月1日が介護休業開始予定日の場合は、令和6年7月2日が「介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日」です。

上記の場合、「…93日を経過する日から6か月を経過する日」は、令和7年1月1日となります(同旨 令和5年4月28日 雇均発0428第3号)

ちなみに、介護休業をすることができる残日数が93日より少ない場合(2回目以降の申出)でも、「介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までの間にその労働契約(労働契約が更新される場合は、更新後の契約)が満了することが明らかでない」か否かによって判断されます(同旨 前掲通達)

「労働契約が満了することが明らかでない」の解釈については、次のように示されています(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)

  • 要件を満たすか否かについては、育児休業申出のあった時点において判明している事情に基づき「労働契約の更新がないことが確実」であるか否かによって判断される
  • 事業主が「更新しない」旨の明示をしていない場合については、原則として、「労働契約の更新がないことが確実」とは判断されない

上記①②は、育児休業と同様です。

労働契約の更新に伴う介護休業申出(4項)

契約更新に伴う介護休業

「契約期間の末日=介護休業終了予定日」の場合に、労働契約の更新に伴い、「更新後の契約期間の初日=介護休業開始予定日」となるケースです。

上記の場合、1項ただし書、2項(②を除く)の規定は、適用されません。

介護休業申出を契約更新の前後でそれぞれ1回に数えたり、労働契約の期間(要件)を契約更新の後に改めて確認することはしません。

ただし、契約更新の前後で介護休業日数(上限93日)は通算します。


12条|介護休業申出があった場合における事業主の義務等

ここからは、労働者からの介護休業申出に対し、事業主が申出を拒める場合などを解説します。

申出に対する事業主の義務(1項)

事業主は、労働者からの介護休業申出があったときは、申出を拒むことができません。

ただし、例外があります。

申出を拒むことが可能なケース(2項)

結論としては、育児休業における取扱い(育介法6条1項ただし書、2項)が準用されています。

介護休業申出を拒むためには労使協定が必要です。

次の労働者については、労使協定を締結することを要件に、介護休業の対象者から除外(申出を拒むことが)できます

  • 引き続き雇用された期間が1年未満の労働者
  • 介護休業申出があった日から起算して93日以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者(平成23年厚労告58号)

労使協定を締結する労働者側の当事者は、労働者の過半数で組織する労働組合の有無で分れています。

  • ある場合 ⇒ その労働組合(以下、過半数労働組合)
  • ない場合 ⇒ 労働者の過半数を代表する者(以下、過半数代表者)

「労働者の過半数」における「労働者」には、日々雇用される者、介護休業の対象者から除かれた労働者も含まれます(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)

事業主に介護休業申出を拒まれた労働者は、11条1項の規定にかかわらず、介護休業をすることができません。

なお、事業主は、経営困難、事業繁忙その他どのような理由があっても、労使協定で除外されていない労働者からの(適法な)介護休業申出は拒むことはできません(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)

事業主による介護休業開始予定日の指定(3項)

事業主による介護休業開始予定日の指定

(育児休業と趣旨は同じです)

労働者が、介護休業申出があった日の翌日から起算して2週間を経過する日(2週間経過日といいます)よりも前の日を「介護休業開始予定日」に指定した場合の取扱いです。

事業主は、介護休業開始予定日とされた日から2週間経過日までの間のいずれかの日を「介護休業開始予定日」として指定できます。

労働者が希望どおりの日から介護休業するためには、介護休業をスタートさせたい日の2週間前までに申出が必要です。

(介護休業については、厚生労働省令で定める事由が生じた場合に、申出期限を1週間前までに短縮する規定はありません)

労働契約の更新に伴う介護休業申出に係る適用除外(4項)

労働契約の更新に伴う介護休業申出(育介法11条4項)については、育介法12条1項(申出を拒むこと)、2項(事業主による介護休業開始日の指定)は適用されません。


13条|介護休業終了予定日の変更の申出

終了予定日の繰下げ|介護

育児休業の終了予定日を変更する取扱い(7条3項)が準用されています。

終了予定日を遅くする変更(繰下げ)は、(変更前の)介護休業終了予定日の2週間前(則27条)までに、事業主に申し出ることにより、介護休業1回ごとに1回に限り変更できます。変更の理由は問われません。

次の制度は育介法に規定されていませんが、事業所で各制度を設けることは可能となっています(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)

  • 2週間前の日より後の日にされた変更の申出を認めること
  • 終了予定日を早くする(繰上げ)申出を認めること
  • 開始予定日の変更(繰上げ、繰下げ)を認めること

14条|介護休業申出の撤回等

つづいて、申出の撤回です。

介護休業申出の撤回(1項、2項)

介護休業申出の撤回

介護休業申出をした労働者は、介護休業開始予定日の前日までは、理由を問わず申出を撤回できます(1項)。

ただし、労働者が同一の対象家族についての介護休業申出を2回連続で撤回した場合には、事業主はそれ以降の申出を拒むことができます。

例えば、労働者が「1回目、2回目」を撤回した後に、「3回目、4回目、5回目」の申出で合計3回の休業を希望しても、事業主は3回目以降の申出を拒否できます。

介護休業申出は「されなかった」とみなす場合(3項)

介護休業申出がされた後、介護休業開始予定日の前日までに、厚生労働省令で定める事由(対象家族の死亡など)が生じたときは、当該介護休業申出はされなかった とみなされます。

厚生労働省令で定める事由は、次のとおりです(則30条)

  • 1号 介護休業申出に係る対象家族の死亡
  • 2号 離婚、婚姻の取消、離縁等による介護休業申出に係る対象家族と当該介護休業申出をした労働者との親族関係の消滅
  • 3号 介護休業申出をした労働者が、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、当該介護休業申出に係る対象家族についての介護休業日数が93日に達する日までの間、当該介護休業申出に係る対象家族を介護することができない状態になったこと

労働者は、事業主に対して、上記事由が生じた旨を遅滞なく通知しなければなりません(15条において同じ)


15条|介護休業期間

介護休業申出をした労働者が、介護休業をすることができる期間(介護休業期間)は、介護休業開始予定日から介護休業終了予定日(*2)までの間です。

(*2)同一の対象家族についての介護休業日数が93日を超えない範囲に限ります。

ただし、介護休業終了予定日より前でも、次の場合(その日)に介護休業期間は終了します(第二号の事情が生じた場合は、その前日に終了します)

  • 一号 介護休業終了予定日とされた日の前日までに、労働者が申出に係る対象家族を介護しないこととなった場合(*3)
  • 二号 介護休業終了予定日とされた日までに、介護休業申出をした労働者について、産前産後休業(労基法65条1項、2項)、育児休業期間、出生時育児休業期間(産後パパ育休)、新たな介護休業期間が始まった場合

(*3)厚生労働省令で定める事由14条の解説を参照)が準用されています(則31条)

参考|介護休業期間の終了事由に含まれないもの

介護休業期間の終了事由に、①「対象家族が要介護状態から脱した場合」は含まれていません。

通達によると、次の理由が示されています(令和5年4月28日 雇均発0428第3号)

  • 対象家族が再び要介護状態となることも当然予想され、労働者にとって酷である
  • 事業主にとっても、対象家族の不安定な状態に影響されることは好ましくない

同様の趣旨から、②「対象家族が特別養護老人ホーム、介護老人保健施設等へ入院・入所した場合」、③「他の者が労働者に代わって対象家族を介護することとなった場合」も介護休業期間の終了事由に含まれていません(前掲通達)

また、④「いわゆる内縁関係の解消」は、親族関係の消滅(則30条2号)に該当しません(前掲通達)

①から④までの場合を含め、介護休業期間中の労働者が一時的に介護をする必要がなくなった期間については、次のように解されています(前掲通達)

  • 話合いの上、一時的・臨時的にその事業主の下で就労することは妨げられない
  • 労使で介護休業を終了させる特段の合意をした場合を除き、一旦職場に復帰することをもって当然に介護休業が終了するものではない
  • 一時的中断とみることが適当であって、当初の介護休業期間の範囲内で再び介護休業を再開することができる

その他

最後にその他の規定です。

16条|不利益取扱いの禁止

事業主は、労働者が介護休業申出をし、又は介護休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません。

派遣労働者の就業については、労働者派遣法に特例が設けられているため、派遣元事業主のみならず、派遣先事業主にも不利益な取扱いの禁止が義務付けられています(労働者派遣法47条の3)

育児休業と趣旨は同じです。


まとめ

ここまで、育児介護休業法の3章を解説しました。

  • 休業をするためには事業主に申出が必要
  • 事業主が拒めるのは、労使協定により休業の対象から除いた労働者からの申出に限られる
  • 休業は、開始と終了の予定日を明らかにして、一定の期間を1回とする
  • 労働者が希望どおりの日から休業をスタートさせるためには、一定の期限まで申出が必要(遅れた場合は、事業主の指定の対象になる)
  • 申出については、一定の条件のもと、変更(介護については終了の繰り下げ)や撤回ができる

詳細は異なるものの、上記の考え方は育児休業と同じです。

育児休業と介護休業、両制度を比較しながら学習してみてください。


(参考資料等)

厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html

  • 育児介護休業法
  • 令和5年4月28日 雇均発0428第3号(「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について」の一部改正について)

厚生労働省ホームページ|育児・介護休業法についてより|
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

  • リーフレット「育児・介護休業法改正のポイント」
  • 育児・介護休業法のあらまし