社労士試験の独学|労基法|事業場外労働のみなし労働時間制

まえがき

この記事では、労働基準法の4章から、事業場外労働のみなし労働時間制(38条の2)を解説しています。

社会保険労務士試験の独学、労務管理担当者の勉強などに役立てれば嬉しいです。

当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しておりますが、厳密な表現と異なる部分もございます。

詳しくは免責事項をご確認ください。

事業場外労働のみなし労働時間制の概要(38条の2)

みなし労働時間制(事業場外)

労基法における「みなし労働時間制」は、事業場外(38条の2)、専門業務型(38条の3)、企画業務型(38条の4)の3つです。

令和6年就労条件総合調査によると、みなし労働時間制を採用している企業割合15.3%となっており、そのうち、事業場外労働のみなし労働時間制を採用している割合は13.3%となっています。

これから解説する労基法38条の2では、例えば、外回りの営業など、事業場の外で行われる業務についての「労働時間の算定方法」を定めています。

ただし、「事業場外」であれば全ての業務に制度が適用されるものではなく、一定の条件が必要です。


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労働基準法38条の2

要件|

事業場外労働のみなし労働時間制を適用するためには、次のいずれにも該当することが必要です。

  • 労働者が労働時間の全部または一部について、事業場外で業務に従事した
  • 事業場外における業務について、労働時間を算定することが難しい

労働時間の算定方法|

  • 事業場外労働のみなし労働時間制が適用されると、原則として、所定労働時間を労働したとみなします
  • ただし、事業外での業務を遂行するために、通常の状態で所定労働時間を超えての労働が必要な場合には、事業場外の業務に関しては「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」を労働したものとみなします
  • なお、上記②の「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」について、労使協定(書面による協定)で定める場合には、「労使協定で定める時間」を労働したものとみなします

労使協定|

労使協定を締結する労働者側の当事者は、労働者の過半数で組織する労働組合の有無で分れています。

ある場合 ⇒ その労働組合
ない場合 ⇒ 労働者の過半数を代表する者

労使協定(労働協約を除く)には、「有効期間の定め」が必要です(労基則24条の2 第2項)

届出|

③の場合には、労使協定を様式第12号により、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません(労基則24条の2 第3項)

ただし、「労使協定で定める時間」が、法定労働時間(労基法32条または40条)以下ならば、届け出る必要はありません(労基則24条の2 第3項)

使用者は、事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定の内容を、労基法36条1項の協定(36協定)の協定届に付記して届け出ることも可能です(労基則24条の2 第4項)

一部を事業場内で労働する場合の労使協定|

一部を事業場内で労働する場合は、事業場外における業務の遂行に通常必要とされる時間のみを協定します(昭和63年3月14日基発150号)

労働基準法

第三十八条の二 

労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。

② 前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。

③ 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

労働基準法施行規則

第二十四条の二 

法第三十八条の二第一項の規定は、法第四章の労働時間に関する規定の適用に係る労働時間の算定について適用する。

② 法第三十八条の二第二項の協定(労働協約による場合を除き、労使委員会の決議及び労働時間等設定改善委員会の決議を含む。)には、有効期間の定めをするものとする。

③ 法第三十八条の二第三項の規定による届出は、様式第十二号により、所轄労働基準監督署長にしなければならない。ただし、同条第二項の協定で定める時間が法第三十二条又は第四十条に規定する労働時間以下である場合には、当該協定を届け出ることを要しない。

④ 使用者は、法第三十八条の二第二項の協定の内容を法第三十六条第一項の規定による届出(労使委員会の決議の届出及び労働時間等設定改善委員会の決議の届出を除く。)に付記して所轄労働基準監督署長に届け出ることによって、前項の届出に代えることができる。


罰則

労使協定の届出義務に違反した者は、30万円以下の罰金に処せられます(労基法120条)

事業場外の業務について労働したとみなされる時間

労働したとみなされる時間

先ほど解説した①〜③の算定方法を整理すると次のようになります。

  • 原則①「所定労働時間」
  • ②に該当するならば「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」
  • ②に該当しても労使協定を締結したならば③「労使協定で定める時間」

たとえ事業場外の業務であっても、通常の状態で「所定労働時間を超えての労働」が必要ならば、所定労働時間ではなく、「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」を労働したとみなします。

当該業務の遂行に通常必要とされる時間

通達では、「通常の状態でその業務を遂行するために客観的に必要とされる時間」と示しています(昭和63年1月1日基発1号)

具体的には、業務の実態が最もよくわかっている労使間で、その実態を踏まえて協議した上で決めることが適当だとされています(前掲通達)

そのため、労使協定が締結された場合には、「労使協定で定めた時間」をもって、「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」労働したとみなされます。

「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」を労働したとみなす場合でも、労使協定は必須ではありません。しかしながら、突発的に生じるものは別として、協定を締結することが望ましい というニュアンスです。

労基法38条の2の適用範囲

労基法38条の2により、労働時間の「みなし」が適用される規定。

事業場外労働のみなし労働時間制に関する規定は、「労基法4章労働時間に関する規定」の適用に係る労働時間の算定について適用されます(労基則24条の2)

そのため、労基法38条の2に関する規定が適用される場合であっても、休憩休日深夜業に関する規定について「みなす」ことはできず、各規定のとおり適用されます(昭和63年1月1日基発1号)

例えば、労基法38条の2が適用され所定労働時間を労働したとみなす場合でも、現実に労働した時間が午後10時から午前5時の範囲内にあれば(就業規則等で定めた始業および終業の時刻が深夜の時間帯を含んでいなくとも)、深夜労働についての割増賃金の支払いが必要です。


労働時間を算定するこが困難

使用者の具体的指示の下、事業場外で労働するケース

事業場外労働のみなし労働時間制の対象となるのは、①事業場外で業務に従事し、かつ、②使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務です(昭和63年1月1日基発1号)

したがって、事業場外で業務に従事する場合でも、使用者の具体的な指揮監督が及んでいるならば、労働時間の算定が可能となるため、事業場外労働のみなし労働時間制は適用されません(前掲通達)

例えば、次のような場合は、事業場外労働のみなし労働時間制は適用されません(前掲通達)

  • 何人かのグループで事業場外において労働する場合で、そのメンバーの中に労働時間を管理する者がいる場合
  • 事業場外で業務に従事するが、情報通信機器などにより、随時使用者の指示を受けながら労働している場合
  • 事業場において、訪問先、帰社時刻など当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場にもどる場合
「労働時間を算定し難い」といえるか否か

事業場外における業務が「労働時間を算定し難い」といえるか否かについての判例です(最二小判 平26.1.24 阪急トラベルサポート(添乗員・第2)事件)

業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、使用者と労働者との間の業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様、状況等に鑑みると、本件業務については、これに従事する労働者の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難く、労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないと解するのが相当である。

「労働時間を算定し難い」といえるかは、業務の性質や業務に関する指示などにより総合的に判断されます。

また、先の通達(昭和63年1月1日基発1号)でも示していますが、「事業場外における業務であっても、労働時間を算定し難い」とは限りません。

「労働時間を算定し難い」と認められないなら、労基法38条の2により「みなす」ことはできません。


テレワーク

労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務(テレワーク)については、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」が定められています。

上記ガイドラインでは、テレワークを次の3つに分類しています。

  • 在宅勤務
  • サテライトオフィス勤務(いわゆるシェアオフィスやコワーキングスペースなどでの勤務を含む)
  • モバイル勤務(例えば、ノートPCを使いカフェなどで仕事をするケース)

事業場外労働のみなし労働時間制の適用

テレワークにおいて、事業場外労働のみなし労働時間制を適用するためには、次の①②いずれもが必要です(令和3年3月25日基発0325第2号)

  • 情報通信機器が、使用者の指示により「常時通信可能な状態におくこと」とされていない
  • 随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていない

① 情報通信機器が、使用者の指示により「常時通信可能な状態におくこと」とされていない

次のいずれかの場合は、①の条件を満たします(令和3年3月25日基発0325第2号)

  • 勤務時間中に、労働者が自分の意思で通信回線自体を切断することができる場合
  • 勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を用いて行われるが、労働者が情報通信機器から自分の意思で離れることができ、応答のタイミングを労働者が判断することができる場合
  • 会社支給の携帯電話等を所持していても、その応答を行うか否か、又は折り返しのタイミングについて労働者において判断できる場合

したがって、テレワークに用いる情報通信機器を労働者が所持していることをもって、事業場外労働のみなし労働時間制が適用されない というものではありません。

② 随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていない

次の場合は②の条件を満たします(令和3年3月25日基発0325第2号)

  • 使用者の指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、一日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間等)をあらかじめ決めるなど、作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものではない場合

事業場外と事業場内で労働が生じる場合

内勤・外勤が生じるケース

ひらたくいうと、事業場外の業務がいわゆる直行・直帰なのか、内勤・外勤なのかで労働時間の算定方法(みなす範囲)は異なります。

繰り返しになりますが、労基法38条の2における労働時間の算定方法は次の①〜③です。

  • 事業場外労働のみなし労働時間制が適用されると、原則として、所定労働時間を労働したとみなします
  • ただし、事業外での業務を遂行するために、通常の状態で所定労働時間を超えての労働が必要な場合には、事業場外の業務に関しては「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」を労働したものとみなします
  • なお、上記②の「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」について、労使協定(書面による協定)で定める場合には、「労使協定で定める時間」を労働したものとみなします

労働時間の全部を事業場外で労働した場合(直行・直帰)

直行・直帰

例.1 所定労働時間 ≧ 当該業務の遂行に通常必要とされる時間

「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」が所定労働時間を超えないならば、所定労働時間を労働したとみなします(算定方法①)

例えば、所定労働時間が「7時間45分」、事業場外の業務の遂行に通常必要とされる時間が「7時間」だとします。

上記の例では、労働したとみなされる時間は「7時間45分」です。

原則どおり、所定労働時間を労働したとみなします。

例.2 当該業務の遂行に通常必要とされる時間 > 所定労働時間

「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」が所定労働時間を超えるならば、当該業務の遂行に通常必要とされる時間を労働したとみなします(算定方法②)

例えば、所定労働時間が「7時間45分」、事業場外の業務の遂行に通常必要とされる時間が「8時間」だとします。

上記の例では、労働したとみなされる時間は「8時間」です。

労使協定が締結された場合(算定方法③)は、「労使協定で定める時間」で読み替えてください。


労働時間の一部を事業場内で労働した場合(内勤・外勤)

内勤・外勤

労働時間の一部を事業場内で労働した場合については、次の手順で労働時間を算定します。

  • 「事業場外の業務の遂行に通常必要とされる時間 」とは別に、「 事業場内の労働時間」を把握します。
  • 次に、上記2つの時間を合算します。
  • 合算した後の時間が、所定労働時間を超えるか否かで判断します。

具体的には、通達により、次のような解釈が示されています。

通達はタブを切り替えると確認できます。

昭和63年1月1日基発1号、昭和63年3月14日基発150号

(原則)

原則として、労働時間の一部について事業場内で業務に従事した場合には、当該事業場内の労働時間を含めて、所定労働時間労働したとみなします(昭和63年1月1日基発1号)

(当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合)

「当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合」において、労働時間の一部について事業場内で業務に従事した場合には、「事業場内の労働時間」と「事業場外で従事した業務の遂行に通常必要とされる時間」とを加えた時間労働したとみなします(前掲通達)

次の解釈も示されています(意図は同じです)

「事業場外労働のみなし労働時間制」による労働時間の算定の対象となるのは、事業場外で業務に従事した部分と解されています(昭和63年3月14日基発150号)

そのため、事業場内で労働した時間については別途把握しなければなりません(前掲通達)

労働時間の一部を事業場内で労働した日の労働時間は、事業場外で業務に従事した時間(労基法38条の2により算定される時間)と、別途把握した事業場内における時間とを加えた時間になります(前掲通達)

昭和63年1月1日基発1号

事業場外労働における労働時間の算定方法

(イ)原則

労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなされ、労働時間の一部について事業場内で業務に従事した場合には、当該事業場内の労働時間を含めて、所定労働時間労働したものとみなされるものであること。

(ロ)当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合

当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされ、労働時間の一部について事業場内で業務に従事した場合には、当該事業場内の労働時間と事業場外で従事した業務の遂行に必要とされる時間とを加えた時間労働したものとみなされるものであること。なお、当該業務の遂行に通常必要とされる時間とは、通常の状態でその業務を遂行するために客観的に必要とされる時間であること。

(ハ) 労使協定が締結された場合

(ロ)の当該業務の遂行に通常必要とされる時間については、業務の実態が最もよくわかっている労使間で、その実態を踏まえて協議した上で決めることが適当であるので、労使協定で労働時間を定めた場合には、当該時間を、当該業務の遂行に通常必要とされる時間とすることとしたものであること。

また、当該業務の遂行に通常必要とされる時間は、一般的に、時とともに変化することが考えられるものであり、一定の期間ごとに協定内容を見直すことが適当であるので、当該協定には、有効期間の定めをすることとしたものであること。

なお、突発的に生ずるものは別として、常態として行われている事業場外労働であって労働時間の算定が困難な場合には、できる限り労使協定を結ぶよう十分指導すること。

昭和63年3月14日基発150号

一部事業場内労働の場合の算定

問. 労働時間の一部を事業場内で労働する場合、労働時間の算定はどうなるのか。

答. みなし労働時間制による労働時間の算定の対象となるのは、事業場外で業務に従事した部分であり、労使協定についても、この部分について協定する。事業場内で労働した時間については別途把握しなければならない。そして、労働時間の一部を事業場内で労働した日の労働時間は、みなし労働時間制によって算定される事業場外で業務に従事した時間と、別途把握した事業場内における時間とを加えた時間となる。


「当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合」に該当するか否かは、事業場外での労働が全部か一部かで、所定労働時間と比較する「時間」が異なります。

  • 全部を事業場外で労働したケース
    ⇒ 「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」と比較します。
  • 一部を事業場内で労働した場合
    ⇒「当該業務の遂行に通常必要とされる時間 + 事業場内での労働時間」と比較します。

例.1 所定労働時間 ≧ 当該業務の遂行に通常必要とされる時間 + 事業場内の労働時間

一部事業場内労働(所定内)

次の条件で労働したとします。

所定労働時間7時間45分
事業場外の業務の遂行に通常必要とされる時間6時間
事業場内の労働時間1時間
例.1の条件

上記の例では、「7時間45分 ≧ 6時間 + 1時間」となるため、労働したとみなされる時間は、事業場内の1時間を含めて「7時間45分」です。

原則どおり、事業場内の労働時間を含めて「所定労働時間」を労働したとみなします。

例.2 当該業務の遂行に通常必要とされる時間 + 事業場内の労働時間 > 所定労働時間

一部事業場内労働(所定超え)

次の条件で労働したとします。

所定労働時間7時間45分
事業場外の業務の遂行に通常必要とされる時間6時間
事業場内の労働時間2時間
例.2の条件

上記の例では、「6時間 + 2時間 > 7時間45分」となるため、労働をしたとみなされる時間は、事業場内の2時間 を含めて「8時間」です。

「所定労働時間」の7時間45分でなく、「事業場外の業務の遂行に通常必要とされる時間」の6時間でもなく、「事業場内の労働時間と事業場外で従事した業務の遂行に必要とされる時間とを加えた時間」である8時間を労働したとみなします。

なお、労使協定が締結された場合(算定方法③)は、「労使協定で定める時間」で読み替えてください。

(時間外労働となる場合)

例えば、上記「例.2」において、事業場内で「3時間」の労働をした場合は、労働したとみなされる時間は、事業場内の3時間 と事業場外の6時間の合計で「9時間」となります。

そのため、事業場外労働のみなし労働時間制を適用しても「1時間」の時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要です。


留意事項

例えば、所定労働時間を「7時間45分」と定めている事業場において、事業場外の業務を遂行するために通常は「9時間」必要だけれども、所定労働時間(だけ)労働したとみなすことはできません。

上記の場合は「9時間」労働したとみなされます(労基法38条の2 第1項ただし書き)

また、事業場外の業務の遂行に通常必要とされる時間が8時間であれば、事業場外の業務とは別に内勤をさせても、8時間(だけ)労働したとみなせる制度ではありません。

上記の場合は「8時間 + 内勤を行った時間」労働したとみなされます(昭和63年3月14日基発150号)

なお、事業場外における業務について労働したとみなすためには、「事業場外における業務について、労働時間を算定することが難しい」ことが必要条件です(労基法38条の2 第1項本文)


まとめ

ここまで、事業場外労働のみなし労働時間制を解説しました。

社労士試験においては、労基法38条の2の出題頻度は高くはないため、制度を理解した後は過去問を中心に復習すると効率的かもしれません。

阪急トラベルサポート(添乗員・第2)事件は、社労士試験の選択式でも出題されているため、余裕があれば、判決理由を裁判所のホームページ等で確認しておいてください。

最後に、この記事をまとめて終わりにします。

この記事のまとめ

要件|

事業場外労働のみなし労働時間制を適用するためには、次のいずれにも該当することが必要

  • 労働者が労働時間の全部または一部について、事業場外で業務に従事した
  • 事業場外における業務について、労働時間を算定することが難しい

労働時間の算定方法|

  • 事業場外労働のみなし労働時間制が適用されると、原則として、所定労働時間を労働したとみなす
  • ただし、事業外での業務を遂行するために、通常の状態で所定労働時間を超えての労働が必要な場合には、事業場外の業務に関しては「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」を労働したものとみなす
  • なお、上記②の「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」について、労使協定(書面による協定)で定める場合には、「労使協定で定める時間」を労働したものとみなす

労基法38条の2の適用範囲|

事業場外労働のみなし労働時間制に関する規定は、「労基法4章労働時間に関する規定」の適用に係る労働時間の算定について適用される。

労働時間を算定し難い|

事業場外で業務に従事する場合でも、使用者の具体的な指揮監督が及んでいるならば、労働時間の算定が可能となるため、次のような場合には事業場外労働のみなし労働時間制は適用されない。

  • 何人かのグループで事業場外において労働する場合で、そのメンバーの中に労働時間を管理する者がいる場合
  • 事業場外で業務に従事するが、情報通信機器などにより、随時使用者の指示を受けながら労働している場合
  • 事業場において、訪問先、帰社時刻など当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場にもどる場合

一部を事業場内で労働した場合|

  • 事業場外労働のみなし労働時間制による労働時間の算定の対象となるのは、事業場外で業務に従事した部分である
  • 労使協定についても、事業場外で業務に従事する部分について協定する
  • 事業場内で労働した時間については別途把握しなければならない
  • 労働時間の一部を事業場内で労働した日の労働時間は、所定労働時間と、「事業場外と事業場内の合計時間」を比較し、長い方の時間を労働したとみなす。

(参考資料等)

厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html

  • 労働基準法38条の2
  • 労働基準法施行規則24条の2
  • 昭和63年1月1日基発1号(改正労働基準法の施行について)
  • 令和3年3月25日基発0325第2号(テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドラインについて)

厚生労働省|東京労働局ホームページ|パンフレットより|
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/newpage_00379.html

  • 事業場外労働に関するみなし労働時間制の適正な運用のために

解釈例規(昭和63年3月14日基発150号)