この記事では、労働基準法の総則から次の規定を解説しています。
- 均等待遇(3条)
- 男女同一賃金の原則(4条)
当記事は、条文等の趣旨に反するような極端な意訳には注意しておりますが、厳密な表現と異なる部分もございます。
詳しくは免責事項をご確認ください。
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均等待遇(3条)
使用者が、労働条件について、次の事項を理由に差別的な取扱をすることを禁止しています。
- 国籍
- 信条
- 社会的身分
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
罰則
労基法3条の違反(現実に差別的取扱をした場合)には、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が定められています(労基法119条1号)
以降、社労士試験で問われた論点を中心に解説します。
国籍を理由とする差別は、日本人労働者と日本国籍を持たない労働者に関するものです。これについてはよろしいかと。
信条とは、特定の宗教的または政治的信念をいいます(昭和22年9月13日発基17号)
社会的身分とは、例えば「〇〇出身者」のような生まれつきの地位をいうと解されています(昭和22年9月13日発基17号)
工員と職員のような、職制上の地位は含まれません。
例示された賃金、労働時間が労働条件に含まれることは問題ないでしょう。
「その他の労働条件」の範囲には解雇、災害補償、安全衛生、寄宿舎等に関する労働条件も含むと解されています(昭和63年3月14日基発150号ほか)
当記事では「解雇」と「雇入れ」について解説します。
「解雇に関する条件」
特定の信条を有することを解雇の理由として定めることも、労働基準法3条にいう労働条件に関する差別取扱として、右規定に違反するものと解される(最大判 昭48.12.12 三菱樹脂事件)
判例によると、「解雇の理由」については、労基法3条の「労働条件」に該当します。
ちなみに、使用者の「解雇の意思表示」そのものは労働条件とはいえません。
雇入れ(採用)
労働基準法3条は労働者の信条によって賃金その他の労働条件につき差別することを禁じているが、これは、雇入れ後における労働条件についての制限であって、雇入れそのものを制約する規定ではない(最大判 昭48.12.12 三菱樹脂事件)
判例によると、「雇入れ」については、労基法3条の「労働条件」に該当しません。
三菱樹脂事件は、上記の論点以外でも社労士試験で出題実績のある事案です。
社労士試験の勉強においては、過去問題集を解いて事案の概要や要旨を把握してみてください。
労基法3条でいう差別的取扱には、労働者を「不利に扱うこと」だけでなく「有利に扱うこと」も含まれます。
「国籍」「信条」「社会的身分」に限定して、労働条件について不利にも有利にも区別すること禁止しています。
男女雇用機会均等法は、性別を理由とする差別を禁止しています(均等法6条)。
労基法においては、法4条で「女性であることを理由」とした「賃金の差別的取扱」を禁止しています。
一方で、労働条件については、法64条の2(坑内業務の就業制限)、68条(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)などの女性保護規定を設けています(母性保護規定とは区別されるものなので、「残されています」が適切かもしれません)。
労働条件について有利に扱うことが抵触しないよう、労基法3条の列挙事項に「性別」は含まれていません。
ちなみに、社労士試験では、労基法3条の規定に「性別」を含めることで、誤りの記述として出題されたことがあります。
試験勉強の際は、注意深く記述を読んでみて下さい。
男女同一賃金の原則(4条)
賃金について、単に女性であることを理由とした差別的取扱を禁止しています。
「賃金」に限定しているのは労基法3条の解説のとおりです。
使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。
罰則
労基法4条の違反(現実に差別的取扱をした場合)には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が定められています(労基法119条1号)
労基本4条の趣旨|
通達では、「本条の趣旨は、日本における従来の国民経済の封建的構造のため、男性労働者に比較して一般に低位であった女性労働者の社会的・経済的地位の向上を、賃金に関する差別待遇の廃止という面から実現しようとするもの」と示しています(昭和22年9月13日発基17号)。
労働基準法は、昭和22年9月1日に施行(法令の効力を発生)されています。
現在でも男女による賃金格差に課題はあります。当時の時代背景を考えると本条の趣旨は難しくないでしょう。
参考|厚生労働省(外部サイトへのリンク)|男女間の賃金格差解消に向けて
労基法4条でいう差別的取扱は、労働者を「不利に扱うこと」だけでなく「有利に扱うこと」も含まれます(昭和63年3月14日基発150号)
就業規則等に労基法4条に違反する趣旨の規定を設けると、その規定は無効となります(労基法13条)
ただし、現実に、差別的取扱を行ったという事実がなければ、労基法4条の違反とはならないと解されています(昭和23年12月25日基収4281号)
- 就業規則や労働契約に労基法4条に違反する規定を設けた
⇒ 労基法13条に違反する - 規定に基づいて労基法4条に違反する行為を実際に行った
⇒ 労基法4条に違反する
労基法11条にいう賃金をいい、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものを指します。
なお、賃金の額について直接的に差別するだけでなく、賃金体系等について間接的に差別する取扱も含むと解されています(昭和63年3月14日基発150号)
賃金(労基法11条)についてはこちらの記事で解説しています。
労働者が、「女性であること」のみを理由とする差別的取扱をいい、以下の理由などが該当します(昭和22年9月13日発基17号)
- 社会通念として、女性労働者が一般的に勤続年数が短いことを理由とする
- 事業場において、女性労働者が平均的に勤続年数が短いことを理由とする
- 事業場において、女性労働者が平均的に作業量の効率が悪いことを理由とする
- 女性労働者が主たる生計の維持者でないことを理由とする
「一般的に」や「平均的に」や「男性の世帯主に限り」では、女性であることのみを理由とするため労基法4条に違反します。
例えば、ある会社においてデータを分析した結果、女性の勤続年数を平均すると実際に短かったとしましょう。
しかしながら、賃金を考慮する対象の女性労働者についてみたときに、勤続年数が実際に短いとは限りません。
「平均的に勤続年数が短い」が事実かどうかではなく、女性という理由で賃金に差を付けてはなりません。
一方で、性別と関係のない実際の職務や技能に労働者ごとに差がある場合など、その個人的な差異を理由として賃金に差が生じることは、差別的取扱にあたりません(昭和22年9月13日発基17号)
①「Aさんは女性だから男性のBさんと賃金に差を設けますよ」
②「AさんとBさんの技能には差がありますので、その技能の差だけ賃金に差を設けますよ」
AさんとBさんの賃金に差が生じることについて、上記2つは異なる考え方です。
女性の技能が「平均的に」男性よりも低かった(あるいは高かった)としても、上記①の取扱いを現実におこなうと労基法4条に違反します。
実際の技能に差がある場合に、「技能の差」を手当などに反映させることは「女性であること理由」としていません。
ここまで労働基準法の総則から、均等待遇(3条)男女同一賃金の原則(4条)を解説しました。
下表に両規定を整理しておきます。
3条 | 4条 | |
理由 | 国籍 信条 社会的身分 | 女性 |
対象 | 賃金、労働時間などの労働条件 | 賃金 |
労働基準法の総則の学習は、何かの手続きを覚えるというよりも、条文の趣旨や用語の概念の理解が中心です。
社労士試験に独学で挑戦される場合は、過去問題集などを活用しつつ徐々に知識を深めてみて下さい。
最後に条文をもう一度確認して終わりにします。
労基法3条(均等待遇)
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
労基法4条(男女同一賃金の原則)
使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。
(参考資料等)
厚生労働省|厚生労働省法令等データベースサービスより|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensaku/index.html
- 労働基準法3条、4条、11条、119条1号
- 昭和22年9月13日発基17号(労働基準法の施行に関する件)
解釈例規(昭和63年3月14日基発150号)