私は簿記と独学が好きなので「簿記 1 級 独学 無理」が事実なのかを確認したくなり、1,000時間以上費やしました。
結果、受験回数は2回、第162回の試験に合格(71点)です。
日商簿記1級に独学で挑む方に向け、体験記を綴っています。
参考|当記事における日商簿記1級の独学とは
- 市販の教材のみを使用
- 通信講座を含めた講義は受けていない
- 日商簿記3級、2級(連結あり)に独学で合格している
- 税理士、会計士を目標に勉強している者ではない
- 簿記の実務経験はない
日商簿記1級の独学はおすすめしない
結論としては、合格の可否は別にしても簿記1級の独学はおすすめしません。
おすすめしない理由は2つあります。
理由1 再現性の高い「合格までのロードマップ」が確立されていない
独学を始める前に情報収集しましたが、合格までの基準を500時間未満とするものから2,000時間以上とするものまで様々です。
また、独学に関する情報も「独学をおすすめしないのでスクールを!」は頻繫に目にしますが、「独学で合格したがおすすめはしない!」という声がなかなか見つかりません。
ひらたくいうと、「この教材を〇〇周すれば合格に届く!」や「〇〇時間で合格できる!」など、試験勉強あるあるは確立されていない試験といえるでしょう。
理由2 勉強以外の試験対策が必要
簿記2級に比べて、簿記1級の試験範囲は広く、一つ一つの論点を深く学習します。勉強そのものが難化する以外に、試験問題を読み解くことも難しくなります。
与えられる資料が複雑になり、指示が曖昧な問題(出題者の意図を推定しながら解く問題)も少なくありません。
スクール等では、解くべき問題と捨てるべき問題(本音と建前のようなもの)の区別を教わるかもしれませんが、独学では自分で感覚をつかむことになります。
簿記1級の勉強は興味深いものであり充実した時間でした。しかしながら、日商簿記1級の問題文に慣れるのには苦労しています。
以上の理由で簿記1級の独学はおすすめしません。ただし、独学で合格したときは無理ゲーを攻略したような達成感を味わえます(これが独学の醍醐味かもしれません)。
実際に使用した教材
ここからは話題を変え、使用した教材を簡単に紹介します。
どれもネットや書店で手に入る教材です。
特定の商品のレビューはしませんが、過去問題集は学習の初期から使用することを勧めます。
理由は、日商簿記1級の問題文に慣れること、問われるレベルを把握するためです(ちなみに、過去問の解説をトレースしてパターンを暗記する勉強はお薦めできません)。
とはいえ、簿記1級に関する市販の教材は多くはないため、何種類か試し読みしてみると良いでしょう。
- みんなが欲しかった!簿記の教科書、簿記の問題集
- 合格するための過去問題集
- あてるTAC直前予想模試
- 網羅型完全予想問題集
過去問題集などの試験対策用の教材を除けば、いわゆるテキストと問題集は「みんほし」シリーズのみを使用しています。
簿記1級に関するTACの教材に「難易度」を設定するとしたら、「みんほし」シリーズの難易度は高、中、低の「中」といったところでしょう。
ちなみに、直前予想模試、網羅型完全予想問題集の難易度は「高」(難問かつ1試験あたりの問題数が多い)です。
独学を始めたものの「正直だれかに教わりたい…」と心が折れかけた分野があります。具体的には「特殊商品売買」です。
テキストの例題に沿って個々の仕訳を追うまでは順調なものの、問題形式になると手が動きません。
過去問題集で「一般商品売買を含むパズルのような推定問題」を目にした際は「ここに学習の初期段階で深入りするのはアカン…」と確信しました。
テキストは順を追って仕訳を示し、正解まで誘導しているため理解した気になれます。
しかしながら、実際の試験問題は誘導が少ないため、テキストと比較するとギャップが生じます(答えから解き方を逆算する考え方も必要です)。
簿記1級の過去問題は「商工会議所の検定試験」でも公開されているので、まだ学習を始めていない場合でも興味がおありでしたら検索してみて下さい。
学習方法の紹介
簿記1級は一つ一つの論点を深堀してくるため、簿記2級までのように解答パターンを覚える学習は通用しません(仕訳と出題パターンを暗記する学習は通用しないイメージです)。
先述のとおり、私は2回受験しており、結果は次のとおりです。
第161回 ⇒ 不合格
第162回 ⇒ 合格
2回目の受験は、十分な勉強時間を確保できたこと以外にも学習方法を変更したことが功を奏しています。
やらかした体験も共有したいので「不合格となった学習方法」と「合格となった学習方法」を紹介します。
具体的には、テキストを網羅的に読みつつ、全ての試験範囲を周回するように問題集を解きました。
過去問題集の全ての空欄を時間内に埋めるように勉強しています。
同じパターンの問題が出題されたら満点を取れるようにする勉強方法です。
試験直前期に「ヤバい…合格できないかも」と感じ、出題予想を参考にヤマを張っています。
具体的には、原価計算基準の理屈を度外視して、語句を暗記するように学習しました。
「ヤバいヤバい…」となり睡眠時間を削った結果、内容の薄い時間が過ぎていきます。
結果、10点未満の科目はないものの「54点」で不合格です。
ただし、予想よりも点数は取れたので、学習方法を修正すればなんとかなる気がしました。
2度目の受験を決意し、次のように学習内容を改めています。
過去問題集の解説にある総評を根拠に、論点に優先度を設定します。
具体的には、優先度に応じてテキストに目印をつけ、やるべきこと(またはやらないこと)を可視化します。
解答を理解して次の問題に進むのではなく、一から独力で答えを導けるまで練習します。
間違えた問題は翌日にも独力で解けるか確認し、解けなければテキストを読み直します。
復習において意識したポイントは次の3つです。
- 1日に長時間かけて復習するのではなく、日をおいて復習し、問題を解く回数(頻度)を増やす
- 繰り返し間違える問題は「理解の不足」「計算ミス」「資料の見落とし」など、間違えた理由を問題ごとに記録し、復習の進捗を管理する
- 理解不足の論点は簿記2級の範囲を含めて復習する
2回目の試験では、予想模試を購入しないと決めました。
理由は「予想が当たらない」ではなく、1回目の試験を経験し、優先度の高い論点を本質的に理解する必要があると判断したためです。
見たことのある問題が出題されたら解けるようにする のではなく、理解できている論点を問われたら解けるように勉強しています。
解説にある計算手順をトレースするのではなく、計算の過程を自分の言葉で説明する時間を確保しました。
書く勉強の他にも、ひとりごとを話す勉強を増やしています。
試験直前期には、予想問題ではなく、テキストの例題を中心に復習します(基礎なくして応用なしを徹底します)。
また、焦らずに普段通りの睡眠時間を確保しています。
結果、商簿 13|会計 22|工簿 14|原計 22|の「71点」で合格です。
第162回の商簿は難問でした。ただし、その他の科目は比較的易しいでしょう。
「工・原」は問題の指示に悩まされましたが、時間に余裕をもって試験を終えています。
合格までを総括すると、勉強する範囲に優先度を設けたこと、問題のパターンではなく理屈の理解を優先させたことが勝因です。
簿記1級の独学は簡単ではありませんが、難解な論点を自分で理解する力が養われます。
また、頻出論点(スクールの受験生が対策してくるであろう範囲)を推定できれば、独学者でも勝負できる試験です。
独学に限らず簿記1級に挑戦する際は陰ながら応援しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
2回目の受験にあたり、理解が不足している論点はファインマンテクニックを使って勉強を進めました。
簿記に限らず独学に応用できる手法です。